家庭医学館 の解説
けんこうしんだんでいじょういんえいがはっけんされたとき【健康診断で異常陰影が発見されたとき】
健康診断では、かならず胸部X線写真撮影(きょうぶエックスせんしゃしんさつえい)が行なわれます。そして、異常陰影が発見されることがあります。
しかし、異常陰影が発見されたからといって、すぐに病気だ、入院だ、治療だということになるわけではありません。
まず必要なことは、以前の胸部X線写真と比較してもらうことです。そして、新しい陰影なのか、以前からの陰影の残存なのか、あるいは以前からの陰影が拡大したものかを判断してもらいます。
新しい陰影である場合、あるいは以前からある陰影が拡大している場合は、さらに詳しい検査が行なわれます。また、場合によっては治療が必要になることもあります。
以前からの陰影の残存の場合には、問題はありません。念のために、次回は、いつ胸部X線写真撮影を受ければよいかを決めて終わりになります。
以前から残存している陰影なのに、CT(コンピュータ断層撮影)検査をしたりすることは不要です。費用が無駄(むだ)になるだけでなく、不必要な放射線をあびてしまうことになるからです。
CT検査では、単純な胸部X線写真撮影の10倍から20倍の放射線をあびます。さらに、以前から肺の中の病巣を詳しくみるために行なわれてきた断層撮影では、CT検査よりも多くの放射線をあびることになります。
健康診断は本来、健康な人に何か異常がないかをチェックするものですから、どうしても疑い深くなり「読み過ぎ」になりがちです。
胸部X線写真撮影で異常といわれても、本当に異常が確認されることは、新しい陰影の異常と以前からの陰影の異常を合計しても、60%くらいです。
さらに、詳しい検査が必要になったり、治療を要することになる頻度は、全体からみると5~10%以下にすぎません。
しかし、だからといって、健康診断で異常を発見され、連絡を受けたのに放置していいということにはなりません。
◎健診で発見されることのある病気
健康診断によって見つかる呼吸器の病気でもっとも多いのは肺結核(はいけっかく)、ついで肺がんです。そのほかにもさまざまな病気があります。以下にX線の単純撮影で見つかる病気とその特徴についてみてみましょう。
■肺野(はいや)の限局性(げんきょくせい)の浸潤性(しんじゅんせい)(周囲との区別がはっきりしない)陰影で見つかる病気
・肺結核
・肺炎球菌(はいえんきゅうきん)肺炎やマイコプラズマ肺炎
肺炎球菌やマイコプラズマがおこす肺炎は、軽いかぜのような症状のあることが多いものです。
■肺野の孤立性(こりつせい)(周囲との境界がはっきりしている)陰影で見つかる病気
・肺がん
なかでも、肺野の末梢部(まっしょうぶ)にできやすい腺(せん)がんは、よく健康診断時に発見されるタイプの肺がんです。
・転移性肺腫瘍(てんいせいはいしゅよう)
他の臓器のがんが肺に転移したものです。
・結核腫(けっかくしゅ)
肺がんとの区別は、手術をして初めてわかることが少なくありません。
■肺野のびまん性(両方の肺に広がっている)の陰影で見つかる病気
・肺結核
症状があるのに放置しておいた場合で、症状のないことはありません。
・特発性肺線維症(とくはつせいはいせんいしょう)
気づかない程度の呼吸困難のあることが多いものです。
・じん肺(ぱい)
粉塵(ふんじん)を吸い込むことのある職業歴が、なによりも重要な診断のポイントとなる病気です。
・肺胞(はいほう)たんぱく症
まれな病気です。
・肺好酸球性肉芽腫症(はいこうさんきゅうせいにくげしゅしょう)
喫煙者、とくに若年からの喫煙開始者に多い病気ですが、まれな病気です。
■肺野の拡大・透過性の亢進(こうしん)所見(肺野が黒く写る)で見つかる病気
・肺気腫(はいきしゅ)
喫煙者にみられる病気です。
・リンパ脈管筋腫症(みゃくかんきんしゅしょう)
妊娠可能な年齢の女性だけにみられる病気です。
■縦隔や肺門部の腫(は)れを示す所見で発見される病気
・サルコイドーシス
両側の肺門部にあるリンパ節の腫れのほとんどはサルコイドーシスです。
・結核性(けっかくせい)リンパ節炎(せつえん)
片側の肺門部にあるリンパ節の腫れで発見されますが、現在ではきわめてまれな病気になりました。
・縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)
増殖しない良性のものが多くみられます。