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先天性代謝異常症の早期発見のために せんてんせいたいしゃいじょうしょうのそうきはっけんのために

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家庭医学館の解説

せんてんせいたいしゃいじょうしょうのそうきはっけんのために【先天性代謝異常症の早期発見のために】

先天性代謝異常症とは
 からだは、食事から摂取した栄養素を利用し、活動に必要なエネルギーを生み出したり、からだをつくる際に使う物質を合成したりしています。栄養素などの物質を変化させるこのからだの反応を代謝(たいしゃ)といいます。
 代謝は、化学反応を触媒(しょくばい)(仲立ち)する酵素(こうそ)というたんぱく質やからだの内外で物質の移送を担当するたんぱく質(担送(たんそう)たんぱく質)のはたらきで進められています。先天性代謝異常症は、この酵素や担送たんぱく質のはたらきの生まれつきの低下や欠損のためにおこる病気です。
 体内でたんぱく質をつくる情報は、遺伝子が担っています。特定の遺伝子に生まれつきの変化が生じていると、酵素や担送たんぱく質のはたらきの低下や欠損がおこり、代謝が円滑に行なわれなくなります。
 これが先天性代謝異常症(せんてんせいたいしゃいじょうしょう)という病気であるわけです。
 現在までに、数百種類の先天性代謝異常が知られています。この病気は、数千人から100万人に1人と頻度は少ないのですが、病気が多岐(たき)にわたるため、大学病院の小児科を訪れる子どもの1~10%が先天性代謝異常症と見積もられています。
 先天性代謝異常症は、メンデルの法則にしたがって遺伝する遺伝病の仲間でもあります。そのため、先天性代謝異常症の心配がある場合は、経験を積んだ代謝を専門とする小児科医の診察を受けるとともに、遺伝相談(「遺伝相談」)に出向くのも大きな助けになります。
◎先天性代謝異常症の分類
 先天性代謝異常症は、代謝がどのように妨げられているかによって、つぎのように分類されています。
アミノ酸(さん)・有機酸(ゆうきさん)・尿酸(にょうさん)サイクルの代謝異常症
 フェニルケトン尿症(にょうしょう)(「フェニルケトン尿症」)、メープルシロップ尿症(「メープルシロップ尿症(楓糖尿病)」)、ホモシスチン尿症(「ホモシスチン尿症」)、高(こう)アンモニア血症(けっしょう)などがあります。
●糖質代謝異常症
 ガラクトース血症(けっしょう)(「ガラクトース血症」)、ぶどう糖の貯蔵物質であるグリコーゲンが蓄積する糖原病(とうげんびょう)(表「糖質代謝異常症」)などがあります。
脂肪酸(しぼうさん)代謝異常症
 からだの重要なエネルギー源である脂肪酸の代謝異常症で、ミトコンドリア病ペルオキシソーム病などに細分化されています(表「ミトコンドリア病・脂肪酸酸化障害・ペルオキシソーム病」)。
リソソーム代謝異常症(たいしゃいじょうしょう)
 リソソームは、細胞の中にある小器官の1つで、袋状をしています。このリソソームの中には、多糖類(たとうるい)、脂質(ししつ)、ムコ多糖体などを分解する多種類の加水分解酵素(かすいぶんかいこうそ)(消化酵素の仲間)が含まれています。この酵素のどれかのはたらきが欠けると、リソソームの中に分解されなかった物質が蓄積し、病気がおこります。ムコ多糖症表「ムコ多糖症・ムコリピドーシス」)、テイ・ザックス病(表「脂質代謝異常症」)やゴーシェ病表「脂質代謝異常症」)などの多くの病気がこの仲間です。
●リポたんぱく代謝異常症
 血液中の脂質を運搬するリポたんぱくに異常があっておこる病気で、別名、先天性高脂血症(せんてんせいこうしけっしょう)ともいいます。家族性高コレステロール血症(「家族性高コレステロール血症」)がその代表です。
●核酸(かくさん)代謝異常症
 遺伝子を形づくる核酸という物質の合成や分解の道筋に異常があっておこる病気で、レッシュ・ナイハン症候群(しょうこうぐん)(表「核酸代謝異常症」)やアデノシン・デアミナーゼ欠損症(けっそんしょう)(ADA欠損症(表「核酸代謝異常症」))などがこれまでに見つかっています。
●膜担送(まくたんそう)たんぱく質の異常症
 細胞の中に銅を運ぶ銅担送たんぱく質の変異でおこるウィルソン病(「ウィルソン病」)、メンケス病などがあります。腎臓(じんぞう)の尿細管(にょうさいかん)という組織の機能異常も知られています。
◎早期発見のために
 先天性代謝異常症は、これまで根本的な治療法がなく、症状や苦痛をやわらげる対症療法が治療の中心でした。
 最近は研究が進み、アデノシン・デアミナーゼ欠損症に対し、遺伝子治療が試みられるようになっています。ただし、遺伝子治療がふつうの治療法になるには、技術的にも倫理的にも、まだ多くの課題が残っています。
 一部の病気には、骨髄移植(こつずいいしょく)、肝移植(かんいしょく)、酵素の補充療法が行なわれ、効果をあげています。
 先天性代謝異常症のなかには、有効な治療法がすでに確立して、早期に発見して治療を開始すれば、健康な赤ちゃんと同じように育つ病気もあります。
 このような病気には、早期発見のための新生児(しんせいじ)マススクリーニング検査(けんさ)(振るい分け検査(コラム「新生児マススクリーニング検査」))が、新生児全員に対し、公費で実施されています。先天性代謝異常症のなかで、この検査の対象になるのは、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症です。
◎疑わしい徴候
 先天性代謝異常症は、それとわかる症状の現われない病気が多いのですが、なかには、特徴的な症状を示す病気もあります。
 症状を示す病気であっても、症状の現われ方は個人差が大きく、同じ病気をもった兄弟姉妹でも、発症の時期や程度に差があることが少なくありません。
 したがって、症状から先天性代謝異常症かどうかを疑うのはむずかしいのですが、①家系内に近親婚の人がいる、②家系内に原因不明の病気で亡くなった子どもがいる、③家系内に同じ症状を示す人がいる、といった場合は、先天性代謝異常症を疑うきっかけとなります。
 以下に、先天性異常症が疑われるおもな徴候をあげておきます。
●新生児期の徴候
①全身感染症に似た症状がみられる(脈が速い、呼吸が速い、熱がある、体温が低い、ミルクの飲みが悪いなど。敗血症(はいけつしょう)のことも)
②分娩(ぶんべん)は正常だったが、その後、元気がない、ミルクの飲みが悪い、嘔吐(おうと)などがみられる
③けいれん、筋力低下などの神経症状がある
④特有な体臭(かび臭い、汗臭い、魚臭い)
⑤肝臓が腫(は)れて、大きい(腫大(しゅだい))
⑥特異な顔つき、からだつきをしている
●新生児期を過ぎてからの症状
①ストレス、感染症をきっかけとして、発作的なけいれん、嘔吐、意識障害がおこる
②急病の際に異常な体臭がする
③説明のつかない知的退行、発達の遅れ、運動機能の障害、けいれんがみられる
④肝臓や脾臓(ひぞう)が腫れ、大きい
⑤腎結石(じんけっせき)が存在する
⑥特異な顔つき、からだつきをしている
●検査でみられる徴候
①代謝性(たいしゃせい)アシドーシスがみられる
②血液中のアミノ酸やアンモニアの値が高い
③低血糖(ていけっとう)(血糖値が低い)がみられる
④血液中の尿酸の値が高いか低い
⑤細胞質の中に空胞(くうほう)やリンパ球がある

出典|小学館
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