改訂新版 世界大百科事典 「円筒印章」の意味・わかりやすい解説
円筒印章 (えんとういんしょう)
小さな円筒形石材の曲面に文様を彫りこんだ印章。シリンダー・シールcylinder sealとも呼び,生乾きの粘土板文書の上にころがして使う。メソポタミアで前4千年紀末のウルク期に出現し,新バビロニア時代に至るまで長期にわたって広く愛用された。施された意匠は時代,地域により少しずつ異なり,単純な繰返し文様から,人物,動物,神々,精霊などが登場して場面を構成する複雑なものまである。印章の持主の名が刻まれていることも多く,持主が自らの守護神の前で礼拝を行っている場面もしばしば見られる。メソポタミアの美術品のなかでは,庶民性の漂う数少ない遺品の一つである。エジプトなどにも伝播した。
→印章
執筆者:松島 英子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報