10⁻1mmHg以下の高真空下で行われる蒸留法。真空度を10⁻1mmHg以下にすると,分子が他の分子と衝突するまでに飛行する距離(平均自由行程という)が長くなる。したがって,液の蒸発面と蒸発分子の凝縮面を近づけて液を加熱すると,蒸発した分子は他の分子とほとんど衝突することなく凝縮面に到達することになる。蒸発の速度は近似的には成分の蒸気圧に比例し,分子量の平方根に逆比例しており,各成分の蒸発速度の比がそのまま蒸留の分離度に相当する。装置としては,実験室などでは簡単なポットスチル型が用いられることもあるが,工業的には主として流下膜式と遠心式とが用いられる。流下膜式は一種の濡壁塔で比較的構造は簡単であるが,液膜の厚さを均一にするために工夫が必要である。遠心式は多少のくぼみをもった円板上に遠心力によって薄膜をつくらせる構造で,液膜の厚さの均一度はすぐれているが,比較的高価である。これらは,普通の真空蒸留では不可能な高沸点物質や熱に不安定な物質の蒸留も可能で,実際にビタミン類の濃縮精製などに用いられる。
執筆者:平田 光穂
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高真空下(1.3 Pa 程度)における蒸留をいう.高沸点で熱分解や重合しやすい物質の分離に用いられ,各種ビタミン(ビタミンA,E,Kなど)やグリセリドの分離に工業化もされている.ある真空度と温度下における液体分子の自由行程範囲内に冷却面があり,分子衝突が起こらなければ冷却面に回収されるので,液体が蒸発面上を流下する方式や回転蒸発面上を遠心方向に流れる形式で環流させている.一般に,分子の蒸発速度Gは,表面積A,蒸気圧P,分子量M,絶対温度Tとして,以下の式で表される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…材質としては実験室用にはガラスが用いられ,工業的には主としてステンレス鋼が用いられるが,特別に腐食性の強い物質を取り扱う場合には,その他の材質たとえばガラスが用いられる。 操作圧力としては高圧蒸留(普通は数十気圧まで),常圧蒸留および減圧蒸留があり,減圧蒸留はさらに200mmHg程度までの減圧蒸留,1mmHg程度までの真空蒸留と10-1mmHg以下の分子蒸留とに分けられる。真空蒸留分子蒸留
[特殊な蒸留]
石油は非常に多数の成分からなる混合物であるが,まずはじめに常圧蒸留塔に供給し,塔頂からはガスを,塔底からは重質残渣油を取り出し,塔の中間では上のほうから順にナフサ,灯油,軽油などを抜き出して製品を得ている。…
※「分子蒸留」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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