プレブス(読み)ぷれぶす(英語表記)plebs ラテン語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレブス」の意味・わかりやすい解説

プレブス
ぷれぶす
plebs ラテン語

古代ローマの平民階級。初期にはパトリキ(貴族)に属さない雑多な市民の総称。共和政初期から中期までパトリキに対し、負債による隷属状態からの解放、土地の分与、高級官職への就任を要求して「身分闘争」を行い、重装歩兵市民軍の不可欠の構成要素としてプレブスを必要としたパトリキの譲歩を次々にかちとっていった。すなわち、伝承によれば、紀元前494年の「聖山事件」で護民官職の創設、前472年平民会の設立、前450年成文法(十二表法)の制定、前445年パトリキとの通婚権を獲得し、前4世紀初頭旧ウェイイ領の土地を分与され、前367年リキニウス‐セクスティウス法でコンスル(執政官または統領)の1人に平民が就任することが確認され、さらに前287年ホルテンシウス法で平民会の議決元老院の認可がなくとも法的に有効であることが決定された。しかし前4世紀後半以降、コンスルに就任したプレブスは最上層部に限られ、彼らはパトリキとともに新貴族(ノビリタスnobilitas)を形成し、新人の政界進出を阻み、ローマの民主化は達成されなかった。また、上層プレブスは元老院身分に次ぐ騎士身分に上昇し、プレブス自体は第三身分となった。共和政末期、増大する下層平民=プロレタリーは、有力将軍との結び付きを強め、その私兵的存在となり、民会ではその将軍のために投票する軍事的・政治的クリエンテス(被護民)となって、内乱帰趨(きすう)を左右するに至った。

[平田隆一]

『森裕三著『プレブス』(『古代史講座 6』所収・1962・学生社)』『E・マイヤー著、鈴木一州訳『ローマ人の国家と国家思想』(1978・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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