団地(読み)ダンチ

デジタル大辞泉 「団地」の意味・読み・例文・類語

だん‐ち【団地】

住宅を計画的、集団的に建てた区域。また、それに似た体裁で集団的に開発された工場・倉庫などの区域。工業団地流通団地など。
[類語]集合住宅共同住宅アパートマンションコーポラスハイツテラスハウス

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精選版 日本国語大辞典 「団地」の意味・読み・例文・類語

だん‐ち【団地】

  1. 〘 名詞 〙 同じ性格の建物や産業などを集中的に立地させるために、開発された一団の土地。集団住宅が集中的に建てられた住宅団地や、工場が集中的に建てられた工業(工場)団地などがある。
    1. [初出の実例]「五十戸以上の一団地の住宅経営」(出典:土地収用法(1951)三条)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「団地」の意味・わかりやすい解説

団地
だんち

個人または法人が所有する土地に建築物、施設、道路などを計画的、集団的に整備し、これを分譲あるいは賃貸して経営する一団の区域。住宅団地、工業団地、流通団地などがある。

 団地開発を行う利点は、建築物の目的に応じて本来必要とされる施設や道路を最適な状態に整備し、それぞれの機能を発揮できる計画性であり、ある程度共通の目的をもつ建築物を集め、共通部分を協同化することにより業務の能率を高められる集約性である。

 単に団地という場合は、集団住宅地の略称であることが多い。団地ということばがわが国で公式に登場したのは、1919年(大正8)旧都市計画法第16条の「一団地住宅経営」という記述が最初である。団地という概念が広く国民のなかに定着するようになったのは、第二次世界大戦後の住宅不足を緩和する目的で、1955年(昭和30)に設立された日本住宅公団(1981年より住宅・都市整備公団、1999年より都市基盤整備公団、2004年より都市再生機構)が、一団の土地を取得して、耐火構造の中層集合住宅と共同施設とが一体となった住宅地開発を、各地に推進するようになってからである。ニュータウンも、このような住宅と生活環境を一体化した方法で計画された。

[小川正光]

歴史

外国

集団的に住宅を計画する萌芽(ほうが)は、イギリスの都市計画家E・ハワードによる田園都市運動にみられる。大都市の弊害を避け、郊外に都市の便益と田園の環境を結合した住宅地をつくる計画で、20世紀初頭からいくつかの新都市が建設された。その後、1927年にアメリカのペリーC. A. Perryが、日常生活がコンパクトにまとめて充足される近隣住区を提示し、配置計画の基礎をつくった。ニュー・ジャージー州のラドバーンでは、自動車道路で住区の周囲を囲み、住区内の歩道と完全に分離することによりこの理論を発展させた。ドイツで第二次世界大戦を契機に、地方に新都市を分散的に供給するために進められたジードルンク(団地)は、近隣住区の考えを展開し、生活圏の段階的構成に対応して複数の住区をまとめてゆき、各段階に共同施設を配置していくシステムを形成していた。これらの理論は、第二次世界大戦後、各国が住宅不足を補うために行った団地建設にも強い影響を与えた。他のヨーロッパ諸国が大都市への通勤を可能とする郊外集合住宅団地を計画したなかで、イギリスは既存の都市から独立したニュータウン建設を公的に推進した。アメリカでも多くのニュータウンが建設されたが、民間の戸建て住宅団地であった。このような団地による大量の住宅供給は1970年代まで行われたが、画一的で、人間的スケールから逸脱した場合にはコミュニティ運営上の問題が生じることもあり、犯罪が多発したために取り壊される団地も発生した。その対策として1980年ごろから、各団地の特性に応じて、住戸規模の増築による拡大、高齢化対応の改善、共用施設の整備、エコロジカルな環境の整備などの再生事業が活発に行われ、新たな団地へと生まれ変わりつつある。

[小川正光]

日本

わが国では、1907年(明治40)にイギリスの田園都市が紹介され、これに影響を受けた電鉄会社が郊外戸建て住宅地の開発を大正末期から昭和初期に行った。中層鉄筋コンクリート造の団地建設は、同潤会で本格化する。関東大震災の復旧を目的に設立された同潤会は、1926年(大正15)から東京の代官山(渋谷区)や江戸川(新宿区)などに食堂、店舗、診療室、娯楽室の施設を含んだアパートを建設した。1930年代になると、ジードルンクを中心とした集団住宅地計画に関する文献の研究が進められた。1941年(昭和16)には同潤会が発展的解消を遂げ、労働者、庶民の住宅供給を推進する住宅営団が設立されたが、当時の資材不足から小規模な木造戸建てで、画一的な敷地割りとならざるをえなかった。

 団地を象徴する中層耐火構造の集合住宅が都市圏域に大量に建設されるようになったのは、第二次世界大戦後の各自治体による公営住宅からである。住宅は標準設計を行い、配置や共同施設の整備にも基準を作成していた。公営住宅の立地が建設主体の行政区域に限られていたのに対して、広域的な需要にこたえて、本格的な団地建設を進めたのは、1955年発足の日本住宅公団である。すべての住棟は耐火構造で、日照条件や景観を考慮して配置し、学校、集会場、診療所、市役所出張所、郵便局、店舗などの施設や公園、遊び場を計画技術を駆使して整備することにより、大規模な団地形成がなされた。発足当時は100戸程度の団地が多かったが、市街地の地価が高騰するにつれて遠隔化と大規模化が進んだ。千葉県高根台(たかねだい)、大阪府香里(こうり)などは、区画整理事業で近隣住区理論によって建設された変化に富んだ団地である。1960年ごろから、全面買収による団地が多くなり、さらに大規模化した。6000戸前後の埼玉県草加(そうか)松原では段階構成手法が、埼玉県武里(たけさと)では施設利用の選択性や連続性を重視した手法が適用された。1965年以降は、住棟の南面平行配置を崩して共用庭を囲む東京都の百草(もぐさ)、埼玉県の西上尾(にしあげお)第一などの試みや、高密化を志向する奈良北のような動きが現れた。さらに大規模なニュータウン方式が、千里(大阪府)、愛知県高蔵寺(こうぞうじ)(公団)、泉北(大阪府)、多摩(公団および東京都)、千葉(千葉県)などで建設されるようになった。また、郊外ばかりでなく、1965年ごろからは、工場跡地を買収し再開発する面開発、市街地団地の手法によっても建設され、オープンスペースや店舗をつくることにより周辺の環境整備に貢献している。1975年以降になると、高層・高密な住棟計画と高家賃、住戸規模の狭小さを改善して、新たな居住者要求にこたえる計画が求められた。その結果、接地性と個別性を備えた中低層のさまざまな住棟形態がくふうされ、東京、多摩ニュータウンタウンハウス諏訪(すわ)、愛知県の八事(やごと)本町(以上公団)、六番池(茨城県)など各地で供給されるようになった。

 このように建設された団地も1980年前後から建物の経年変化と居住者の高齢化により整備・管理の時期へ移行した。低層を中心とした初期の住宅は建て替えられ、狭小な住戸からなる中層住宅は増築により改善された。改善は、十分な屋外空間が確保されていたために可能になった。居住者の高齢化が顕著になった1980年代後半から、緊急時に対応できる施設や生活援助員を備え、バリアフリー化したシルバーハウジングが東京都の東堀切(ほりきり)(公団)、牛久保(うしくぼ)(愛知県)など全国で供給されている。さらに、食事、だんらんなど生活の一部をともにする共用の場を設け、居住者相互の交流、援助を意図したコレクティブハウジングも片山ふれあい住宅(兵庫県)などで試みられている。太陽熱や風力などの自然エネルギーを活用し、屋上などを緑化した深沢(東京都世田谷区)などの環境共生住宅も実施されている。既存の老朽化・陳腐化した団地の再生も重要な課題である。高齢化した団地に若い世代を混在して定住させる方策、多様な世代の交流を生み出すコミュニティ施設の供給、環境共生など、地域の居住者の意思決定のもとでの整備が必要とされている。

[小川正光]

団地計画の展開

団地計画の前提条件としては、想定される居住人口の構成、生活水準、生活様式などの居住者条件や、経営の方式、建設費、採算性などの経営条件がある。これらの条件により、団地の立地や規模が決定される。

 団地を構成する要素には、住宅地の主要素である住宅のほか、店舗、集会所、診療所、小学校など日常生活に必要な各種の建築施設、道路、駐車場、広場などの交通施設、居住者が間接的に利用する上下水道、電気、ガスの配管、工作物などの共益的な給排施設、子供の遊び場、公園、運動場、樹林、菜園などの緑地的施設がある。

 住宅は、居住者の構成に対応した種々の規模、形式のものを採用し、住棟は、日照、採光、防火、レクリエーションなどのため十分な間隔をとり、道路、地形との関係を考えて配置する。居住者相互の近隣関係が生まれやすい単位で、共用の広場を囲んだ配置形態がくふうされなければならない。共同施設は、将来の計画や付近の既存施設を考慮したうえで、大規模団地では、その規模に応じて多様な共同施設を完備する必要があり、小規模団地では、周辺地区の共同施設と関連して日常生活の便宜を図り、コミュニティ構成の中心となる施設を設ける。住宅と共同施設の一般的なまとめ方として、まず、住宅の小集団を日常不可欠な施設を中心に配置してつくり、小集団を数個集めてさらに高度な共同施設を加えて大集団へと段階的に構成していく方法がとられる(たとえば、街区、近隣分区、近隣住区)。その結果、一つの完結した日常生活圏を形成する。自動車交通の多い主要道路は、周辺の交通系統、共同施設などの位置との関係を考慮して近隣住区を囲むように配置し、住区内から通過交通を排除して住宅地の安全性向上を図る。歩道は、住区内にいくつかの街区を形成し、グループ化を促進するように配置する。場所によっては、歩行者と車とを完全に分離すると、土地利用、住区のサービスなどの点で支障を生じることもある。そこでは、場所、利用時間を限定して、歩行者の優位性を確保しつつ共用することにより、バランスのよい便益を図ろうとする歩車融合の手法を導入することも活気のある団地を形成することになる。

[小川正光]

開発事業

団地開発の事業方法としては、次の4タイプが主要なものである。新住宅市街地開発事業(全面買収方式)は、特定市街地の大規模開発と住宅地の大量供給を目的とするもので、新住宅市街地開発法、土地収用法による。土地区画整理事業(換地方式)は、公共施設の整備、市街地の整備、宅地利用の増進などを目的として、地方公共団体、都市再生機構、土地所有者の組合などが施行するもので、土地区画整理法、事業機関法(公団・公社)による。一団地の住宅施設経営事業全面買収方式は、宅地分譲を含まない一団地の集団住宅の供給を目的として行うもので、都市計画法、土地収用法によっている。また、一般的な宅地造成事業は、都市計画法に基づいて行われるが、土地所有者によって施行されるものも、公共事業と整合していかなければならない。

[小川正光]

居住者と管理

団地が供給され始めたころは、居住者のほとんどが地方から大都市へ転入してきた者であり、若い夫婦と幼児が占める割合が高い均質的な人口構成になりやすかった。このような均質性は単調な地域生活を展開し、団地を新設した地域では、幼稚園、学校などの公共施設が不足するという問題を生じた。居住年数が増長するにつれて、家族型の成長と転入・転出による居住者の変化と周辺施設の充実により、既成の住宅地の様相を呈することになる。しかし居住者の年代の集中は解消されず、団地は一気に高齢化を迎え、高齢者対応住宅への改善、生活援助施設の整備などが実施されてきた。そして、若い世代の定住を促し、子育て支援や世代を超えた交流を図ることのできる施設の整備が求められ、次の世代を形成する段階へと展開しつつある。

 一般的に団地居住者は、家庭と職場を中心とした関心が強く、合理的な日常生活を追求する志向が強い。家族そろってだんらんする生活様式や電気製品の導入による近代化は、団地の居住者に定着し、社会的に普及した。住宅地への関心は高いとはいえないが、相互に参加して楽しむ近隣関係が形成されている。

 建設当初の良好な環境を維持し、さらに住みやすいものとするために総合的な管理を行う必要がある。団地内の種々の問題に対して、討論や話合いを積み重ねることにより合意に達する努力と、具体的な方法・手続の作成、合意事項を有効に実現する諸条件の整備が必要である。合意形成し実施する場として、管理組合や自治会が組織される。公園、道路、緑地などの共同施設や建物の主要構造・設備などの修繕や清掃は、行政や管理会社によって能率的に行えるが、生活様式が異なる各住戸間において、適切な相隣関係を形成するためには、居住者が相互に合意した確認事項を規約化し遵守する努力が要る。このような居住者の自治的な管理を通じて、人工的に計画・供給された団地が、定着性が高く、新しい社会性を生み出す住宅地へと発展していくのである。

[小川正光]

『C・A・ペリー著、倉田和四訳『近隣住区論』(1975・鹿島出版会)』『土肥博至・御船哲著『新建築学大系20 住宅地計画』(1985・彰国社)』『佐藤滋著『集合住宅団地の変遷』(1989・鹿島出版会)』『延藤安弘ほか著『これからの集合住宅づくり』(1995・晶文社)』『福原正弘著『ニュータウンは今』(1998・東京新聞出版局)』『松村秀一著『団地再生』(2001・彰国社)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「団地」の意味・わかりやすい解説

団地
だんち

住宅対策によって計画的に造られた地区。典型的なものとして,住宅団地,工業団地,商業団地などがある。住宅団地には賃貸と分譲の2種があり,住宅形態によってフラット型,メゾネット型,テラスハウス型などに,また棟の型によって板状型,塔状型,集中型などに分類される。団地住民の生活様式の特徴や団地自治会などの集団活動の特徴が社会的に注目され,団地という言葉が一般化された。

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デジタル大辞泉プラス 「団地」の解説

団地

2016年の日本映画。監督・脚本:阪本順治。様々な人生が交差する団地を舞台にしたコメディ。出演:藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工ほか。TAMA映画賞最優秀作品賞受賞。主演の藤山直美は、本作により第19回上海国際映画祭の金爵賞最優秀女優賞を受賞した(日本人による同賞受賞は史上初)。

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百科事典マイペディア 「団地」の意味・わかりやすい解説

団地【だんち】

工業団地住宅団地

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リフォーム用語集 「団地」の解説

団地

人間や産業もしくは各種事物が必要とする都市基盤を支える各種インフラや物流の効率化を図るために、同一傾向にある目的や用途、産業などを集中させた一団の区画や地域の名称。一般的に、住宅の集合体の事を指す。

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世界大百科事典(旧版)内の団地の言及

【公団住宅】より

…そのほか,貸家経営を行ったり,社宅を建設しようとする個人や法人のための特定分譲住宅がある。また賃貸住宅と分譲住宅はその立地により,団地住宅と市街地住宅とに分類できる。団地住宅は,主として大都市の郊外に大規模な団地として建設される住宅を指し,公団住宅の最も典型的な形である。…

【集合住宅】より

…日本でいうマンションは分譲方式の中高層共同住宅の俗称である。独立住宅,連続住宅,共同住宅が数棟以上一団となって建設されたものが集団住宅で,団地は集団住宅地の通称である。
【歴史】
 人類の歴史のうえで,連続住宅の出現は前3千年紀にさかのぼる。…

【建物の区分所有】より

…(8)建物の設置・保存の瑕疵(かし)に関する推定 例えば,マンションの給水設備の設置・保存の瑕疵による水洩れがあって,特定の専有部分の占有者・区分所有者に損害が生じたが,その瑕疵のある部分が給水設備のうちの共用部分に属する部分なのか,専有部分に属する部分なのかが不明であるというような場合には,共用部分に瑕疵があるものと推定され,第一次的には共用部分の占有者,第二次的には共用部分を共有する区分所有者全員が損害賠償の責任を負う(9条)。(9)団地 数棟の建物(区分所有建物とは限らない)が所在する一団地内に,それらの建物所有者の共有物がある場合には,この共有物の管理を目的とする団地管理組合が法律上当然に成立する。建物所有者全員が当然に組合員で,これには,相続人,譲受人などの承継人も含まれる。…

※「団地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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