所得税や法人税といった各税目の税率そのものを引き上げるのではなく、所得に税率をかけて計算した税額に一定比率を上乗せして課税する増税措置。東日本大震災後の復興増税でも採用した。現行の復興特別所得税は25年間の時限措置で、2037年まで所得税額に2・1%を上乗せしている。復興特別法人税は法人税額に10%を上乗せし、12、13年度の2年間で終了した。
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租税は課税標準と税率の組合せにより規定されるが,付加税とは,(1)同じ課税標準にたいして複数の課税団体が課する税をいう。たとえば,国の課する所得税の課税標準と同じ課税標準にたいして地方住民税が課されるから,地方住民税は国の所得税の付加税といえる。また(2)他の課税団体の課する税額を課税標準として課される税をいう。国の課する法人税の税額を課税標準として課される地方税の法人住民税が,この例である。課税団体は普通は単一団体だけではなく,複数の団体である。日本の場合においては,国,都道府県,市町村の3層からなる公共団体が課税団体となっている。これにたいし独立税というのは付加税以外のすべての税であり,独自の課税標準にたいして課される税である。
付加税は地方自治体の課税自主権にとって好ましくないという考え方は強く,シャウプ勧告においても,できるかぎり各層の地方自治体にたいして独立税を与えるという原則が採られた。付加税は確かに地方自治の充実という観点からみると不適当な面も有するが,好ましい面も同時にもっている。所得のような包括的な課税標準を,たとえば中央政府のような団体が独占してしまうと,他の団体には十分に収入のあがる課税標準は残されていないから,都道府県ないしは市町村が,付加税を課することにより必要な財源を確保するということは,完全な独立税によっては各層の団体の財政需要を満たすことができない場合にはやむをえない。また,小さな地方自治体で税務行政能力が不十分な場合にも,税務行政能力の高い上部団体がすでに課している税と同じ課税標準を利用することのできる付加税なら,課税することが容易になる。
執筆者:林 正寿
付加税をより広義に理解し,国王などが臨時の出費に際し正税に加えて追加徴収した〈諸税〉を含めて解釈すると,その歴史はきわめて古い。たとえば古代南アジア世界のマウリヤ朝(紀元前3世紀)のアショーカ王碑文には,王が村々の土地の肥瘠(ひせき)などに応じて本税(バーガbhāga)のほかに付加税とみられる諸税(バリbali)を徴収していた記録が見られる。こういった伝統は,中世の東南アジア・イスラム世界にしばしばみとめられ,たとえばイスラム法の規定に租税(人頭税jizyaと地租kharāj)以外の付加税が見られる。中国唐代の両税法(780)下の地税・戸税以外の青苗銭,地頭銭を付加税とみる学説もある。清朝時代の加(火)耗は通常,田賦以外の付加税であった。
狭義の付加税制度は,ヨーロッパの大陸諸国の近代統一国家の地方自治制度の中に見られる。フランスでは,19世紀前半のナポレオン統治下で整備された府県制のもとで,サンチーム付加税centimes additionnelsが見られる。ドイツでは19世紀前半からビスマルクの帝国統一(1871)のもとで整備された1872年の郡制成立の時期ころまでに,帝国→邦→(州)→郡→市町村間のそれぞれの付加税制度が整備され,各邦ごとに広く行われている。
日本の明治地方自治制における地方税の付加税制度も,19世紀の大陸諸国とりわけ上記ドイツの制度を模倣したものとされている。1890年以降の日本の地方税体系を見ると,府県税には国税付加税(地租付加税,所得付加税)が,市町村税には上記国税付加税のほかに府県税付加税(戸別割または家屋割,営業割など)が根幹をなし,ほかに若干の独立税があった。付加税率は内務省,大蔵省から厳しく統制され,1890年段階でたとえば府県税地租割は地租4分の1以内,市町村所得税付加税は100分の50以内に制限された。その後,1908年の〈地方税制限ニ関スル法律〉により恒久的な制度として確立したが,第1次大戦後の物価高騰と地方財政膨張の中で政府は19年,20年の2回付加税率を大幅に緩和した。また1921年までの府県税戸数割のように,付加税率の制限が事実上見られないものもあった。第2次大戦後の1950年のシャウプ税制改革を通じて,付加税は制度としては廃止されたが,なおその実態は前記のように,法人住民税などにおいて残されている。
執筆者:坂本 忠次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狭義には他の租税の税額を課税標準として課税する租税であり、わが国の地方税の法人住民税の法人税割がその典型的な例である。広義には他の租税の課税標準と同じ課税標準に課税する租税をさすが、この場合には、地方税の事業税や個人住民税所得割なども付加税として分類されることになる。
付加税はとりわけ地方自治の充実との関係で問題視され、独立税と比較すると、付加税の場合には一般に地方自治体の自主性を制限するとされる。わが国においては、第二次世界大戦前の地方税制は付加税を中心としていたが、戦後のシャウプ勧告において付加税の廃止が提案され、独立税主体の税制となった。
[林 正寿]
…一般にアメリカやドイツのような連邦(地方分権)型では,国と地方がそれぞれ独立税制度をとっている。これに対し,フランスやイタリアのような単一国(中央集権)型では,地方税の独立性が乏しく国税に対し付加税を課す付加税主義がとられている。イギリスや日本は,いわば中間型をとっており,地方公共体は国の定めた制限の範囲内でそれぞれ独立した課税権をもっている。…
※「付加税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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