制御棒(読み)せいぎょぼう(英語表記)control rod

翻訳|control rod

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

制御棒
せいぎょぼう
control rod

原子炉内で起こっている核分裂連鎖反応の勢いを中性子吸収を調節して制御し,原子炉の起動,出力変更,停止などの運転を行なう棒状あるいは板状の装置。また,異常時に原子炉を緊急停止するのにも用いられるものは安全棒と呼ばれる。通常,ホウ素カドミウムなどの中性子をよく吸収する物質を棒状のケースに詰め,水圧や自身の重みで炉心に出し入れする。

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知恵蔵の解説

制御棒

核燃料のある炉心で出し入れして、出力を調整するもの。中性子をよく吸収して核分裂を抑える能力が高い(中性子吸収断面積の大きい)カドミウムの合金、炭化ホウ素ハフニウムなどを使う。標準的な加圧水型炉では、制御棒案内管が燃料集合体の間にあり、制御棒は圧力容器上部から案内管の中に挿入される。沸騰水型炉では、平らな板2枚を十字形に組み合わせた制御棒が燃料集合体の間を動く。110万kW級で185本あり、圧力容器の下部から挿入される。原子炉停止中は全制御棒が完全に挿入されていて、徐々に引き抜くことで核分裂が始まり起動する。運転中に原子炉を緊急に止めねばならないような重大な異常が発生すると、それを検知した測定器から原子炉緊急停止(スクラム)信号が自動的に発せられる。すると、加圧水型炉の制御棒は重力で落下し、沸騰水型炉の制御棒は高圧で蓄えてある水の力で押し込まれる。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

制御棒

原子炉内で出力を制御したり、緊急時に停止させたりする「ブレーキ」役。長さ4、5メートル、幅20〜30センチの2枚の板を十字に組み合わせたような形か棒状のもの。核分裂に不可欠な中性子を吸収しやすいハフニウムや炭化ホウ素などで作られる。沸騰水型炉では炉心の下から押し込み、加圧水型炉では上から差す。

(2007-03-17 朝日新聞 朝刊 1総合)

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百科事典マイペディアの解説

制御棒【せいぎょぼう】

原子炉内の核分裂連鎖反応をうまくコントロールするために,炉心に出し入れして炉内で発生する中性子の量を調整する棒。ホウ素,カドミウムなど熱中性子をよく吸収する物質でつくり,ステンレス鋼,アルミニウム等で被覆する。炉心に深く挿入すれば中性子が棒に吸収されて炉内の核分裂反応が抑制され,出力が下がり,外へ引き出せば反応が促進されて原子炉の出力が上がる。粗調整用,微調整用のほか,事故の際直ちに反応を停止させる安全用の制御棒がある。2011年3月の福島第一原発の大事故では,制御棒で原子炉を緊急停止し臨界状態は止められたが,核燃料の中では核分裂生成物の崩壊が続いて熱を出し続け,これを止める手だてはなく,冷やす水を循環させなければならない。しかしそのためのポンプなどが津波で電源を喪失したため動かなくなった。原子炉や使用済み燃料プールにある核燃料を冷やすことができず,放射性物質の放出が続く重大な局面が続いた。11年12月16日,野田首相は原子力災害対策本部で,〈冷温停止〉状態の条件を満たしたと事故収束を宣言した。しかし炉には溶けた核燃料があり,その冷却は仮設の設備に頼っている状況が現在も続いている。通常の冷却システムが機能しない異常な状態に変わりはない。
→関連項目メルトダウン

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世界大百科事典 第2版の解説

せいぎょぼう【制御棒 control rod】

原子炉で発生している核分裂連鎖反応を制御するため,その炉心に出し入れする中性子吸収材を含む棒状または板状の構造物。燃料棒を用いることもある。原子炉の連鎖反応が安定的に持続しているとき(すなわち臨界であるとき)は,中性子の単位時間における発生数と消滅数(吸収+漏洩)は一致している。そこに中性子吸収材を入れると消滅数が増える結果(未臨界となり)中性子数密度が減少しはじめる。一方,炉心から中性子吸収材を抜くと,消滅数が減少する結果(臨界超過になり)中性子数が増えていくことになる。

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大辞林 第三版の解説

せいぎょぼう【制御棒】

原子炉の連鎖反応を加減するために、炉の中に出し入れする棒。核分裂により発生する中性子を吸収しやすいホウ素・カドミウム・ハフニウムなどからなる。 → 原子炉

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

制御棒
せいぎょぼう

原子炉の炉心でおこる核分裂の数を制御するためのもの。その材質には中性子吸収断面積の大きなボロン(ホウ素)、カドミウム、ハフニウムなどが使われる。
 加圧水型軽水炉の制御棒は燃料集合体に組み込まれているが、沸騰水型軽水炉のそれは燃料集合体から独立している。前者は集合体内を上下に移動する細い棒状のものであるが、後者は集合体間を上下に移動する十字形をした構造物である。沸騰水型軽水炉の場合、制御棒の材質はボロン・カーバイドなどであり、約200本の制御棒が炉心に配置されている。
 原子力発電所の負荷追従運転(電力需要にあわせて電気出力を上下させる運転方式)を行うとき、加圧水型軽水炉の場合、制御棒操作によってその出力を50%変化させられるが、沸騰水型軽水炉の場合には、制御棒操作をせずにジェットポンプの流量を変化させるだけで、その出力を50%程度変化させることもできる。[桜井 淳]

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世界大百科事典内の制御棒の言及

【原子炉】より

…中性子吸収材としては中性子吸収断面積の大きな物質が使用される。具体的使用法には,これを棒状または板状に成形したものを炉心に出し入れする場合(これを一般に制御棒と呼ぶ)と,冷却材に溶かして使用する場合(これを一般に液体ポイズンという)がある。物質としてはカドミウム,ホウ素,ハフニウムなどが使用される。…

【中性子吸収材】より

…一方,高速増殖炉で核分裂にかかわる高速中性子の吸収断面積は元素によって大差ないが,これらにおいても断面積の大きなものがよく,B4CやTaなどが使用される。 中性子吸収材の使用方法としては,(1)制御棒,(2)液体吸収材,(3)可燃毒物(バーナブルポイズン)がある。使用形態の例としては,沸騰水型炉ではホウ素の炭化物B4Cの粉末をステンレス鋼管の中に封入したもの,加圧水型炉ではAg‐In‐Cd合金をステンレス鋼管に封入したものが制御棒として使用されている。…

※「制御棒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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