内婚・外婚(読み)ないこんがいこん(英語表記)endogamy, exogamy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「内婚・外婚」の意味・わかりやすい解説

内婚・外婚
ないこんがいこん
endogamy, exogamy

配偶者の選択の範囲規制する婚姻規制の一種である。内婚とは、ある集団の成員が配偶者を自分の所属する集団内部から選ばねばならぬというもので、外婚とは、逆に、自分の属する集団以外の集団に求めねばならぬというものである。

 未開社会に広くみられる単系出自集団リネージクラン半族などは、外婚集団のよく知られた例で、中国の宗族朝鮮の門中本貫などもこれに属する。家族は、その成員同士の性交近親相姦(そうかん)禁忌により禁じられているという点で、こうした外婚集団のうちで最小の、またもっとも普遍的な単位であるということもできるだろう。単系出自集団のなかにも、ベドウィン父系出自集団のように、外婚規制を伴わず、父方平行いとこ婚のごとき同一集団内での婚姻を優先させている例もあるし、非単系の出自集団のなかにも、逆に内婚的な傾向を示すものが多い。

 内婚規制の例としては、インドのカースト内婚の例が有名である。これは異なるカースト集団の成員との婚姻を禁じたものであるが、ここで注意せねばならぬのは、同じカーストの内部では、父系ないし母系のリネージが単位となった外婚が行われているという点である。つまり、問題となる集団のレベルに応じて外婚規制と内婚規制が使い分けられている。

 以上の明確な規則とは別に、ある集団が単に事実上内婚的であったり外婚的であったりするような場合にも、しばしば内婚・外婚ということばが用いられる。たとえば日本人は同じ日本人同士で結婚するのが通例であるし、また同じ社会階層に属する者同士が結婚する傾向もよく知られているが、これらは明確な規制を伴わない事実上の内婚的傾向の例である。部族国民民族などの全体社会のレベルでみられる事実上の内婚を考えに入れると、内婚は人類にとってかなり普遍的なものだということもできる。

 しばしば用いられる「地域外婚」ということばも、実際には婚姻規制というよりは、結果として外婚的であるような地域集団に関するものである。たとえば南スーダンヌエルの社会は、外婚的なクランに分かれているが、同時にその村落もまた外婚的単位となっている。これは、村に住む人々が、所属するクランは異なっていても過去の婚姻などを通じて互いに近い血縁者になっている結果であって、なんらかの規則の結果ではない。

 外婚規制の起源については、従来さまざまな説明がなされており、外婚を近親相姦禁忌が一定の方向へ拡大された結果とみるマードックらの説もその一つである。その起源がいかなるものであれ、外婚規制には、集団内部での婚姻を禁じることにより、他の集団との間に婚姻を通じての社会関係をつくりだし、拡大する機能がある。オーストラリア先住民の間でのように、外婚規制に加えて、交差いとこ婚のような積極的な婚姻規則がある場合、婚姻によって成立する集団間の同盟関係は、婚姻が行われるたびに維持更新されてゆくことになる。これに対し、アフリカの多くの社会でのように、外婚規制に加えて、さらに、以前に婚姻を結んだ集団と引き続き婚姻を結ぶことを避けるような社会では、婚姻を通じて同盟関係にたつ集団の範囲は、外に拡大していくことになる。

[濱本 満]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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