翻訳|control rod
原子炉内の核分裂反応で出た中性子を吸収して反応の連鎖を調節する装置。川内原発では1、2号機とも157体の燃料集合体に対し、48本の制御棒が備えられている。原子炉を起動する際には、炉心に挿入された制御棒を段階的に引き抜くとともに、冷却水中のホウ素の濃度を少しずつ下げることで核分裂反応を促す。一方、トラブル時は一気に炉心に挿入することにより原子炉を停止する。
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原子炉で発生している核分裂連鎖反応を制御するため,その炉心に出し入れする中性子吸収材を含む棒状または板状の構造物。燃料棒を用いることもある。原子炉の連鎖反応が安定的に持続しているとき(すなわち臨界であるとき)は,中性子の単位時間における発生数と消滅数(吸収+漏洩)は一致している。そこに中性子吸収材を入れると消滅数が増える結果(未臨界となり)中性子数密度が減少しはじめる。一方,炉心から中性子吸収材を抜くと,消滅数が減少する結果(臨界超過になり)中性子数が増えていくことになる。したがって臨界にある原子炉の出力をP1からP2(>P1)に変えるには,制御棒を抜いて出力を上昇させP2になったところで制御棒を入れ再び臨界にすればよい。制御棒には,出力変化に使う粗調整棒,出力分布の制御のための微調整棒,原子炉を緊急停止するために使う安全棒などの種類がある。制御棒は原子炉容器外側に設けられた制御棒駆動機構により駆動される。駆動力としては水圧,重力などが使われる。制御棒に使われる中性子吸収材には,炭化ホウ素B4C,銀-カドミウム-インジウムの三元合金,ハフニウムなどがある。制御棒を炉心に挿入しておくと当然中性子を吸収して吸収能力が減少していくほか,ホウ素の場合には(n,α)反応によりヘリウムガスが生成蓄積するので,これらのことを考慮して強度等を設計することが必要である。
→原子炉
執筆者:近藤 駿介
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原子炉の炉心でおこる核分裂の数を制御するためのもの。その材質には中性子吸収断面積の大きなボロン(ホウ素)、カドミウム、ハフニウムなどが使われる。
加圧水型軽水炉の制御棒は燃料集合体に組み込まれているが、沸騰水型軽水炉のそれは燃料集合体から独立している。前者は集合体内を上下に移動する細い棒状のものであるが、後者は集合体間を上下に移動する十字形をした構造物である。沸騰水型軽水炉の場合、制御棒の材質はボロン・カーバイドなどであり、約200本の制御棒が炉心に配置されている。
原子力発電所の負荷追従運転(電力需要にあわせて電気出力を上下させる運転方式)を行うとき、加圧水型軽水炉の場合、制御棒操作によってその出力を50%変化させられるが、沸騰水型軽水炉の場合には、制御棒操作をせずにジェットポンプの流量を変化させるだけで、その出力を50%程度変化させることもできる。
[桜井 淳]
(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
原子炉停止または出力制御のために,中性子吸収によって炉内の中性子数をコントロールする棒.大きく調整する粗調整棒,自動制御で小さい変動に対応する微調整棒,緊急停止用の安全棒などがある.形状は棒状,平板状などで,ステンレス鋼系の材料で被覆する.燃料集合体中に制御棒案内管を通し分散して,駆動装置により出し入れされる.炉のタイプに応じて中性子吸収材が異なる.沸騰水型発電炉(BWR)では炭化ホウ素B4Cやハフニウム,加圧水型発電炉(PWR)では銀-インジウム-カドミウム(Ag-In-Cd)合金(日本,西欧),ユウロピウム(Eu,ロシア型),高速増殖炉(もんじゅ)も炭化ホウ素を使用する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…中性子吸収材としては中性子吸収断面積の大きな物質が使用される。具体的使用法には,これを棒状または板状に成形したものを炉心に出し入れする場合(これを一般に制御棒と呼ぶ)と,冷却材に溶かして使用する場合(これを一般に液体ポイズンという)がある。物質としてはカドミウム,ホウ素,ハフニウムなどが使用される。…
…一方,高速増殖炉で核分裂にかかわる高速中性子の吸収断面積は元素によって大差ないが,これらにおいても断面積の大きなものがよく,B4CやTaなどが使用される。 中性子吸収材の使用方法としては,(1)制御棒,(2)液体吸収材,(3)可燃毒物(バーナブルポイズン)がある。使用形態の例としては,沸騰水型炉ではホウ素の炭化物B4Cの粉末をステンレス鋼管の中に封入したもの,加圧水型炉ではAg‐In‐Cd合金をステンレス鋼管に封入したものが制御棒として使用されている。…
※「制御棒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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