コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

たこ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


たこ

風力を利用して空高く揚げる遊び道具の一種。細く削った竹,木を骨として,菱形,長方形,やっこ形などに組み,これに紙または布を張り糸をつけたもので,字凧絵凧とがある。ヨーロッパでは前4世紀頃にギリシアで,中国では前3世紀の漢代に初めて揚げられたと伝えられる。初めは気象観測や軍事利用などの目的をもっていたらしいが,のちには遊び道具となった。世界各国に多くの種類がみられる。日本には平安時代末期に中国から伝わり紙老鴟 (しろうし) ,紙鳶 (しえん) と呼ばれていたが,次第に一般化し江戸時代には正月の代表的な子供の遊び道具となった。名称も凧 (関東) ,イカ (関西) ,ハタ (長崎) など地方によりいろいろに呼ばれた。しかし本来は単なる遊びではなく,地方によって端午の節供などに行われる大凧揚げや凧合戦にみられるように,幸福祈願,魔よけ年占などの意味をもっていた。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

デジタル大辞泉の解説

いか【×凧/紙鳶】

《イカに形が似るところから》凧(たこ)のこと。主に関西地方でいう。いかのぼり

いか‐のぼり【×凧/紙鳶】

(主に関西地方で)凧(たこ) 春》「―きのふの空のありどころ/蕪村

たこ【×凧/紙凧】

細く割った竹で作った骨組みに紙を張って糸を結びつけ、風を利用して空高く飛ばして遊ぶ玩具。絵凧字凧奴(やっこ)凧など種々ある。いかのぼり。いか。 春》「糸のべて―の尾垂るる水田かな/子規
[補説]「凧」は国字

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

世界大百科事典 第2版の解説

たこ【凧】

竹や木を組んで骨とし,これに紙や布を張り,糸をつないで,風の力で空中に揚げる玩具(図)。〈凧〉の字は国字である。たこの呼名は江戸時代に江戸から広まったもので,関西では〈いか〉〈いかのぼり〉〈のぼり〉,九州では〈たこばた〉〈はた〉,その他地方によって〈たか〉〈たつ〉〈てんぐばた〉など方言も多い。英語のkiteはトビ,ドイツ語Dracheは竜,スペイン語cometaはすい星,ヒンディー語patangはチョウが原義で,いずれも空を飛ぶものを表している。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

はた【凧】

たこのこと。 [季] 春。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


たこ

竹や木を骨にして紙または布、ビニルなどを張り、風力を利用して糸で引き、空に揚げる遊び道具。凧が空高く舞い上がるのは、風の流れぐあいによって生じる揚力(凧を上に揚げようとする力)と、抗力(押し流そうとする力)によるものである。起源はきわめて古く、最初は宗教的な占いや軍事などに用いられた。多くの種類があり、アジア、ヨーロッパ、南太平洋地域など広く世界各地にみられる。[斎藤良輔]

日本の凧

平安時代以前に中国から伝わり、紙老鴟(しろうし)または紙鳶(しえん)とよばれて、凧揚げは技芸の一種として行われていた。それがしだいに一般化されて発達した。1572年(元亀3)の端午の節供に、松平頼母(たのも)らが浜松城大手前で源五郎凧を揚げたと記録にあり、当時すでに各種の凧がつくられていたことがうかがえる。元和(げんな)年間(1615~24)のころには、長崎代官長谷佐兵衛が、烏賊幟(いかのぼり)にろうそくをつけて夜中に揚げるなど、しだいにくふうされ、江戸時代には正月の子供遊びとして流行するようになった。凧を揚げる時期は、このほか3月、5月の節供や盆に揚げる所もある。本来は単なる遊びではなく、子供の成長を祝い、将来の多幸を祈って誕生祝いなどに揚げた。高知県で還暦の祝いに凧揚げをする風習があるのも、同様の趣旨からであろう。また成人の競技として、大凧揚げや凧合戦などを行う地方があり、現在、埼玉県春日部(かすかべ)市宝珠花(ほうしゅばな)地区、新潟県三条市・新潟市南区白根(しろね)、静岡県浜松市などで、年中行事として行われている。年占い、豊作祈願、厄除(やくよ)けなどいろいろの意味をもっていた。また全国各地に、それぞれの特色をもった郷土凧がある。字凧と絵凧があり、角形、長方形、菱(ひし)形、五角形、六角形などがある。このほか凧の形にあわせて描彩した唐人(とうじん)凧や、各種の細工凧(奴(やっこ)凧、虻(あぶ)凧、あんどん凧ほか)もある。[斎藤良輔]

中国

中国では凧のことを紙鳶(チーユワン)とか風箏(フォンチョン)とよぶ。子供は時節にかかわらず凧揚げをするが、一般には立春から清明(せいめい)までの60日間が放箏(ファンチョン)(凧揚げ)の季節である。俗信によれば、清明が過ぎて凧を揚げると思いがけぬ災害にあうとか、凧をつかさどる神は清明が過ぎると天に帰るから凧揚げしても高く揚がらないとかいわれる。凧揚げに適さない気候になったことを示すものであろうか。凧の起源として古いものでは、紀元前200年代に漢(かん)の武将韓信(かんしん)が、楚(そ)軍と戦ったときにつくったとか、未央宮(びおうきゅう)との遠近を測るのに用いたなどといわれる。凧の種類は、6、70種類もあり、飛行機、香炉などをかたどったものから、文判官、武判官、牧童、鍾馗(しょうき)などの人物や孫悟空(そんごくう)、さらに福、寿、喜などの文字を書いたもの、雁(かり)、魚、蟹(かに)、百足(むかで)、鳳凰(ほうおう)、孔雀(くじゃく)、飛虎(ひこ)、胡蝶(こちょう)、蜻蛉(とんぼ)などの動物や鳥、昆虫に至るまで、実にさまざまである。北中国では、揚げた凧の糸が風で切れて飛び去ってしまうことを放災(ファンツァイ)といって、災いがなくなったとする。そして災難よけのために、わざと糸を切って凧を飛ばす風習もある。また、南中国では、凧が自分の屋敷内に落ちるのを忌み嫌い、災難が凧にのって家に落ちてきたとしてお祓(はら)いまでしたという。このほか、昔は凧が高く揚がり、雲の中に入るのを吉兆とした。[清水 純]

西洋

中国で発明された凧は、16世紀にオランダ経由で西洋に伝わり、17、18世紀に普及した。凧はそれ以前にも知られていなかったわけでなく、北欧では15世紀に凧揚げが現れ、1450年のウィーンの古文書にも凧のことが出てくる。凧は、秋に子供が揚げた。1752年アメリカのフランクリンが凧で稲妻の放電現象を確かめ、避雷針を発明したように、凧は実用面でもよく利用された。18世紀のゴヤの凧の絵(1778)では、大人たちが長いしっぽのある菱形の凧を揚げている。その菱形を強く下に引っ張ったような十字形骨組みのボウ・カイトbowed kiteが西洋の凧の基本形である。ボウ・カイトで鳥の姿の凧もよくみられる。凧は英語ではトビ、ドイツ語で竜、フランス語でクワガタ虫、スペイン語で彗星(すいせい)を転用する。最近は紙のほかビニルも使い、形も四角、三角、丸、立体具象と多様化し、大人も楽しんでいる。[飯豊道男]

凧の科学

空中に凧が静止するのは、凧に働く力が全体としてつり合っているからである。凧に働く力は、(1)凧の重量(凧に働く重力)W、(2)凧に働く風の力F、(3)凧糸を通して人間が引っ張る力T、である。この三つの力がつり合うためには、三力の作用線が1点を通り、かつ三力を表すベクトルが三角形をつくらなければならない。このうちFは、風に対する凧の姿勢と風速によって決まるもので、風の向き(水平方向)の成分Dを抵抗、鉛直上向きの成分Lを揚力という。三力のつり合いは次のように解釈される。凧の重量Wを支えるためには揚力Lが必要で、揚力Lに伴って現れる抵抗Dを打ち消すために、糸による推力Tが必要である。
 水平飛行する飛行機と比べると、凧は原理的に同じである。ただ、飛行機では、抵抗を打ち消すために、プロペラやジェットなどの推進装置を使うのに対して、凧では人間が糸を引っ張るという違いがあるだけである。飛行機では抵抗Dをできるだけ小さくするように翼の設計が行われ、翼の傾きも小さい。これに反して、普通の凧では風に対する傾きが大きく、凧の前面に沿って流れてきた空気は凧の縁ではがれて、背面には渦の領域ができている。そのため抵抗Dが大きく、これに打ち勝つための推力を大きくする必要がある。凧の揚力Lはその重量Wのみならず、糸の張力の下向き成分Tsinθを支えなければならないが、風速が大きくなると、Lは風速の二乗に比例して大きくなるので、大きいTsinθを支えうることになる。したがって、水平に対する糸の傾きθを大きくすることができる。風速が大きいとき凧が頭上高く揚がるのはこのためである。
 風速が変わったり、凧の姿勢が変わったりすると、三力のつり合いは破れる。このとき自動的に凧の姿勢が回復してつり合いの状態に戻る場合、凧は安定であるという。凧がよく揚がるためには、凧は安定でなければならない。凧の形や糸目のつけ方、さらに尾をつけるなどのくふうがされるのはそのためである。[今井 功]
『伊藤利朗・小村宏次著『凧の科学』(1979・小学館) ▽広井力著『凧』(1973・毎日新聞社) ▽広井力著『凧――空の造形』(1972・美術出版社) ▽比毛一朗『凧大百科――日本の凧・世界の凧』(1997・美術出版社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内のの言及

【玩具】より

…これらは,教育的な意図が玩具にもたれるようになってから,それぞれもとの言葉の非教育的なイメージをぬぐうために生み出されたのであろう。この言葉の推移をみても,近代になって玩具が子どもの成長に欠かせぬ用具として認識されてきたことがわかる。
【玩具の起源】
 現世人類がこの地球上に現れたころに,はたして玩具として位置づけられるものがあったかどうかは予測しがたいが,玩具に発展しうるものがすでに存在していたことははっきりしている。…

※「凧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

凧の関連キーワード世界凧博物館 東近江大凧会館新潟県新潟市南区上下諏訪木滋賀県東近江市八日市東本町埼玉県春日部市西宝珠花長崎県長崎市風頭町東近江大凧まつり天草バラモン凧楊家埠風筝工場カイトフォト五島ばらもんゲイラカイト白根大凧合戦カドゥトゥ橋本 禎造マッタクーカーブヤービードロ糸四谷紙鳶壱岐鬼凧ピキダー

今日のキーワード

大義

1 人として守るべき道義。国家・君主への忠義、親への孝行など。「大義に殉じる」2 重要な意義。大切な事柄。「自由平等の大義を説く」...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

凧の関連情報