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占有標 せんゆうひょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

占有標
せんゆうひょう

土地や物を特定の個人が独占的に利用する権利を有することを示す標識。狩猟採集民の社会では,たとえば山野の果樹,動物や魚など自然物の採集,狩猟に際し,獲物に小枝や石を置いたり草を結んでおくことにより,他者の利用を排除することができた。伐木に斧で各自独特の木印を刻み,放牧してある牛馬の耳に目印の傷 (耳印) をつけておく習俗もこれに準ずる。フィリピンルソン島のカリンガ族では,こうした手続をアパ apaといい,インドの山地焼畑民ムンダ諸族ではキサン kisanという。その基盤はなんらかの労働投下に由来している。焼畑耕作に際して予定地の四隅を切り払い,標識を張って山の神から「地もらい」をするのもそうした意味をとどめるものである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

占有標
せんゆうひょう

事物の占有標識。土地・家屋をはじめ資財一般に、占有者を明記した標札、標木の類を付して占有の証とするのは一般の風習で、その由来も久しい。古代古典にも山野に「シメ(標)を刺し」「シメを結って」先占の意を表示したことがみえる。神域、祭場を画するシメ(注連、標)の縄張りはその古意がいまに活(い)かされているものであり、野宿に際し四隅に柴(しば)を挿して山の神の許しを願い、あるいは焼畑予定の山野に標(しめ)を張って「地もらい」を山の神に請う習俗などもまた同趣であった。山野の草木類の採取に、小石や折り枝を置き、あるいは草を結んでおくという素朴な目印も同類であり、やがては伐木に各自特定の「木印(きじるし)」を斧(おの)で刻み込んだり、あるいは放牧の牛馬の耳に特定の傷痕(耳印)をつけて個別占有の標とするようにもなっていく。釣り上げた魚に各自独自の「歯形」をつけて占有の標とするのも同趣であった。農具や家具に「焼き判」で「家印(いえじるし)」を押して所有の標とするのは、いわばこうした風習の発展で、近世の村々ではおおむね家ごとに特定の「家印」が「家紋」とは別に設定されてもいた。荘園(しょうえん)の四至に立てられた「(ぼうじ)」などは土地標木の古い例であり、その伝統は広く今日にも及んでいて、戸別の標札掲示の類もまたその余流である。[竹内利美]

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