病気や障害で、人工呼吸器やたんの吸引といったケアが日常的に必要な子ども。医療の発達で新生児の救命率が高まり、増加傾向にある。こども家庭庁は全国に約2万人と推計。新生児集中治療室(NICU)などに長期入院後、主に自宅で保護者の世話を受けながら暮らすが、保育施設で受け入れるケースも増えている。保育所など児童福祉施設は2023年から事業継続計画(BCP)の策定が努力義務となった。
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医療的ケアを必要とする小児。日本における新生児医療、小児医療の発展に伴い、新生児(生後1か月未満)死亡率は1000人に0.9人、乳児(生後1年未満)死亡率は1.9人と、世界でももっとも低い水準となっている(2017)。その結果として、救命されたものの人工呼吸管理や気管切開、経管栄養などを必要としたまま退院し、家庭で過ごす小児が急速に増えている。医療行為と同様のことを家庭では家族が行う必要があるため、それを「医療的ケア」とよぶようになったが、医療機関で継続されている場合も含むため、生きるために継続的に行う必要があるものを「医療的ケア」とよび、それを必要とする小児を「医療的ケア児」とよぶようになっている。
医療的ケア児は、2016年(平成28)には全国で1万8000人いるとされ、この10年で約2倍になっている。それに伴い、教育面の支援を受けられるようにすることが必要となってきており、看護師が配置された特別支援学校では教員が、経管栄養の注入、痰(たん)の吸引、導尿補助を行えるようになっている。2016年には、人工呼吸管理を必要とする学童が、全国で1300人学校に通っている(これらの背景には、在宅療育よりも通学によるノーマライゼーションの意義が重視されるようになったことなどもある)。
従来の類似のことばに、「重症心身障害(児・者)」があるが、これは知的障害(学童以降では単語が話せないレベル)と運動機能障害(寝たきりか座位まで)をあわせもつ状態をさしている。また、重症心身障害に一定以上の医療的ケアを必要とする場合を、「超重症心身障害(児・者)」としている。しかしながら、先天性心疾患、気管・食道の先天異常、短腸症候群などの小児で、立てる、歩ける、話せるものの、医療的ケアを必要とする場合があり、こうした場合には重症心身障害のない医療的ケア児となる。重症心身障害の有無にかかわらず、医療的ケア児の生活・療育環境を整備していくことが求められている。現状では保護者にゆだねられている部分が大きいが、当事者も含めて、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科スタッフ、リハビリテーションスタッフなどの医療系スタッフ、教員、行政など広範囲にわたる多職種連携によって、地域包括ケアシステムの一環として実現されるべき課題である。
[高増哲也 2019年5月21日]
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