労る(読み)イタワル

デジタル大辞泉 「労る」の意味・読み・例文・類語

いたわ・る〔いたはる〕【労る】

[動ラ五(四)]

㋐弱い立場にある人などに同情気持ちをもって親切に接する。気を配って大切に世話をする。「病人を―・る」
㋑労をねぎらう。慰労する。「選手を―・る」
手当てを加える。養生する。「からだを―・る」

㋐苦労する。骨を折る。
みまかりて後、人に―・らしむることなけむ」〈北野本皇極紀〉
病気になる。わずらう。
七月ばかりより―・ることありて」〈浜松・五〉
[可能]いたわれる
慰める[用法]
[類語]慰める慰安慰藉いしゃ慰問見舞いねぎらう慰労

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「労る」の意味・読み・例文・類語

いたわ・るいたはる【労】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
    1. あれこれ心づかいをする。骨を折る。苦労する。
      1. [初出の実例]「朕、寡(いやし)く薄きを以て、久しく大業(こと)に労(イタハレ)り」(出典:日本書紀(720)舒明即位前(北野本訓))
    2. 病気で苦しむ。気をやむ。わずらう。
      1. [初出の実例]「日ごろいたはる所侍て、院にも内にも参り侍らぬ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 骨折りに対し感謝の気持をもって)ねぎらう。慰労する。
      1. [初出の実例]「群庶(もろひと)劬労(イタハリ)、万の民を饗育(やしな)ひたまひ」(出典:日本書紀(720)欽明二三年六月(寛文版訓))
    2. 疾病に対し)手当てを加える。治療する。また、休養する。
      1. [初出の実例]「いざ、かかる所にて、脚病(かくびゃう)いたはらん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
      2. 「此ほどあまりに乗り損じて候ひつる間、しばらくいたはらせ候はんとて」(出典:平家物語(13C前)四)
    3. (大切なものとして遇する気持をもって)手厚く大事にもてなす。念を入れて丁重に扱う。
      1. [初出の実例]「つねの使よりは、この人よくいたはれといひやれりければ」(出典:伊勢物語(10C前)六九)
    4. (弱小の人や苦悩している人に対し同情する気持をもって)やさしく慰める。あわれみをかける。
      1. [初出の実例]「ワランベヲ itauari(イタワリ) ソダツル」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「何とした小助殿、怪我はないかと(イタ)はれば」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)座摩社)

労るの語誌

上代における確例を欠くが、「石山寺本大方広仏華厳経平安初期点」に「イタハ(ル)こと 労」、「観智院本名義抄」に「労 イタハル」とあり、また「書紀」の古訓に複数例の「労 イタハル」が存するところから、上代から存した可能性も残されている。

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