日本大百科全書(ニッポニカ) 「医療保障」の意味・わかりやすい解説
医療保障
いりょうほしょう
社会保障における医療に関する保障の総称。狭義には医療費の保障、広義には医療提供体制をも含む概念である。先進諸国の広義の医療保障について、政府が関与する程度によって類型化すると、医療費保障および医療供給体制ともに公的部門中心で大きく社会化した国(イギリス、北欧諸国)と、医療費保障は社会化しながらも医療提供体制は民間部門と公的部門を併存させている国(日本、ドイツ、フランス)、医療費保障および医療提供体制ともに民間部門の比重が高い国(アメリカ)に分けられる。また、公的な医療費保障システムについてみると、イギリスや北欧は税財源による保健サービス方式、日本、ドイツ、フランスは職業別に制度が分立した社会保険方式であり、アメリカは高齢者・障害者を対象とする社会保険(メディケア)と低所得者を対象にした医療扶助(メディケイド)があるのみである。
日本の医療費保障は、全国民が医療保険制度に加入する国民皆保険体制を基本とし、これを補足する形で各種の公費負担医療制度(原爆被爆者援護法、感染症法、精神保健福祉法、生活保護法、障害者総合支援法、児童福祉法、母子保健法、難病法など)がある。また、医療提供体制では、一般診療所はほとんどが個人・医療法人などの民間で、病院も約8割(病床数では約7割)が民間である。
[山崎泰彦 2016年7月19日]
『日本社会保障法学会編『医療保障法・介護保障法』(2001・法律文化社)』▽『山崎泰彦・尾形裕也編著『医療制度改革と保険者機能』(2003・東洋経済新報社)』▽『田中滋・二木立編著『医療制度改革の国際比較』(2007・勁草書房)』▽『二木立著『医療改革――危機から希望へ』(2007・勁草書房)』▽『二木立著『医療改革と財源選択』(2009・勁草書房)』▽『西村淳著『社会保障の明日――日本と世界の潮流と課題』増補版(2010・ぎょうせい)』▽『島崎謙治著『日本の医療――制度と政策』(2011・東京大学出版会)』▽『真野俊樹著『入門 医療政策』(2012・中央公論新社)』▽『松田晋哉著『医療のなにが問題なのか――超高齢社会日本の医療モデル』(2013・勁草書房)』▽『池上直己著『医療・介護問題を読み解く』(2014・日本経済新聞出版社)』▽『岩渕豊著『日本の医療――その仕組みと新たな展開』(2015・中央法規出版)』▽『二木立著『地域包括ケアと地域医療連携』(2015・勁草書房)』▽『島崎謙治著『医療政策を問いなおす――国民皆保険の将来』(2015・ちくま書房)』▽『健康保険組合連合会編『図表で見る医療保障』各年版(ぎょうせい)』▽『厚生労働統計協会編・刊『保険と年金の動向』各年版』