先陣(読み)センジン

デジタル大辞泉 「先陣」の意味・読み・例文・類語

せん‐じん〔‐ヂン〕【先陣】

本陣前方に配置した陣。さきぞなえ。⇔後陣こうじん
一番乗りさきがけ物事最初にすること。「先陣を切る」「先陣争い」
[類語]後陣先備え後備え

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「先陣」の意味・読み・例文・類語

せん‐じん‥ヂン【先陣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 本陣の前方に設けた陣。最前線に立つ部隊。前陣。先鋒。さきぞなえ。さきて。
    1. [初出の実例]「先陣が橋をひいたぞ〈略〉あやまちすなと、どよみけれ共、後陣はこれをききつけず」(出典:平家物語(13C前)四)
  3. 一番のり。さきがけ。先登。
    1. [初出の実例]「於尾張国墨俣渡、依争先陣、与御家人等闘乱之故也」(出典吾妻鏡‐寿永三年(1184)二月一日)
  4. がえん(臥煙)」の異称
    1. [初出の実例]「赤脚(〈注〉すあし)火を踏て水を溌する者は、廝役(〈注〉センジン)なり」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)

さき‐じん‥ヂン【先陣】

  1. 〘 名詞 〙 本隊の前に配置される軍勢先頭の軍勢。せんじん
    1. [初出の実例]「先陣 サキヂン」(出典:文明本節用集(室町中))

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改訂新版 世界大百科事典 「先陣」の意味・わかりやすい解説

先陣 (せんじん)

中世武家社会における戦時陣営の一つ。本陣の前方に設けたことに由来し,進撃の最先端を意味した。別に先鋒(せんぽう),前備(さきそなえ)とも称した。陣とは本来,参内公卿の列座する場所を意味したが,これより転じて後世,兵士の屯営するところを陣と称した。一般に戦闘における布陣は,大将とこれを取りまく本陣と,攻撃をむねとする先陣,さらに敵の追撃を阻止する後陣よりなっていた。こうした意味での陣営の称とは別に,先陣の語は単身で敵陣に攻撃する者を指すこともある。その場合,先登(さきがけ)あるいは先懸(駆)ともいった。《平家物語》に見える佐々木高綱梶原景季との史上名高い〈宇治川の先陣争い〉はその例である。高名が軍功に直結する中世初期の合戦では,いやがうえでも先陣争いは激烈を極めた。しかし後世,騎馬を主体とする個人戦から足軽などの登用による集団戦へと戦闘様式が変遷する中で,前代のように個人本位の先陣争いは姿を消すようになる。
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