江戸中期以後の友禅染における一つの様式(スタイル)。特徴は主としてその色使いにあり、白地に臙脂(えんじ)色、紅、藍(あい)、緑などにぼかしの加わったはでやかな模様の間に、周縁をぼかした紫の雲形の加えられているものが多い。模様は全般に様式化されており、細い糸目による精細な図柄に、写実を離れた彩色が施されている。加賀友禅が、その名称から一般に京友禅に対するもののように解され、これがすべて加賀で生産されたもののように考えられ、ひいては宮崎友禅斎の加賀在住説まであるが、もともと加賀友禅という名称自体がそれほど古いものではなく、また江戸中期の友禅染の現存資料をみると、いわゆる加賀風な友禅の数は非常に多くて、これが全部加賀の地でつくられたということは、にわかには信じがたい。
もちろん加賀にも古くから友禅染に類する技術のあったことは、手描きの糊(のり)防染に主として顔料による彩色を加えた掛物がつくられており、これが江戸中期以後、藩の進物用に多くつくられたということによっても知られる。文献によれば、このほかに加賀には、江戸時代以前から加賀染という藍、茜(あかね)、黒などの無地染があり、これに御国(おくに)染と称して紋所に彩色を加え、さらに江戸中期からは着物全体に模様染を施したものもつくられていたようで、これが京都からの友禅染の影響を受けて、洗練されていったものであろうと考えられる。
いま、いわゆる加賀友禅の色使いによく似たものに沖縄の紅型(びんがた)がある。そして、この両者の色使いの源流をさかのぼっていくと、桃山から江戸初期慶長(けいちょう)(1596~1615)ごろの刺しゅうのそれに行き当たる。すなわち加賀友禅というスタイルは、友禅染のなかでもっとも古い形を継承したというものであり、これが沖縄に伝えられ、ともにその古様を純度高く伝えているものではないかとも考えられる。
[山辺知行]
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一方,加賀前田藩でも,御国染(おくにぞめ),加賀染と称する染物が,京の友禅と同時期に盛んに作られていた。これにも京友禅の技法がとり入れられて類似性が強まると,やがて京都などでは,これを友禅に包含して〈加賀友禅〉と称するようになったようである。友禅と加賀友禅との意匠的,技術的な差は微妙で,明確に区別することはむつかしい。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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