仲間関係(読み)なかまかんけい(英語表記)peer relationship

最新 心理学事典 「仲間関係」の解説

なかまかんけい
仲間関係
peer relationship

ものの考え方や心のよりどころとなる準拠集団としての仲間関係について,児童期から青年期にかけて述べる。乳幼児期の子どもは,当初はほかの子どもといる場面でも,一緒に遊ぶということはできず,互いに無関係にばらばらの遊びをするだけである(「平行遊び」「独立遊び」)。やがて,幼児期から児童期にかけて子ども同士で遊ぶことが可能となり,これが仲間集団へと発展していく。児童期後半の10歳ころの時期には,仲間集団への強い忠誠心や凝集性同調背景として集団でおとなに反抗するなどの行動が見られる。この時期はギャングエイジgang ageとよばれるギャング集団を通じて,子どもは社会的スキルを身につけていく。しかし近年では,少子化や遊びの変化,都市化の進行などによりギャング集団は消滅傾向にある。

 青年期に入ると,集団としての仲間関係よりも個別的で親密な友人関係friendshipを重視するようになるが,実際には仲間関係からの影響も見られる。ブラウンBrown,B.B.(2004)によれば,仲間からの影響は,薬物乱用や性的逸脱などの非行,反社会的行動のほか,自尊感情,異性に対する対人行動など広い範囲にわたる。ただし,個別的な友人関係とは異なり,こうした影響は青年自身にとっても自覚されにくい。

 仲間集団peer groupは3~10人以内程度の同性の少人数グループから成るクリークcliqueと,それより大きな規模クラウドcrowdに分けられる。クリークは児童期後半から青年期中期にかけて顕著に見られ,成員は常時入れ替わる層と一貫して同じクリークに所属しつづける層に分かれる。リーダー格の者は後者に属し,メンバーへの加入や集団への忠誠を厳しく監督する。こうしたリーダーによる厳しい拘束は青年期の初期以降は徐々に緩くなり,非明示的ないじめのような形に変質する。一方,クラウドは児童期中期以降に見られるが,青年期が終了するまでに重要性が失われ集団の実態も消失していく。クラウドにおいても,青年は必ずしも単一の集団にのみ所属するのではなく,複数のカテゴリーによるクラウドを自由に行き来する者も少なくない(Brown,& Klute,C.,2004)。仲間集団の変容については,ダンフィーDunphy,D.C.(1963,1980)のフィールド調査による古典的研究が知られている。これによると,青年の仲間関係は次のような5段階の過程を経るという。各クリークが同性同士でまとまり,互いに相互作用をもたない前クラウド段階(stage1)。異性のクリーク間での表層的な交流からクラウドが発生しだす,クラウド開始段階(stage2)。クラウドから流入したメンバーによって,異性を含むクリークが部分的に発生する段階。この段階ではクリーク内の上位のメンバーにおいて異性交際が始まる(stage3)。異性メンバーから成る緊密なクリークが形成され,それらが集合したクラウドが十分に発達する段階(stage4)。恋人や夫婦になりうる親密な異性メンバーを含んだ凝集性の緩やかなクリークが形成され,徐々にクラウドの解消に向かう段階(stage5)である。

 仲間関係と友人関係は実態としては異なる位相であるにもかかわらず,友人関係を測る尺度の多くは,両者を厳密に区別していない。平石賢二(2010)は,友人研究の問題点として,最も親しい友人など特定の個人を想定させる研究から,特定の個人に限定しない一般的な友人,仲間集団,学級集団を想定した研究まで,さまざまな想定対象の研究が混在していること,一般化した友人を想定した場合には想定される関係は恣意的なものになりがちであること,一方で特定の親友を想定した場合には,その結果の一般化が難しいことなどの問題点を挙げている。仲間の関係と個別的な友人の関係を区別してとらえることが,今後必要であろう。
〔岡田 努〕

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