医療的ケア児(読み)イリョウテキケアジ

デジタル大辞泉 「医療的ケア児」の意味・読み・例文・類語

いりょうてきケア‐じ〔イレウテキ‐〕【医療的ケア児】

日常生活を送るために、たん吸引経管栄養などの医療的ケアを必要とする子供のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「医療的ケア児」の意味・わかりやすい解説

医療的ケア児
いりょうてきけあじ

医療ケアを必要とする小児。日本における新生児医療、小児医療の発展に伴い、新生児(生後1か月未満)死亡率は1000人に0.9人、乳児(生後1年未満)死亡率は1.9人と、世界でももっとも低い水準となっている(2017)。その結果として、救命されたものの人工呼吸管理や気管切開、経管栄養などを必要としたまま退院し、家庭で過ごす小児が急速に増えている。医療行為と同様のことを家庭では家族が行う必要があるため、それを「医療的ケア」とよぶようになったが、医療機関で継続されている場合も含むため、生きるために継続的に行う必要があるものを「医療的ケア」とよび、それを必要とする小児を「医療的ケア児」とよぶようになっている。

 医療的ケア児は、2016年(平成28)には全国で1万8000人いるとされ、この10年で約2倍になっている。それに伴い、教育面の支援を受けられるようにすることが必要となってきており、看護師が配置された特別支援学校では教員が、経管栄養の注入、痰(たん)の吸引、導尿補助を行えるようになっている。2016年には、人工呼吸管理を必要とする学童が、全国で1300人学校に通っている(これらの背景には、在宅療育よりも通学によるノーマライゼーション意義が重視されるようになったことなどもある)。

 従来類似のことばに、「重症心身障害(児・者)」があるが、これは知的障害(学童以降では単語が話せないレベル)と運動機能障害(寝たきりか座位まで)をあわせもつ状態をさしている。また、重症心身障害に一定以上の医療的ケアを必要とする場合を、「超重症心身障害(児・者)」としている。しかしながら、先天性心疾患、気管・食道の先天異常、短腸症候群などの小児で、立てる、歩ける、話せるものの、医療的ケアを必要とする場合があり、こうした場合には重症心身障害のない医療的ケア児となる。重症心身障害の有無にかかわらず、医療的ケア児の生活・療育環境を整備していくことが求められている。現状では保護者にゆだねられている部分が大きいが、当事者も含めて、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科スタッフ、リハビリテーションスタッフなどの医療系スタッフ、教員、行政など広範囲にわたる多職種連携によって、地域包括ケアシステムの一環として実現されるべき課題である。

[高増哲也 2019年5月21日]

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知恵蔵mini 「医療的ケア児」の解説

医療的ケア児

たんの吸引や人工呼吸器の使用、経管栄養などといった医療的援助を日常的に必要とする子どものこと。2016年に改正された児童福祉法によって定義された。18年度時点で全国に約1万7000人いると推計され、08年度と比べると約1.8倍に増えている。理由としては、新生児医療の発達により以前なら出産直後に亡くなっていた子どもが助かるケースが増えてきたことが挙げられる。改正児童福祉法では医療的ケア児について、「医療や福祉だけでなく、教育の面でも支援を受けられるように努めなければならない」としており、学校側の受け入れ態勢を整えるなどの取り組みが求められる。

(2018-8-30)

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