日本大百科全書(ニッポニカ) 「仲長統」の意味・わかりやすい解説
仲長統
ちゅうちょうとう
(180―220)
中国、後漢(ごかん)末の思想家。字(あざな)は公理。山陽郡高平(山東省)の人。学問を好み、書物を渉猟、文章家でもあった。二十数歳のころ周辺の州郡を遍歴し、有能の士と交際する。度量が広く、こだわることなく直言し、「狂生」と評された。時勢、風雲の急なるを察してか、州郡の招きに応ぜず、人世には清談の徒のごとき冷静な目をもっていた。のちに荀彧(じゅんいく)によって尚書郎に抜擢(ばってき)され、また曹操(そうそう)の幕下となる。古今、時俗の行事を論説し、発憤嘆息して『昌言(しょうげん)』34篇(へん)を著した。書は散逸し断片断章を残すのみであるが、人事を本(もと)とし、天道を末とする観点は、既存の天命観に対する批判となり、また、新たな政権を予言するものともなっている。
[大久保隆郎 2016年1月19日]