児女英雄伝(読み)じじょえいゆうでん

精選版 日本国語大辞典 「児女英雄伝」の意味・読み・例文・類語

じじょえいゆうでんジヂョエイユウデン【児女英雄伝】

  1. 中国通俗小説。四〇回。清の文康作。道光年間(一八二一‐五一成立。光緒四年(一八七八)刊。無実の罪で入獄中の父を救うため賠償金を持って旅行中の安公子悪人らにつけねらわれ命の危うい時、児女と英雄性格を兼ね備えた十三妹(何玉鳳)に助けられ、父を救い科挙合格栄華を楽しむ。文章は軽妙で純粋な北京語で書かれ、義侠小説典型となった。別名「金玉縁」。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「児女英雄伝」の意味・わかりやすい解説

児女英雄伝
じじょえいゆうでん

中国、清(しん)代の口語長編小説。全40回。道光年間(1821~50)、満州旗人(きじん)の費莫文康(ひばくぶんこう)が『紅楼夢(こうろうむ)』に対抗して執筆したもので、主人公安公子が罪に陥れられた父の救出のために旅に出て、強盗に危うく命をとられそうになったところを侠女(きょうじょ)十三妹(シイサンメイ)(実は何玉鳳(かぎょくほう))に助けられ、のちに公子は父を救出して、自分とともに十三妹に助けられた張金鳳(ちょうきんぽう)と何玉鳳の2人を妻とし、父母孝養を尽くし、科挙に合格して立身出世する筋で、思想的にも技巧的にも陳腐な作となっている。ただ作者善意全編にあふれ、純粋な北京(ペキン)語の軽妙でユーモラスな叙述によって、特異な侠義小説となっている。武田泰淳(たいじゅん)の『十三妹』はこの小説に基づく。

[藤田祐賢]

『立間祥介訳『中国古典文学大系47 児女英雄伝』(1971・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「児女英雄伝」の意味・わかりやすい解説

児女英雄伝
じじょえいゆうでん
Er-nu-yingxiong-zhuan

中国,清の口語章回小説文康の作。 40回。道光年間 (1821~50) 成立。何玉鳳という才色すぐれ,武芸抜群の女性が,父の仇を討つために女侠となって活躍し,のち命を救った安公子と結婚するのが大筋。作者は満州旗人の家柄で,初め栄華をきわめた生活をおくり,のち貧窮に陥った点が『紅楼夢』の作者曹雪芹 (そうせっきん) に似ており,また本書も『紅楼夢』にヒントを得つつも強く反発して書かれたもので,妻妾円満,立身出世を一家の理想として描く点にそれが表われている。文学作品としては遠く『紅楼夢』に及ばないが,陽性な武勇の女性を主人公として設定したところに新しさがあり,ユーモアをまじえた軽妙で巧みな語り口をもち,また純粋の北京語で書かれているところから,日本で語学のテキストとしてよく使われたことがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「児女英雄伝」の意味・わかりやすい解説

児女英雄伝 (じじょえいゆうでん)
Ér nǚ yīng xióng zhuàn

中国,清代の白話長編小説。全40回。作者は満人の文康。道光年間(1821-50)の作。美しい女俠の何玉鳳と女々しい貴公子の安竜媒との物語で,何玉鳳が十三妹(シーサンメイ)と名のって父の仇をうつべく多くの悪人とわたりあう場面が,評話(講談)から発展したこの小説の見どころ。最後に二人は結ばれ,それぞれ女らしく男らしくなって大団円となるが,題名の寓意もそこにある。
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百科事典マイペディア 「児女英雄伝」の意味・わかりやすい解説

児女英雄伝【じじょえいゆうでん】

中国の白話長編小説。清の文康の作。1878年北京の聚珍堂刊。全40回。何玉鳳という娘が十三妹(シーサンメイ)と名を変えて,父の仇討(あだうち)をするという物語。

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