南部川(読み)みなべかわ

日本歴史地名大系 「南部川」の解説

南部川
みなべかわ

南部川村の東端、日高郡と西牟婁にしむろ郡の境にそびえるとらヶ峰(七八九・五メートル)西側の水を集め西流、たき付近で流路を変え南流、下流域に南部平野を形成し南部湾に注ぐ。全長二四キロ。支流には上から軽井かるい川・ノ川・神野こうの川・高野たかの川・熊瀬くませ川などがある。

多くの支流をもつために水勢は激しかったようで、「続風土記」は滝村の項に、前記諸河川が「此地に会して水勢漸大にして落ちて滝となる、その地両崖怪巌対出して其間一躍して踰ゆへきか如くにして奔流その間に懸る事一丈許潭底深さ測るへからす、左右巌脚皆水に噛食せられ形屋簷の如にして奥深く幾許なるを知らす、潭底水沸騰奇激して響雷霆の如し、神驚き体慄して久く視るへからす、奇観といふへし、滝より以下は三町余両崖大巌壁立してその中央一条の激流を通す鑿開するか如くにして皆人力の及はさる所実に鬼工なり」と記している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南部川」の意味・わかりやすい解説

南部川
みなべがわ

和歌山県中部、日高郡(ひだかぐん)にあった旧村名(南部川村(むら))。現在はみなべ町の中央から北東部を占める地域。1954年(昭和29)上南部(かみみなべ)、高城(たかぎ)、清川(きよかわ)の3村が合併して成立。2004年(平成16)南部町と合併、みなべ町となる。虎ヶ峰(とらがみね)に発する南部川上・中流域を占め、名称もこれに由来する。太平洋岸から龍神(りゅうじん)温泉に向かう国道424号が通じ、阪和(はんな)自動車道のみなべインターチェンジがある。中世には高野山(こうやさん)領の南部荘(みなべのしょう)であった。中流左岸の条里遺構の残る沖積地に水田が開け、周囲の晩稲(おしね)などの段丘部では、主産業であるウメ栽培が盛ん。ウメの生産は日本一を誇り、梅干しなどの加工品で全国的に知られる。また、広大な南部梅林は開花期に観梅の観光客でにぎわう。ほかにウバメガシを原料とする備長炭(びんちょうたん)が名産で、紀州備長炭製炭技術は県指定の無形民俗文化財。

[小池洋一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南部川」の意味・わかりやすい解説

南部川
みなべがわ

和歌山県中西部,みなべ町の中・東部を占める旧村域。南部川の上・中流域に位置する。1954年上南部村,高城村,清川村の 3村が合体。2004年南部町と合体してみなべ町となった。河岸の洪積台地上に,江戸時代からウメ栽培が普及,1900年前後から梅干需要が増えたため拡張され,名所南部梅林で知られる全国有数のウメの産地となった。観梅客も多く,重要な観光資源となっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「南部川」の意味・わかりやすい解説

南部川 (みなべがわ)

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世界大百科事典(旧版)内の南部川の言及

【南部川[村]】より

…人口6663(1995)。村域の東端,西牟婁(にしむろ)郡との境にある虎ヶ峰(790m)に源を発する南部川が,多数の支流を合わせつつ中央部を南西流し,周囲を山地や丘陵に囲まれる。南隣の南部町域にかけては,平安末期から中世には南部荘の地であった。…

※「南部川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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