円キャリー取引(読み)エンキャリートリヒキ(その他表記)Yen carry trade

デジタル大辞泉 「円キャリー取引」の意味・読み・例文・類語

えんキャリー‐とりひき〔ヱン‐〕【円キャリー取引】

機関投資家ヘッジファンドなどが、金利の低い円で投資資金を調達し、円よりも金利の高い通貨に交換して金融商品を購入、運用すること。円キャリートレード。→キャリートレード
[補説]日本がデフレ脱却のために超低金利政策を続けたことから、海外のヘッジファンドなどが多用した。円を売って外貨を買うことから円安傾向となる。2008年後半、世界的に株安が進むと投資先から資金を回収する動きが強まり、投資資金として借りていた円を返済する必要から円買いが増加円高となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「円キャリー取引」の意味・わかりやすい解説

円キャリー取引
えんきゃりーとりひき
Yen carry trade

円キャリートレード、円借り取引ともよばれる。1990年代後半から顕在化した取引で、相対的に金利水準の低い日本で円を借り入れ、その調達資金を、より高いリターンが期待される資産で運用すること。資金調達コストとの利鞘(りざや)獲得を目ざす取引手法である。

 一般に、借り入れられた円はいったん米ドルに交換されることから、この段階では円安(ドル高要因となる。しかし、円キャリー取引が肥大化すると、投資環境の急激な変化にみまわれた場合、これらの資金が一斉に手仕舞(てじま)い(反対売買)となることもあり得る。そうした場合は、借入金の返済のため、大量の円買いが発生するから、急速な円高(ドル安)を招く要因となる。

 2007年にアメリカのサブプライムローン問題が深刻化し、これを契機にそれまで円キャリー取引を活発に行っていた海外の投資ファンド等が相次いで清算に走ったことから、その後の円高を加速する要因となった。円高の進展は、円キャリー取引を行っている投資家にとっては為替(かわせ)差損の発生につながるため、取引の解消が進み、それがさらなる円高を招くことにもなった。

 円キャリー取引のための資金供給は日本の金融機関が行っているから、投資家がその清算に失敗し破綻(はたん)した場合などは、最終的に邦銀が不良債権を保有するリスクを負う。また、為替のファンダメンタル要因(経常収支や金利など、為替水準に影響を与える基礎的材料)とは異なる次元で為替変動が惹起(じゃっき)されることは、中央銀行としての日本銀行の金融政策上に制約を与える。行きすぎた円キャリー取引は、日本の経済・金融システムにとって攪乱(かくらん)要因となるのである。

[高橋 元]

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知恵蔵 「円キャリー取引」の解説

円キャリー取引

「キャリートレード」のページをご覧ください。

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