翻訳|codeine
アヘンアルカロイドの一種。アヘン中に1.3~5.4%含まれる。分子式C18H21O3N。化学的にはメチルモルヒネのことである。1832年ロビケP.J.Robiquetによってアヘンから分離され,現在は1903年にベーリンガーBoehringerの考案した方法で工業的に合成されている。無色の斜方結晶。含水物の融点154~156℃,無水物は115℃。薬用にはふつうリン酸塩が用いられる。作用はモルヒネに類似するがはるかに弱く,作用の個人差が少なく,乳幼児にも害が少ない。弱いながら依存形成作用をもつため麻薬に指定されているが,その100倍散は麻薬から除外され,家庭麻薬として主として鎮咳(ちんがい)(咳止め)の目的で,肺結核,気管支炎,喉頭炎などに広く用いられている。鎮痛・鎮静の目的で応用されることもあり,ピラビタールまたはバハビタール類と併用すると効果が増強される。常用量は,1回20mg,1日60mg。極量は,1回100mg,1日300mg。コデインの還元誘導体であるジヒドロコデインは,コデインより作用が強く,コデインと同じく呼吸抑制や依存形成などの副作用はモルヒネより弱いため,コデインと同様にリン酸ジヒドロコデインの形で用いられる。1/100以下を含有する倍散は家庭麻薬として利用されている。常用量は,1回10mg,1日30mg。極量は,1回100mg,1日300mg。
執筆者:金戸 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1832年フランスの薬剤師ロビケによって初めてアヘンから分離されたアヘンアルカロイドの一種で、モルヒネのメチル化合物。アヘン中に1.31~5.39%含まれる。モルヒネに類似した作用があるが麻薬性は少なく、習慣性となることは少ない。通常コデインリン酸塩として医薬品に用いられる。呼吸中枢を鎮静する作用があるところから、鎮咳(ちんがい)、鎮痛、鎮静の目的で使用される麻薬性鎮咳剤の代表的薬物である。気管支炎、百日咳(ひゃくにちぜき)、肺結核などの鎮咳に用いられる。鎮痛効果はモルヒネより弱いが鎮咳作用は強い。100倍散は麻薬の規制から外され、家庭麻薬として用いられる。1日の常用量は0.06グラム。
[幸保文治]
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C18H21NO3(299.36).モルヒネ型アヘンアルカロイドの一種.アヘン中に0.7~2.5% 含まれるが,おもにモルヒネのメチル化により合成される.通常,一水和物として無色の斜方晶となる.融点154~156 ℃.-136°(エタノール).水に微溶,エタノールに可溶.呼吸中枢に作用するので,リン酸塩を咳止め薬,鎮痛薬として用いる.LD50 290 mg/kg(マウス,経口).[CAS 76-57-3][CAS 52-28-8:リン酸塩]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[鎮咳薬]
咳は本来生体の防衛反応であるから,みだりに抑制すべきではないが,過度の咳は心身を消耗させるので鎮咳(ちんがい)薬を用いる。麻薬性鎮咳薬(コデインなど。含有量1/100以下の製剤は麻薬からはずされている)と非麻薬性鎮咳薬(デキストロメトールファン,ノスカピンなど)がある。…
…鎮咳薬は,延髄にある咳反射の中枢(咳中枢)に作用して咳を抑えるもので,麻薬性鎮咳薬と非麻薬性鎮咳薬に大別される。多用されるものとしては,前者に属するものでは,コデイン(アヘンアルカロイドの一つ),その水素添加誘導体ジヒドロコデインがある。非麻薬性鎮咳薬としては,デキストロメトルファン,チペピジン,ノスカピンなどがある。…
…作用部位とその作用の特徴によって,麻薬性鎮痛薬と解熱性鎮痛薬に大別される。
[麻薬性鎮痛薬]
天然のアヘン製剤をはじめ,その主成分アルカロイドであるモルヒネ,コデインと,モルヒネの化学構造の一部を変えた半合成品のエチルモルヒネ,オキシコドン,ジヒドロコデイン,さらに合成麻薬のペチジン,メサドンなどが含まれる。合成麻薬の化学構造も,基本的にはモルヒネの構造に由来したものが多い。…
…薬理学的には,アヘン総アルカロイドと,これから分離して得られるモルヒネ,コデイン,これらの半合成体(ヘロイン,オキシコドンなど),およびモルヒネ類似の薬理作用と依存性を有する合成薬物(ペチジンなど)をさす。英語はギリシア語のnarkē(麻酔,麻痺)に由来し,これらの薬物を摂取すると,意識が混濁したり,感覚が麻痺状態になることから,麻酔様状態を起こす薬物の意でつけられた。…
※「コデイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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