十二段草子(読み)ジュウニダンゾウシ

デジタル大辞泉 「十二段草子」の意味・読み・例文・類語

じゅうにだんぞうし〔ジフニダンザウシ〕【十二段草子】

古浄瑠璃作者未詳。室町中期以後に成立した御伽草子による語り物で、牛若丸浄瑠璃姫との恋物語を脚色したもの。近世初期に流行し、以後、この種の語り物を浄瑠璃と称するようになった。浄瑠璃姫物語浄瑠璃物語浄瑠璃十二段浄瑠璃十二段草子

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精選版 日本国語大辞典 「十二段草子」の意味・読み・例文・類語

じゅうにだんそうしジフニダンサウシ【十二段草子】

  1. 御伽草子・古浄瑠璃。作者不明。室町中期以後の成立。本地物で、判官物の一種。御曹司牛若丸と、三河国鳳来寺薬師如来の申し子で、矢作の宿の遊女である浄瑠璃姫との恋物語を一二段に分けて語ったもの。近世初期に語り物として流行、この種の作を浄瑠璃というに至った。浄瑠璃御前物語。浄瑠璃物語。浄瑠璃姫物語。浄瑠璃十二段。浄瑠璃十二段草子。十二段。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十二段草子」の意味・わかりやすい解説

十二段草子
じゅうにだんそうし

浄瑠璃(じょうるり)作品名。別名『浄瑠璃(姫)物語』。室町時代末期に流行した語物の一種で、浄瑠璃姫を主人公とする。のちにこの種の語物の総称を「浄瑠璃」とよぶようになるのは、この作品に由来する。この作品が操(あやつり)人形芝居と結び付き、その演目として定着したころ、12段の構成であったことから、この名称が生まれた。

 刊本として残っているものには、十二段本のほかに、15段や、8段に短縮されたものもある。刊本のほか、華麗な絵巻物・奈良絵本・嵯峨(さが)本など各種の様式に仕立てられたものがあり、当時の流行をしのばせる。作者は伝説的に小野お通(おののおつう)とされてきたが、信じられない。無名多数の語り手によって、しだいに形が整えられたものであろう。

 金売吉次(かねうりきちじ)に伴われて奥州へ下る御曹司(おんぞうし)牛若丸が、三河国(愛知県)矢矧(やはぎ)の里で長者の娘浄瑠璃姫を見そめ、一夜の契りを結ぶ。姫は薬師(やくし)十二神の申し子であった。別れて旅を続けた牛若は蒲原(かんばら)(静岡県)で病(やまい)に倒れ、吹上(ふきあげ)の浜に捨てられる。正八幡(しょうはちまん)のお告げで危難を悟った浄瑠璃姫が駆けつけて、祈願によって生命を救う。牛若は素姓を明かして再会を約し、姫を天狗(てんぐ)に送らせ、自分は平泉(ひらいずみ)へと向かう。薬師霊験譚(れいげんたん)を基盤とする中世的な宗教性を背景に、恋愛物語が絡んで成長した語物で、中世から近世への過渡的な様相をよく示している。古浄瑠璃をはじめ各種の浄瑠璃のほか、歌舞伎(かぶき)、物語、小説などに多大の影響を与えた。

[服部幸雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十二段草子」の意味・わかりやすい解説

十二段草子
じゅうにだんぞうし

室町時代の御伽草子古浄瑠璃。別称『浄瑠璃姫物語』『浄瑠璃十二段草子』。三河国矢矧 (やはぎ) の長者の娘の浄瑠璃姫と牛若丸との恋物語。浄瑠璃の最初の曲といわれ,文明 17 (1485) 年にはすでに存在。浄瑠璃姫は峯の薬師の申し子で,薬師十二神にちなんで,構成が 12段に分れるところから,この名称がある。伝本が多く,12段以外の構成のものも現存。作者または改作者を小野お通とする伝説もあるが,三河地方の伝説が母体となったと考えられている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「十二段草子」の解説

十二段草子
じゅうにだんそうし

室町中期に成立した,浄瑠璃・御伽 (おとぎ) 草子のもととなった物語
作者不詳。源義経の奥州下りに浄瑠璃姫などの伝説がからんだもので,これらを12段に仕組んだ物語。語り本として伝えられた。

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百科事典マイペディア 「十二段草子」の意味・わかりやすい解説

十二段草子【じゅうにだんぞうし】

浄瑠璃物語

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世界大百科事典(旧版)内の十二段草子の言及

【小野お通】より

…浄瑠璃の起源となった《浄瑠璃物語(十二段草子)》の作者といわれる女性。阿通,於通とも記される。…

【浄瑠璃物語】より

…中世後期の物語草子。別称《十二段草子》《浄瑠璃十二段》《浄瑠璃姫物語》など。金売吉次に従って奥州へ下る途中の牛若が矢作(やはぎ)の宿(現,岡崎市)の長者の娘浄瑠璃姫と結ばれる恋物語で,2人のみやびな恋の口説や牛若を蘇生させる姫の献身が好まれて,広く流布した作品。…

【人形浄瑠璃】より

…なお,音楽史の側面は〈義太夫節〉の項目を,また歌舞伎への影響については〈歌舞伎〉の項目のうち[人形浄瑠璃との交流]を参照されたい。
【人形浄瑠璃の歴史】

[成立]
 浄瑠璃は,三河国矢矧(やはぎ)の長者の娘浄瑠璃姫と牛若丸の恋物語で,《十二段草子》とも呼ばれ,中世後期から近世初期に多くの絵巻や草子に書き留められたが,本来は三河の巫女たちによって語られた女主人公をめぐる鳳来寺峰の薬師の霊験譚であったといわれる。その成立については,少なくとも1474年(文明6)ころには,薬師如来の申し子である姫の誕生,牛若との悲恋,死と成仏を語る現在の《しゃうるり御前物語》(山崎美成旧蔵)のごとき長編が都で行われていたと考えられ,1世紀余りのちの〈文禄から慶長への交〉には,外来の三味線を伴奏楽器として,傀儡子(くぐつ)の人形戯と結んで,人形浄瑠璃が成立する(《絵巻`上瑠璃’》および《しゃうるり十六段本》所収の信多純一説)。…

※「十二段草子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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