付着生物(読み)フチャクセイブツ(その他表記)attaching organisms

改訂新版 世界大百科事典 「付着生物」の意味・わかりやすい解説

付着生物 (ふちゃくせいぶつ)
attaching organisms

水中の基盤に固着あるいは付着して生活する生物をいう。固着生物sessile organismsともいう。このような生物には細菌,菌類,ケイ藻,海藻から原生動物海綿動物腔腸動物,曲形動物,環形動物,触手動物,軟体動物,原索動物などの無脊椎動物まで,いろいろな生物群に属するものが含まれている。付着生物にはノリ,カキ,マボヤなど水産上有用なものもあるが,多くは船底,導水管,漁具,養殖施設などの人工構造物に付着して,それらの設置目的や使用効率を阻害する汚損動物fouling animalである。水中の人工構造物上の付着生物は,元来は岩礁などに生息していたものが移住してきたものであるが,構造物が増えると構造物から構造物へと生息場所が拡大するようになる。また,船などの移動する構造物は付着生物の分布を広げる媒体の役割を果たす。ムラサキイガイアメリカフジツボヨーロッパフジツボなどは外国航路によって過去50年の間に日本沿岸にもたらされた外来種である。

 付着生物は一般に,その生活史に浮遊幼生期をもち,これが新しい基盤に付着する。したがって浮遊幼生期が長いほど,分布が拡大しやすく,付着の機会も多くなる。幼生の付着に関係の深い要因として,流速,光,基盤の性状(材質,形,色彩,表面構造など),および誘引物質が挙げられる。また,産卵期やその長さも付着生物の生育や分布に大きな影響を与えることが知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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