南海トラフ巨大地震(読み)ナンカイトラフキョダイジシン

デジタル大辞泉 「南海トラフ巨大地震」の意味・読み・例文・類語

なんかいトラフ‐きょだいじしん〔‐キヨダイヂシン〕【南海トラフ巨大地震】

南海トラフ地震

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共同通信ニュース用語解説 「南海トラフ巨大地震」の解説

南海トラフ巨大地震

東海の駿河湾から九州の日向灘沖にかけて、海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って発生する地震。おおむね100~150年間隔で起き、震度7や、最大30メートル超の津波が襲う地域が出るとされる。政府の地震調査委員会は、マグニチュード(M)8~9級の巨大地震が30年以内に起こる確率を70~80%としている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南海トラフ巨大地震」の意味・わかりやすい解説

南海トラフ巨大地震
なんかいとらふきょだいじしん

駿河湾(するがわん)から遠州灘(えんしゅうなだ)、熊野灘紀伊半島の南側の海域および土佐湾を経て日向灘(ひゅうがなだ)沖までの広い領域の南海トラフに沿って、フィリピン海プレート西南日本の下への沈み込みによっておこるマグニチュード9クラスのプレート間巨大地震で、科学的に想定しうる最大規模の地震とされている。

 2011年(平成23)の東北地方太平洋沖地震は、これまで予想されていなかったマグニチュード9クラスの地震であった。同地震の震源域では、太平洋プレートが日本列島に向かって年間約10センチメートルの速度で移動し、日本海溝から日本列島の下に沈み込んでいる。太平洋プレートの沈み込みにより日本列島がのる陸側プレートとの境界部分では歪(ひず)みが蓄積され、その結果日本列島は西へ押し込まれている。プレート境界に蓄積されたエネルギーは、ときおり発生するマグニチュード7、8クラスの地震によるプレート境界の滑りだけでは解消されないことはかなり前から知られていたが、蓄積された歪みエネルギーは地震をおこさずに、ゆっくりとプレートの境界がときどき滑る現象(スロースリップまたはゆっくり地震とよばれる)により解消されているという解釈が、研究者の間では支配的であった。しかし実際には、歪みは数百年間にわたって蓄積され、東北地方太平洋沖地震により一挙にそのエネルギーが解放されたことが明らかとなった。

 フィリピン海プレートの動きにより、東海地震や南海地震が繰り返し発生している南海トラフ沿いの領域でも、同様の現象がおこりうるのではと考えられたのが、南海トラフ巨大地震である。しかし、フィリピン海プレートの南海トラフからの沈み込みは年間約4センチメートルで、太平洋プレートの動きの半分以下と小さく、100年から200年の間隔で発生している東海地震や南海地震によるプレート間の滑りにより、蓄積されたエネルギーはほとんど解放されており、長期間にわたって歪みエネルギーが蓄積され続けるような現象は存在しないという見方も強い。また巨大地震に伴う大きな津波の痕跡(こんせき)もみつかっていないことから、その存在を疑う研究者は少なくない。ただ、その存在を完全には否定できないことから、政府は南海トラフ巨大地震対策特別措置法を成立させ、対策を進めている。

[浜田信生]

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知恵蔵 「南海トラフ巨大地震」の解説

南海トラフ巨大地震

日本列島の太平洋沖、「南海トラフ」沿いの広い震源域で連動して起こると警戒されているマグニチュード(M)9級の巨大地震。
南海トラフとは、静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ4000メートル級の海底の溝(トラフ)で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む境界にある。総延長は約770キロメートル。「トラフ」は「舟状海盆」と訳され舟底のようなくぼ地を意味し、水深6000メートル以上に達する海溝と区別される。
南海トラフは活発で大規模な活断層であり、付近では過去にM8級の地震が100~200年ごとに繰り返し発生している。プレートの境界特有の巨大地震が発生する地域として、これまで南海地震、東南海地震、東海地震への対策がとられてきたが、東日本大震災後、国は日向灘(ひゅうがなだ)などを震源域に加えた上で、複数の大地震が連動して生じた場合の巨大地震発生時の被害想定の見直しに着手した。
2012年4月、内閣府中央防災会議「防災対策推進検討会議」の下に有識者会議「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(主査、河田恵昭・関西大学教授)が設置され、同年8月には南海トラフ巨大地震による被害想定の第1次報告として、発生しうる最大クラスの地震・津波による建物被害・人的被害等の推計結果が発表された。また13年3月には、第2次報告として施設等の被害及び経済被害の推計結果が発表された。
これらの報告によると、想定すべき最大クラスの地震・津波により、死者は最大32万3千人、220兆3千億円の経済被害が出る。これは国内総生産(GDP)の42%、東日本大震災の10倍を超える規模。ただし報告によれば、これらの被害想定は「被害の様相や概ねの規模を認識・共有し、効果的な対策を検討するための資料として推計したものであり、地震の規模に関係なく、耐震化等の防災・減災対策を講じれば、被害量は確実に減じることができる」としている。第2次報告の公表により死傷者数などを含む被害想定が出そろったことになり、国は防災対策の基本方針を盛り込む大綱の策定を進めている。

(フリーランスライター  葛西奈津子 / 2013年)

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