北川透(読み)きたがわとおる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「北川透」の意味・わかりやすい解説

北川透
きたがわとおる
(1935― )

詩人評論家。本名・磯貝満(いそがいみつる)。愛知県碧南(へきなん)市生まれ。愛知学芸大学国語科卒業。1962年(昭和37)、豊橋市において詩と批評誌『あんかるわ』を創刊。独自の編集で読者に開かれた表現の場を提供し、1970年代以降の現代詩を理論と創作実践両面からリード、90年(平成2)に終刊するまで精力的な詩活動を展開した。ともに活動してきた菅谷規矩雄(すがやきくお)(1936―89)の死に衝撃を受け、1991年山口県下関市へ移住。梅光(ばいこう)学院大学(当時梅光女学院大学)にて教鞭(きょうべん)をとる一方、96年から2000年まで、山本哲也(1936―2008)ら九州・下関市の詩人と『九』を刊行、同時代の詩的状況への批判を連載し、不審を抱いた対象への対立を恐れぬ挑発糾明と、新しい可能性をもつものへのためらわぬ肯定という両側面から、時代の詩と詩論を導く。詩集に『眼(め)の韻律』(1968)、『闇(やみ)のアラベスク』(1971)、『反河のはじまり』(1974)、『遙(はる)かなる雨季』(1977)、『情死以後』(1981)、『魔女的機械』『死亡遊戯』(ともに1983)、『隠語術』(1986)、『ポーはどこまで変れるか』(1988)、『戦場ケ原まで』(1992)、『デモクリトス井戸』(1995)、『黄果論』(2000)、評論に『中原中也(ちゅうや)の世界』(1968)、『詩と思想自立』(1970)、『北村透谷(とうこく)試論』(1974~77)、『中野重治(しげはる)』(1981)、『詩神と宿命――小林秀雄論』(1982)、『詩的レトリック入門』(1993)、『萩原朔太郎(さくたろう)〈言語革命〉論』(1995)など多数。近現代の詩人論から思想、表現論まで多岐にわたる、もっとも尖鋭(せんえい)的な論客として知られる。2000~01年刊の評論三部作『詩的90年代のかなたへ――戦争詩の方法』『詩の近代を越えるもの――透谷・朔太郎・中也など』『詩的スクランブル――言葉に望みを託すということ』で、小野十三郎賞受賞。

[陶原 葵]

『『詩と思想の自立』(1970・思潮社)』『『現代詩文庫48 北川透詩集』『現代詩文庫124 続・北川透詩集』(1972、1994・思潮社)』『『反河のはじまり』(1974・思潮社)』『『北村透谷試論』1~3(1974、1976、1977・冬樹社)』『『詩集 遙かなる雨季』(1977・国土社)』『『北川透詩集 情死以後』(1981・アトリエ出版企画)』『『中野重治』(1981・筑摩書房)』『『詩神と宿命――小林秀雄論』(1982・小沢書店)』『『魔女的機械』(1983・弓立社)』『『読み捨て詩集 死亡遊戯』(1983・弓立社)』『『現代詩前線1980~1983』(1984・小沢書店)』『『詩的メディアの感受性――「あんかるわ」百回通信より』(1985・未来社)』『『北川透の詩 隠語術』(1986・弓立社)』『『北川透詩集 ポーはどこまで変れるか』(1988・思潮社)』『『北川透詩集 戦場ケ原まで』(1992・思潮社)』『『詩的レトリック入門』(1993・思潮社)』『『萩原朔太郎〈言語革命〉論』(1995・筑摩書房)』『『デモクリトスの井戸』(1995・思潮社)』『『黄果論』(2000・砂子屋書房)』『『詩論の現在1 詩的90年代のかなたへ――戦争詩の方法』『詩論の現在2 詩の近代を越えるもの――透谷・朔太郎・中也など』『詩論の現在3 詩的スクランブルへ――言葉に望みを託すということ』(2000~01・思潮社)』『『中原中也の世界』精選復刻版(紀伊國屋新書)』『丹羽一彦著『現代思想のフロンティア』(1989・大和書房)』『高堂敏治著『感受性の冒険者・北川透』(1990・風琳堂)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「北川透」の解説

北川透 きたがわ-とおる

1935- 昭和後期-平成時代の詩人,評論家。
昭和10年8月9日生まれ。37年同人誌「あんかるわ」を創刊。鋭い論陣で注目された。平成3年梅光女学院大教授。著作に詩論集「詩と思想の自立」,詩集「眼の韻律」,評論「北村透谷試論」「中原中也わが展開」「萩原朔太郎〈詩の原理〉論」など。20年「溶ける、目覚まし時計」で高見順賞。同年「中原中也論集成」で藤村記念歴程賞。愛知県出身。愛知学芸大卒。本名は磯貝満。

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百科事典マイペディア 「北川透」の意味・わかりやすい解説

北川透【きたがわとおる】

詩人,評論家。本名磯貝清。愛知県生れ。愛知学芸大学国語科卒。1962年,浮海啓,瀬川司郎らと同人誌《あんかるわ》を創刊。同誌は1967年以後北川の個人誌となる。《眼の韻律》(1968年),《闇のアラベスク》(1972年)などの詩作と並行して,《詩と思想の自立》(1966年),《中原中也の世界》(1968年)など多くの詩論を発表した。1981年からは同人誌《菊屋》に参加。他に詩集《魔女的機械》,評論《北村透谷試論》など。

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