信用力や十分な担保のない個人や中小企業などが借入れ、物やサービスの購入、不動産の賃借などの契約を行ったときに、その返済や支払いを、第三者である個人が保証する行為。返済や支払いが滞った場合、保証人となっている個人が土地・建物、生命保険など、さまざまな私財を処分して返済や支払いにあてる。とくに中小企業が金融機関から借入れを行う場合、経営者やその親族が債務返済を保証するケースが多く、日本独自の商慣習として広く行われている。
保証には、期限を定めずに将来発生する不特定の債務に対する「包括根保証」と、債務額が特定される「特定債務保証」がある。個人保証は金融機関や企業の貸し倒れリスクや未収リスクを軽減できるものの、保証した個人には過重な負担となることがあり、自殺に追い込まれる経営者も少なくなかった。このため日本政府は2005年(平成17)の民法改正により、一般の借入金に関する包括根保証を無効とした。さらに、2020年(令和2)施行の改正民法では、不動産の賃借や物やサービスの購入契約時に、契約書に保証上限額を明記するよう求め、上限額を定めない「包括根保証」は無効とした。事業資金の借入れ契約についても、保証意思を1か月以内に公正証書で確認できなければ無効とした。また2020年から、中小企業を引き継いだ経営者に対し、経営状態が健全であることを示す、(1)債務超過でない、(2)もうけに比べ借入金が多すぎない、などの条件を満たせば、個人保証を求めない制度を導入。個人保証の負担が重く、中小企業の事業承継が進まない一因となっているためである。全国銀行協会(全銀協)と日本商工会議所も個人保証に依存しない融資の促進指針「経営者保証に関するガイドライン」(2013年策定)で、新旧経営者の両方から個人保証をとることを原則禁止する内容に改めた(2020年4月適用)。商工組合中央金庫(商工中金)も同ガイドラインの徹底により、一定の条件を満たす企業に対し原則無保証化するとした(2020年1月適用)。
[矢野 武 2020年3月18日]
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