日本大百科全書(ニッポニカ) 「南石」の意味・わかりやすい解説
南石
みなみいし
minamiite
明礬(みょうばん)石系鉱物の一つ。1982年(昭和57)小坂丈予(おさかじょうよ)(1924―2011)らによって、安山岩の熱水変質産物として群馬県奥万座(まんざ)温泉から報告された新鉱物。ほかの明礬石系の鉱物と異なり、単位格子がc軸方向に2倍の周期をもつため、特異なX線粉末回折反射が出現する。この地方の温泉を研究中であった東京大学化学教室教授(当時)の南英一(えいいち)(1899―1977)が、研究中にこのことを最初に発見したが、それが新鉱物として確認されたのは没後のことであった。石英および明礬石と共存する。自形は微細な六角板状。命名は南英一にちなむ。2010年、国際鉱物学連合の新鉱物・命名・分類委員会で名称が改定され、南石はソーダ明礬石-2c(natroalunite-2c)として扱われることになった。
[加藤 昭 2018年10月19日]