入鹿池(読み)いるかいけ

日本歴史地名大系 「入鹿池」の解説

入鹿池
いるかいけ

[現在地名]犬山市

市の東南端にある。面積約一・五八平方キロ。周囲約一二キロ。「尾張名所図会」によれば、この辺りは、「もとは入鹿といへる村にて、北は今井の山、東は奥入鹿の山、巽の方は大山・内津の山、坤の方は本宮山、西は尾張富士にてかこまれたる村落」とある。今井いまい(黒平川)小木こき川・奥入鹿おくいるか川などはここで大川となり、銚子口ちようしぐちからくらふちを経て羽黒はぐろ川へ落ちていた。「日本書紀」安閑天皇二年五月の項に「尾張国間敷屯倉・入鹿屯倉」とあり、この入鹿屯倉は入鹿村にあったと推定される。

丹羽郡・春日井郡の台地は、山隈の雨池で灌漑しても水量不足のため旱損になることもあり、所によっては水脈がないため荒野も多かった。落合新八・鈴木久兵衛・江崎善左衛門・丹羽又助・鈴木作右衛門・舟橋七兵衛のいわゆる入鹿六人衆は、三方を山に囲まれ人工池を作るのに適した入鹿村に着眼。

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改訂新版 世界大百科事典 「入鹿池」の意味・わかりやすい解説

入鹿池 (いるかいけ)

愛知県犬山市の南東にある灌漑用貯水池元来,丹羽・春日井両郡の東部,犬山扇状地にある村々は灌漑用水に乏しく,ほとんど畑地荒地であったのを水田化すべく築造したもので,1628年(寛永5)に尾張藩の手で江崎善左衛門ら入鹿六人衆が中心となって営まれた。池になった所は三方を山に囲まれ,わずかに南方だけが開けて,尾張丹羽郡,美濃可児郡の諸渓流を集めた五条川が熱田湾に流出していたのを,堤防を築いてせき止めたものである。池敷の内にはすでに古くから入鹿村があり,500余石の村高を有していたのを廃して,強制移転させた。旧村移転によって溜池を築いた大池の例としては数少ないものの一つである。池完成後の効果は,原野の開発800余ha,石高6830余石に達し,後ながく,入鹿池の疎通によって開かれた〈入鹿新田〉は,多くの古村の村々に接し,あるいは独立に〈入鹿新田〉として幾ヵ所も地図上に別記されている。これに古くからの灌漑反別(元からの水田で,池の築造後に新しく入鹿池の灌漑を受けるようになったもの)とを合して1万5310余石の灌漑区域となる。木曾川から引水して濃尾の大平野を灌漑する木津こつ),宮田の両用水に先立ち,尾張藩政初期の事業として注目される。以後寛文年間(1661-73),1801年(享和1),68年(明治1),84年,1906年とたびたびの修築を加え,現在は満水時の周囲約12km,面積59万9400坪(約200ha),水深平均18mで,受益面積約1400ha。池畔には明治村がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「入鹿池」の意味・わかりやすい解説

入鹿池
いるかいけ

愛知県犬山市南東部にある人造湖。池畔に明治村がある。周囲16キロメートル、面積1.66平方キロメートル。1632年(寛永9)に着工、1633年に完成した農業用水池。江崎善左衛門(ぜんざえもん)ら入鹿六人衆が、尾張(おわり)藩主徳川義直(よしなお)の許しを受けて造成した。池になった所は、今井、小木(こき)、奥入鹿などの小河川がここで大川となり、銚子口(ちょうしぐち)から鞍ヶ淵(くらがふち)を経て羽黒川へ落ちていた、その狭い谷、銚子口をせき止めたもので、入鹿村(農家160戸)は池底に沈んだ。現在も農業用水として犬山市、小牧(こまき)市、丹羽(にわ)郡の田地を潤している。なお、近くに秩父中・古生層の尾張富士(275メートル)、本宮山(ほんぐうさん)(293メートル)がそびえ、池と明治村、丘陵と山に囲まれた自然と歴史の観光地で、飛騨木曽川国定公園(ひだきそがわこくていこうえん)の一部。

[伊藤郷平]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「入鹿池」の意味・わかりやすい解説

入鹿池
いるかいけ

愛知県北西部,犬山市の南東部にある貯水池。東西約 1km,南北約 3km,面積 166万m2,有効貯水量 1520万m3。尾張第一,日本屈指の灌漑用水池。寛永9 (1632) 年築堤。これにより原野 1600haが開田された。池の西部丘陵に明治村が建設されるなど,池の周辺は観光開発が盛んとなっている。

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デジタル大辞泉プラス 「入鹿池」の解説

入鹿池

愛知県犬山市、蘇我入鹿の領地であった旧・入鹿村に、尾張藩主・徳川義直が造成した農業用溜池。1663年の築堤。日本有数の貯水量を誇り、尾張平野の水田約1300ヘクタールを潤す。池の周囲を尾張三山が囲み、湖畔にある野外博物館・明治村と併せ、県内外から観光客を集める。農水省の「ため池百選」に選定されている。

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