土居(読み)ドイ

デジタル大辞泉 「土居」の意味・読み・例文・類語

ど‐い〔‐ゐ〕【土居】

土を積み上げてつくったつつみ。土手。
城の周囲にめぐらした土の垣。
中世、屋敷や集落の周囲に防御のためにめぐらした土塁。転じて、土豪の屋敷をさす。堀の内。
建物や家具などの土台。
土居桁どいげた」の略。
土居葺どいぶ」の略。

つち‐い〔‐ゐ〕【土居】

建築物の土台。
「―にこけむせり」〈方丈記
帳台・几帳きちょうなどの柱の下の台。
「―のもとにて抱き取りたれば」〈宇津保・蔵開上〉

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精選版 日本国語大辞典 「土居」の意味・読み・例文・類語

ど‐い‥ゐ【土居】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 土を盛り上げてつくった土手。堤。
      1. [初出の実例]「中嶋立橋是土居也」(出典:御堂関白記‐長和二年(1013)九月四日)
    2. 城の周囲にめぐらした土を盛った垣。城壁。城塁。土居の上部を石垣にしたものを、鉢巻土居という。
      1. [初出の実例]「外城のめくり、六七百間堀をほり土居をつきあげ」(出典:宗長手記(1522‐27)上)
    3. 中世、家屋集落の周囲に防御のため、築きめぐらした土塁。転じて、土豪の屋敷をさす。堀内(ほりのうち)
      1. [初出の実例]「停止国中諸郡郷地頭守護人、承久以後新土居門田以下惣地下自由募等、平均遂国検」(出典:東宝記(1352)三)
    4. 中世、領主・地頭などの直轄地。
      1. [初出の実例]「一拾漆町陸段大拾歩 地頭土居〈略〉一捌町陸段小三十歩 公文土居」(出典:三宝院文書‐応永四年(1397)一二月日・讚岐国東長尾庄庄主昌緯注進状)
    5. 家や家具の土台。つちい。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    6. どいげた(土居桁)」の略。
    7. どいぶき(土居葺)」の略。
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 愛媛県四国中央市の地名。石鎚山脈から吹きおろすフェーンやまじ風)が強く、石置屋根の家や防風林が多い。
    2. [ 二 ] 岡山県東部、美作(みまさか)市の地名。江戸時代出雲街道の佐用と勝間田との間の宿駅として栄え、元祿年間(一六八八‐一七〇四)には代官所がおかれた。

つち‐い‥ゐ【土居】

  1. 〘 名詞 〙 柱や家を建てるための土台。帳台の四隅にあって柱を立てる木の台や、几帳の柱を立てる木の台などをもいう。
    1. [初出の実例]「御帳の外(と)のつちいに押しかかりて、ゐねぶりし給へり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)

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改訂新版 世界大百科事典 「土居」の意味・わかりやすい解説

土居 (どい)

城郭や屋敷地の周囲に防御のために築いた盛土のこと。土塁とほとんど同じ意味であるが,近世までは土居の語を用いた。また土居で防御された敷地全体,例えば土居屋敷を単に土居と呼ぶ例が中世以来あり,とくに土佐,伊予,淡路などに多い。平地の土居は堀を掘った土をかきあげて築いた。部分的に石垣を用いる場合もあり,その石垣が上端にあるのを鉢巻土居,下端にあるのを腰巻土居という。土をつき固めただけのものを敲(たたき)土居,さらにその表面に芝を張ったものを芝土居という。土居の勾配は,近世の軍学では,敲土居は高さ3間に敷(基底部)3間,つまり45度の傾斜,芝土居は敷2間,つまり60度の傾斜を定法としたが,山城で地山を削り残した土居の場合は,これより急勾配のものがある。土居の頂の平面を馬踏(まふみ)といい,塀や柵を設けた場合,その内側を武者走り,外側を犬走りという。屋敷や居館まわりの土居には竹を植えて崩れ止めや目かくしとすることが多く,近世の絵図等では土居藪土手藪と記され,土居が崩れていても残存する藪から土居の線を復原できることがある。
執筆者: 古代において,地方行政府たる国府の周囲にめぐらされた土塁は土居,土井,土手と称され,多賀城跡や周防,美濃,伊勢,佐渡などの国府には土塁の遺構が残る。周防国府跡では〈土居八丁〉と呼ばれ,国府の周囲を土塁がめぐっていたことがわかる。また,全国に建設された国分寺,国分尼寺のうち,遠江や陸奥国分寺では寺地境界に土塁を築いていたことが知られている。中世においては土居の外側に(濠)をうがつことが多く,その内側を〈堀の内〉とも呼んだ。

 土居のなかで最も大規模なものとして,1591年(天正19)に豊臣秀吉が京都の周囲にめぐらした〈御土居(おどい)〉がある。御土居は東は鴨川,西は紙屋川,北は鷹峯,南は九条を限り,周囲全長22.5kmに達する。まず外周に幅3~18mの堀を掘り,その土を盛りあげて基底部の幅10~20m,高さ3~5mの土居を築き,四方に10口(7口)を設けて出入口とした。御土居は防御機能よりもむしろ鴨川の氾濫を防ぐことで京都庶民の役に立ったといわれる。17世紀後半には京都市街は御土居を越えて東方へ拡大していった。
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土居 (どい)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土居」の意味・わかりやすい解説

土居
どい

愛媛県東部、宇摩郡(うまぐん)にあった旧町名(土居町(ちょう))。現在は四国中央市の西部を占める一地域。旧土居町は1954年(昭和29)土居、長津、小富士(こふじ)、蕪崎(かぶらざき)、天満(てんま)、関川(せきがわ)の6村が合併して町制施行。2004年(平成16)川之江(かわのえ)市、伊予三島(いよみしま)市、新宮(しんぐう)村と合併、四国中央市となる(なお、この合併により宇摩郡は消滅)。旧町域は関川流域に広がり、北部は燧灘(ひうちなだ)に面し、南限を四国山地の前山にあたる赤石(あかいし)山脈の北側とする。JR予讃(よさん)線、国道11号、松山自動車道が通じ、土居インターチェンジがある。中世の豪族の居館(土居)跡が多く、名称もそれに由来する。山地が海岸に迫り、フェーン現象を伴うやまじ風が吹き、農作物に大きな被害を与えてきたため、作物は風に強い根菜類が多い。国道沿いには赤石山脈に多いゴヨウマツを栽培する樹園が多い。西接する新居浜(にいはま)市への通勤者も多い。四国別格二十霊場第12番札所の延命寺がある。

[横山昭市]

『『土居町誌』(1984・土居町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土居」の意味・わかりやすい解説

土居
どい

愛媛県東部,燧灘に面する町。 1954年土居,長津,小富士,蕪崎,天満,関川の6村が合体して町制。 2004年4月,川之江市,伊予三島市,新宮村と合併し四国中央市となる。江戸時代は天領,西条藩領,今治藩領に分割統治され,天領の下天満 (しもてんま) は別子銅山の銅の積出港であった。畜産のほか,サトイモが栽培される。南部の東赤石山 (1707m) にはゴヨウマツの原生林があり,ゴヨウマツを栽培する樹園がある。大空,高原古墳群,八雲神社など旧跡が多い。海岸平地部を JR予讃線,国道 11号線が通り,松山自動車道のインターチェンジがある。

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百科事典マイペディア 「土居」の意味・わかりやすい解説

土居[町]【どい】

愛媛県東部,宇摩(うま)郡の旧町。米作のほか,野菜栽培も盛ん。紙加工,鉄工などの企業がある。新居浜市への通勤者が多い。予讃線,松山自動車道が通じる。2004年4月川之江市,伊予三島市,宇摩郡新宮村と合併し,四国中央市となる。86.68km2。1万7876人(2003)。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「土居」の解説

土居
どい

古代の国府や中世の館・屋敷の周囲を囲んでいた土塁。また転じて中世の武士の館。この場合は「土居の内」などとよばれることもある。武士の屋敷地のみでなく,周辺の直営地などを含んで使われる場合もある。地名としても各地に残るが,比較的西日本に多い。東日本に多い「堀ノ内」も同じものとみられる。

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普及版 字通 「土居」の読み・字形・画数・意味

【土居】どきよ

土室。

字通「土」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の土居の言及

【作東[町]】より

…兵庫県と境を接する南北に細長い町で,吉井川支流の吉野川,山家(やまが)川沿いに低地が開けるほかは,山地,丘陵に囲まれる。中心集落の江見は吉野川流域の物資集散地,土居は出雲街道の宿場町として発展した。農業が主産業で,米・麦作のほか,タバコ,クリの栽培,酪農,養豚が行われる。…

【城川[町]】より

…愛媛県南部,東宇和郡の町。1954年土居,魚成(うおなし),遊子川(ゆすがわ),高川の4村が合体,黒瀬川村となり,59年城川と改称して町制。人口5193(1995)。…

【池川[町]】より

…仁淀川上流域に位置し,西は愛媛県に接する。四国山地南側に位置し,町のほぼ全域が山地からなり,北から流下する安居川と西から流下する土居川(池川川)の沿岸にわずかに耕地が開かれ,集落が点在する。農林業を主とし,栗,茶,ユズの栽培のほか,米作,養蚕,畜産が行われる。…

【堀ノ内】より

…堀に囲まれた中世の武士の屋敷地。堀を掘った土を内側に盛った土塁によって囲まれることが多いので,土居とも称した。現在遺跡として残るものは,ほぼ1町(109m)四方の正方形を基準にし,小は半町四方,大は2町四方まで規模の差がある。…

【本宅】より

…中世武士団もこの本宅を核として形成され存続した。中世武士の屋敷地は通常1~2町の規模を有し,堀や土塁で区画されて土居堀ノ内などと称せられ,屋敷畠や門田(もんでん)等の直属耕地や下人在家を包摂していた。このような在地領主の本宅は,名田(みようでん),所職(しよしき)など全所領の根幹をなしていたので,武家による本領安堵を本宅安堵ということがあり,治承・寿永の内乱のとき,河内国の領主が本領開発田の濫妨に対して〈安堵本宅〉をもとめて源義経の安堵外題を与えられ(《水走文書》),上総国御家人が源頼朝から〈本宅に安堵すべきの旨〉の恩裁をうけた事例(《吾妻鏡》)がある。…

※「土居」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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