割地制度(読み)わりちせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) 「割地制度」の意味・わかりやすい解説

割地制度
わりちせいど

一村内の田地の地味(ちみ)に良・不良の差が生じて、百姓の持高(もちだか)と収穫高の割合が大きくかけ離れた場合、百姓の貢租負担と地味の良否を均等化するために田地を割り替える江戸時代の特殊な慣行割地はその総称で、ほかに地割(じわり)、田地割(でんちわり)、碁盤割(ごばんわり)、地組(じぐみ)、鬮組(くじぐみ)、門割(かどわり)、門組(かどくみ)、田分(たわけ)などともよばれる。

 大河川下流の低湿地の新田地帯や地すべり地帯などのような収穫の不安定地に多くみられる。一般的な田地の所持では、個々の百姓所持地が一定して不動なのに対して、この制度では、個人の耕作地が田地の割替ごとに移動する点を特徴とする。この制度が東北地方北部を除き全国的にみられるようになったのは、一つには、戦国期末以来の用水土木技術の発達によって、それまで手のつけることのできなかった大河川下流の沖積平野への耕地の進出が可能となり、大規模な新田開発が推進されたこと、そして二つには、太閤(たいこう)検地以後の幕藩領主の統一検地によって石高に基準を置き、村連帯の年貢賦課の方法(村請(むらうけ)制という)が採用されたことによって生じた。つまり、河川沿いの開発耕地が収穫不安定のままで、流作場(ながれさくば)、反高場(たんだかば)、通常の高請地として年貢賦課を受けるようになったことと、幕藩領主が本百姓体制を維持する目的で定めた年貢未納分の村連帯の責任制度(村請制)と、石高所持という耕地所持の特殊性とが相まって割地の慣行が生じた。

 その方法は、まず村の土地についての実面積と地力を測定し(これを地ならしという)、田畑別、地味、地形、予測される水害などの頻度などに応じていくつかの耕地グループ(団地、割)に分ける。次に、村として定められた数の持分単位(鬮)にまとめる。その際、各耕地グループごとに鬮の数に分け、その一つずつをあわせて鬮1本分とする。そのうえで、高持百姓のみで抽選を行い、全員がくじ引きをすることもあるが、多くの場合、持高の多少を考慮して鬮1本分に見合う石高になるようにグループ(鬮組)をつくり、そのなかの1人(鬮親)が代表してくじ引きをし、その引き当てた分をグループ内へ小分けする方法がとられた。

 また、割替は5年、10年、20年と年期を定めて行うのが原則であるが、実際は崩れがちで、災害の起こったときに部分的な割替を行ったり、逆に、村として経費手間がかかる大事業なので長年にわたって行われないこともあった。後者の場合には、土地条件の変化した部分に対して、余荷(よない)(相互扶助)の方法で手当てした。

[吉武佳一郎]

『青野春水著『日本近世割地制度史の研究』(1982・雄山閣出版)』

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割地制度【わりじせいど】

割地・地割

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