古代ローマの最古の法典。法典制定十人官によって紀元前451~前450年起草され、ケントゥリア民会によって制定された。12枚の青銅板または木板に書き記されてフォルム・ロマヌムに立てられたが、前387年のガリア人の侵入によって焼失した。後代の引用や言及から法典本文の復原が図られているが、今日一般に受け入れられている19世紀ドイツの考古学者シェルR. Schöll(1844―1893)による復原本文が全体のどのくらいにあたるのか不明である。起草にあたってアテネに使節が派遣され、ソロンの法を参考にしたと伝えられ、ギリシアの法との類似が指摘されることもあるが、一般的には現行の慣習法を成文化したものであった。成文法の制定は、従来の貴族による法知識の独占を破る意味をもっていた。
一般的に認められているところによると、第1~3表は民事訴訟法、第2表は訴訟手続、第3表は執行、第4、5表は相続法と家族法、第6、7表は物権法と債権法、うち第6表は所有権と法律行為、第7表は隣接地間の関係に関する規定、第8表は刑法または不法行為法、第9、10表は埋葬規定その他公法および宗教上の儀式についての規定、最後の2表は追加規定、をそれぞれ含んだ。これらの規定は、後代には時代遅れとなって使われなくなっても廃止されることはなく、キケロの少年時代にもこれを暗記させられた。若干の基本的な規定は、ユスティニアヌス時代になってもなお効力を失わなかった。
[弓削 達]
『船田享二著『ローマ法』全5巻(1968・岩波書店)』
前451-前450年に成立し,その後の法発展の基礎となったローマ最古の包括的法典。伝承によれば,法生活においてパトリキ(貴族)の恣意からプレブス(平民)を守るため,身分闘争の過程でプレブスの要求により制定されたとされ,12の表に書かれて公示されたことからこの名で呼ばれる。原文は早く失われたが,今日文献から再構成されたところによれば,簡潔な古いラテン語で記述され,裁判および私法・刑法に関する規定を中心として若干の宗教法的規定を含み,農業国家としての当時のローマ社会を如実に反映している。なお,従前の慣習法との関係や,制定に際してギリシア文化からどのような影響をうけたかなどの委細は不詳である。本法の制定後も,パトリキのみが就任しえた神官団が,裁判・法律行為を有効に行うための方式に関する知識および法律の解釈を前3世紀に至るまで独占し続けた。
→ローマ法
執筆者:西村 重雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
初期ローマの法典。前450~前449年に制定されたと伝えられる。ローマの初期にはパトリキ,プレブス間の身分的差別が厳しく,法知識もパトリキの独占であったが,プレブスは平等を求めて闘争し,その過程で,十二表法の形で法の明文化と公開を勝ちとった。ここでも,パトリキ,プレブス間の通婚が禁止されるなど不平等は存したが,プレブスにも法が公開されたことは彼らの勝利を意味した。この法は,特別の法典編纂委員の手で前450年に10表が制定され,翌年に2表が追加されて完結,ローマ法発展の出発点となった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…生没年不詳。前471年コンスル,前451‐前450年立法のための十人委員decemvirに選出され,有力貴族として十二表法の制定に指導的役割を演じた。前450年の十人委員の半数を平民にも開放し,それと引きかえに護民官職の廃止をもくろんだと思われる。…
…盗んだ物を貧しい者に分け与える義賊とは異なり,恐れられることが多いが,稀代の大盗賊のなかには,民衆からひそかな喝采(かつさい)をおくられた者も少なくなかったことが知られている。
[ヨーロッパ]
ローマ最古の成文法である十二表法の第8表には,夜間盗みを行った者を現場で捕らえたとき,被害者は殺してもさしつかえないという規定があり,盗みに対する制裁措置が過酷であった。イエス・キリストとともに処刑された2人の男が盗賊であったことはよく知られた事実だが,中世社会に入ると犯罪の中で最も恐れられたのが,血だらけの殺人ではなく,他人の物を盗む行為であったことに注意する必要がある。…
… 平民はこの両民会に出席するほか,平民会をも国家全体を拘束する決議機関とすることを目ざし,前287年のホルテンシウス法によってこれを達成した。この法律で貴族と平民の間の身分闘争は終結したが,それまでに十二表法の制定(前451‐前450)やさまざまな法律によって平民の立場はしだいに上がってきていた。とくに前367年のリキニウス=セクスティウス法は重要で,この法によってこれ以後2人のコンスルの1人は必ず平民たることとされ,平民に最高の政務官への道が開かれたのであった。…
※「十二表法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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