児童期(読み)じどうき(英語表記)childhood

翻訳|childhood

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

児童期
じどうき
childhood

生後6年から 12年までの小学校時代をいう。全般的には病気に対する抵抗力が増し,特に児童期の後期には,相当に激しい運動をしても疲れないほどになる。最終期には,発育が加速して青年期に入るが,その開始にあたっては個人差が大きい。社会的には集団の遊びを好み,特に中期には,ギャングエージともいわれるように,徒党をつくって遊んだり,いたずらやけんかをする。集団意識が強く,したがって,おとなの命令より仲間との約束に従うことが多くなる。情緒面は,前期にはまだ不安定な部分が残っているが,次第に安定性を増す。興味は,外面的,具体的なものから内面生活にも向けられるようになり,感情の興奮を抑えることや,自己について反省することが可能となり,社会生活への適応能力が一層向上する。知的な面では,具体的な思考に始り,抽象的な思考へと移行していく。数概念は,中期において急速に発達し,後期には,抽象数をも取扱うことができる。語数は,後期において著しく増加し,それは青年期まで続く。形式的論理もある程度まで発達し,おとなの思考様式に近づいてくる。

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世界大百科事典 第2版の解説

じどうき【児童期】

一般に小学校入学のころから青年期の開始までの時期をさす。しかし子どもの精神発達において7歳ごろまでを幼児期とみることがあり,また青年期の開始期(青年前期=思春期)が発達加速現象などによって早まる傾向もあるので,必ずしも日本の小学校の対象年齢(6~12歳)と一致するわけではない。 この時期は9,10歳ごろを境に大きく二つに分けて考えることができる。すなわち前半においては,具体物を目前にしながらの,あるいは具体的経験をもとにした推理や思考の能力が発達する。

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大辞林 第三版の解説

じどうき【児童期】

幼年期と青年期の間にあたる六、七歳から一二、三歳までの時期。後期には抽象的思考が可能となるなど知的発達が著しく、集団的行動をすることにより社会性も増大する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

児童期
じどうき
childhood

一般に、小学校に入学する時期から、性的成熟が始まる思春期までの時期を、児童期とよんでいる。幼児期と青年期との間の時期で、年齢的には6、7歳から、11、12歳の間に対応する。その時期は、わが国の教育制度のもとでは、小学校期にあたるため、この期は、また、学童期とよばれることがある。この時期は、現代の近代化された社会においては、(1)学校で、将来の社会人に備えての組織的・基礎的教育・訓育が行われ、子供の主要な活動は(幼児期の遊びから)学習活動となる、(2)活動の場が、家庭から学校や近隣集団に移り、仲間集団のなかでの活動(学校生活、遊び)が、社会・道徳意識、人格形成のうえで重要な役割を果たし、そのなかで自律性の発達が進む、(3)学校での学習活動と結び付いて、知的能力は飛躍的に発達し、随意的諸機能、内的な観念による判断能力が形成される、などで特色づけられる。[天野 清]

身体的発育

身体的に比較的安定した成長が行われる時期で、身長、体重も漸次増大し、思春期での急激な成長を準備する。乳歯と永久歯の交替もこの期に行われる。脊柱(せきちゅう)(頸椎(けいつい)、胸椎、腰椎)のすべての屈曲が形成されるが、骨格の骨組織の発達が完了しないため、子供の身体は、この期に固有な柔軟性と可動性を保持している。このことは各種の運動技能の習得に有利な条件となるが、他方、机、椅子(いす)などを身長にあわせ、つねに正しい姿勢を保ち活動をさせることや、適切な身体教育は、側彎(そくわん)症や脊柱異常などの障害を引き起こさないために必要である。大脳では、この期はとくに前頭葉の発達が顕著で、機能的には自己の行動のコントロールや抑制に必要な制止過程の発達が著しい。[天野 清]

知的発達

学校での組織的な教育のもとで、子供は、この期に、さまざまな基礎的諸能力や諸技能(読み・書き能力、計算能力など)、自然、社会についての科学的諸知識を習得するだけでなく、学習活動のなかで、観察力、思考力、注意力、記憶力などの認知諸機能が飛躍的に発達する。この期の知的発達の大きな特徴は、心理諸過程に随意性(意志性、意識性)が発生し、随意的な知覚(観察)、随意的注意、随意的記憶、随意的思考が発達することである。また、内言(ないげん)の発達と結び付いて、課題を(頭のなかで)内的に解決したり、課題解決の計画を、あらかじめ内的にたてたり、自分の行為を随意的に統制・調整する能力が発達することでも特徴づけられる。この期は、また、論理的思考操作、空間表象の発達も著しく進展する。しかし、形式的な論理・命題操作の発達は、今日の教育条件のもとでは、11、12歳以降になって行われるので、J・ピアジェは、この期の子供の思考を、具体的操作期の思考と名づけている。[天野 清]

人格の形成と社会的発達

この期の子供の人格発達の主要な方向と特徴は、親・教師の権威に依存した他律的な、自他の未分化な存在から、自分の内的な価値観、基準に基づいた自律的な、自我意識をもつ存在へと発達することである。その際、その発達にとって決定的な役割を果たすのは、学級、班、友だちなど仲間集団による集団的活動である。6~8歳のころには、まだ友人の数も少なく、学校内での生活・活動は教師・大人の権威に依存しているが、9、10歳ごろから、自発的な結束力の強い仲間集団をつくり、自分たちでルールを決め、自発的な活動を行う。また、学級活動や班活動でも、自分の所属集団を意識し、集団の一員であることを自覚し、集団で決めた決まりに従って行動する。この段階では大人の権威によらないという意味で自律的だが、集団の権威によっているという意味で、まだ他律的である。しかし、11、12歳のころになると、友人、仲間関係も、互いの心のつながり、考え方、価値観などの内面生活での結合、共感を基礎にしたものを求めるようになり、そのなかで、自律的な自我意識、価値意識の発達が進行する。[天野 清]

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最新 心理学事典の解説

じどうき
児童期
childhood

およそ6~7歳から11~12歳までをいう。小学校在学時に当たるため,学童期ともよばれる。小学校入学を契機として,本格的な規律ある集団生活を経験する。小学校中学年になると,体格体力が向上し,巧みな動きを必要とする遊びや運動が可能になる。また,2次的ことばの獲得やメタ認知の発達などの質的転換が起こる。生活空間も拡大する。高学年は,青年期への移行期に当たり,女子では身体が急成長する思春期スパートが始まる。ピアジェPiaget,J.(1970)によれば,児童期前期は前操作期から具体的操作期への移行期に当たる。具体的操作期は,系列化,保存(とくに数の保存),クラス化ができる第1段階(7~8歳)と,具体的操作がさまざまな領域での具体物に広く適用され,思考に論理的な一貫性が認められる第2段階(9~10歳)に分けられる。高学年は,ピアジェの理論では形式的操作の始まりの時期に当たり,具体物の支えなしに数や命題(ことば)を操作することや,潜在的な可能性を考慮し仮定に基づいた論理的思考を展開することが,しだいに可能となる。社会的視点取得の面では,児童期において,他者視点の獲得,さらには第三者の視点から自他およびその関係性をとらえ始めるという発達プロセスが示されている。

【識字の発達】 就学を機に,読み書きの系統的な学習が始まる。低学年は,2次的ことばとしての話しことばと書きことばwritten language,writingが新たに獲得され,それらに影響されて1次的ことばとしての話しことばも深まりを見せる時期である。2次的ことばの獲得は中学年ころとされ,さまざまな具体的事象をことばによって概念化することにつながる。高学年以降は,思考の発達に伴い,論証や検証のことばが獲得され,書くことによって知識を整理したり思考を深めたりすることが可能になる。「読み」は,視覚系と聴覚系の両方にまたがる同時的かつ継時的処理過程であり,文字情報ならびに音韻情報のボトムアップ処理にトップダウン的な意味抽出の過程が加わった複合的な情報処理過程である。児童期には,認知的処理資源が増大し,文字や単語の処理がスムーズになることから,文字や単語の理解に止まらず,文や文章を理解できるようになる。加えて,児童期半ばころからは,文章理解のモニタリングをはじめとするメタ認知も発達し始める。またこのころから,行動や情景描写から登場人物の心情や性格を読み取れるようになるほか,社会や宇宙など見えない世界へも関心が広がる。読書習慣をつける良い時期であるため,多くの学校で,読書活動をいっせいに行なう時間帯を設けるなどして,読書の推進が図られている。近年は読解力reading literacyの定義が拡大し,文章の解読と理解に加え,さまざまな目的のために書かれた情報を理解し,利用し,熟考することが含まれるようになった。これは,思考の成果を「主張し」「説得する」言語の獲得と関連する。読み書きを通して考えや理解を深める力が求められているのである。

 読みの困難reading disabilityは,大きく次の三つに分けられる。⑴視知覚の障害:文字の形や配列,語としてのまとまり等を視覚的に正しく知覚することができない。⑵文字と音との対応づけの障害:視覚情報である文字を,それに対応する音節すなわち聴覚情報に変換する過程に問題がある。⑶文章理解の障害:文章理解は,統語能力,表象化や概念化の力,推理・推論の能力,読み過程のモニタリングなど,さまざまな能力が関与している高次の認知過程である。読めても理解できない場合には,こういった高次の認知能力になんらかの問題があると考えられる。作業記憶の障害が関与する場合もある。

【数概念の発達】 幼児期から,日常経験を基にカウンティング(計数)が発達する。カウンティングの発達は簡単な加減法の基礎をなすものであり,幼児期から児童期にかけて,指を用いた計算を出発点に,加算や減算に関するさまざまな方略の発達が見られる。就学後しばらくすると,2桁以上の計算が始まり,繰り上がりや繰り下がりという新しい手続き的知識を習得する。計算手続きに関しては,とくに繰り下がりの学習以降から,誤った方略(バグ)の使用が多く見られ始める。正しい手続きが獲得されにくい理由としては,計算アルゴリズムの基盤となる原理(繰り下がりでは十進法)の理解が十分でないことなどが指摘されている。一方,算数の授業で学習する以前から,子どもは日常経験等により,新しい概念に関連した内容についてかなり豊かな知識を獲得していることが示されてきた。このようなインフォーマルな知識は,加減算のほか,乗算や除算,分数,割合,比例,単位当たり量(内包量)等の高度な数学的概念についても確認されている。算数教育ではまた,長さや液量などの連続量を取り上げ,その測定と単位について学ぶ。身の回りにあるさまざまな量を直接比較したり,任意の単位や普遍的な単位で比較したりする活動を通し,具体的な量の感覚を育て,単位の理解を深めることが望まれる。

【9歳の壁】 中学年ころに学力の個人差が拡大し,その学年に期待される学力を形成できていない児童が増加する現象は,教育現場では「9歳の壁」とよばれてきた。たとえば1982年に国立教育研究所(現,国立教育政策研究所)が実施した国語・算数の学力調査において,とくに3年生(9歳)から4年生(10歳)にかけて,学習遅滞児の顕著な増加が示された。「9歳の壁」は最初,聴覚障害児に対する教育上の問題として提起されたが,後に広く子どもの学力全般の問題を指して用いられるようになった。学力に関する問題としてはほかに,全国調査や国際比較調査の結果,日本の小学生の全般的な特徴として,手続き的知識・スキルの水準の高さに比して,概念的理解や,それに関連する思考プロセスの表現が不十分である傾向が指摘されている。またその中で,学力の学校間格差をはじめ,所得や教育投資といった家庭的背景による学力格差difference of academic achievementの拡大が問題となっている。

仲間関係peer relationship】 児童期半ばころから,仲間集団が形成され,自己の判断や行動のよりどころがおとなから友だちへと移る。これと前後して,集団の中での社会的比較により,否定的側面をも含めた自己理解や,仲間との関係性から見た自己評価を行なうようになり,自己概念が現実的で複雑なものに変化していく。仲間関係は,仲間の行動や態度を観察し模倣する機会を提供し,児童の情緒的安定や社会的能力の発達に大きく影響する。とくに,仲間との対立や葛藤を経験することで,他者理解を深め,一定のルールの存在を学ぶことは,葛藤解決方略をはじめとするさまざまな対人関係スキルを獲得していくうえで重要である。集団での経験は,社会性の発達に寄与するとともに,後の同一性形成の時期を生きる土台にもなる。しかし近年では,従来のような児童期中期のギャング・グループは消えつつあり,少人数が屋内で電子ゲームに興じるなど,子どもの生活空間や遊びの変化が,発達に与える新しい影響が懸念されている。 →青年期 →認知発達 →発達段階 →幼児期
〔坂本 美紀〕

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