代謝障害性ミオパチー

内科学 第10版の解説

代謝障害性ミオパチー(代謝・内分泌障害性ミオパチー)

(1)代謝障害性ミオパチー概念
 エネルギー代謝障害のうち解糖系障害はグリコーゲン病(糖原病)の項【⇨15-21-10)】を,好気性のミトコンドリア障害はミトコンドリア病【⇨15-21-9)】を参照されたい.
 骨格筋や心筋は脂質もエネルギー源として利用しており,脂肪酸はミトコンドリアに取り込まれてβ酸化を受ける.エネルギー代謝を維持するためプリンヌクレオチドサイクルがあり,筋内ATP需要がきわめて逼迫し供給が追いつかなくなると2分子のADPから1分子のATPとAMPとを産生してATPを補おうとする.この経路が強く働くとAMPから中間代謝物を経てアンモニアとともに尿酸が産生され筋原性高尿酸血症が生じる.分類 代謝障害部位により,エネルギー代謝障害性,電解質代謝障害性,栄養障害性,中毒物質による代謝障害性,などに分類できる.病態生理・臨床症状 各疾患は遺伝性,基礎疾患,外因などにより発症する. 骨格筋や心筋は脂肪酸をエネルギー源として持続的に利用しており,特に炭素数の長い長鎖脂肪酸はカルニチンシャトルシステムを介さないとミトコンドリアの中に入ってβ酸化を受けることができない.乳児は出産直後経口摂取しないし,哺乳が始まっても脂肪が多いため脂肪酸の分解系であるカルニチンシャトルシステムの異常やβ酸化系の各酵素の欠損があると,エネルギー需要が大きい臓器の障害が出現する.カルニチンシャトルシステムに関連した疾患は,家族性カルニチン欠乏症,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症,カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症などがある.
 電解質代謝障害では低カリウム性ミオパチーがあり,筋力低下や筋痛が認められる.類似疾患として低カリウム性周期性四肢麻痺があるが病態は異なる.血清カリウム値が低下する原因は体外への喪失であり,下痢を生じる消化器疾患,腎疾患,甘草摂取や利尿薬などの薬剤性がある.
 栄養障害性ミオパチーの原因としては,脂溶性ビタミンのD,E,K欠乏がある.特にDの欠乏では低カルシウム血症によるテタニーだけでなく,近位筋の筋力低下や筋萎縮が生じる.尿毒症性ミオパチーの病態にはビタミンDの欠乏が関与しており,治療にはビタミンDを投与する. 中毒性ミオパチーでは,アルコール多飲者に急性・慢性のミオパチーが生じ,低カリウム性だけでなく横紋筋融解症として発症する場合がある.副作用による薬剤性ミオパチーでは,重篤な横紋筋融解を生じる場合があり,あらかじめ血清CKやミオグロビンを測定しておく.高脂血症薬であるフィブラート系薬やHMG-CoA還元酵素阻害薬,その他バルビタール,コデイン,シクロスポリン,などさまざまな薬剤が知られているので,定期的な採血をしておく.近年薬物常習者の急激な増加により,麻薬,覚醒剤,シンナーなどでもミオパチーを発症するケースがみられる.[依藤史郎]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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