牓示(読み)ホウジ

デジタル大辞泉 「牓示」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じ〔ハウ‐〕【×牓示/××爾】

《「ぼうじ」とも》
領地・領田の境界を示すために、くい石柱などを立てること。また、その立てたもの。
馬場の仕切り。
庭の築垣ついがき

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精選版 日本国語大辞典 「牓示」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じハウ‥【牓示・牓爾・榜示】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ぼうじ」とも )
  2. 領地・領田などの境界を示すために、杭・石・札などを立てること。また、その立てたもの。牓示杭
    1. [初出の実例]「定四至牓示」(出典朝野群載‐七・永久五年(1117)一〇月一三日)
    2. 「爰にしるしの傍爾(ホウジ)の石、上総海道成田道と鐫(ゑり)たるさへも見へわかぬ」(出典:人情本・明烏後正夢(1821‐24)三)
  3. ものを書きつけて示す札。目印として書き記した札。立て札。
    1. [初出の実例]「兼樹牓示国郡姓名」(出典:延喜式(927)二九)
    2. 「樹下(このもと)に牓爾(ホウジ)ありて、『嶋袋』の二字を写(しる)し」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)拾遺)
  4. 馬場のしきり。外ぼうじと内ぼうじの別がある。〔射御拾遺抄(1422)〕
  5. 庭の築垣(ついがき)
    1. [初出の実例]「先づ畏まりて御馬を方爾に能く引立てたるを見て」(出典:鎌倉殿中以下年中行事(1454か)正月五日)

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改訂新版 世界大百科事典 「牓示」の意味・わかりやすい解説

牓示 (ぼうじ)

所領の境界に立てる標示。牓示が公領や荘公両属型の所領に一般に立てられた形跡はないので,もっぱら寺社境内,または一円不輸ないし不入権などを持つ排他的領域性の明確な荘園に立てられたものと考えられる。本来は東西南北四隅(四至(しいし))に立てるたてまえであったようだが,地形・領有関係上の事情などから,任意に必要な個所にも立て加えられるようになった。一般に荘園に牓示を打つ行為(〈牓示打ち〉という)は,荘園が上述のような排他的領域性をもった所領として立券されるときに,領主の使,荘官,官使朝廷の使)や国使(国衙の使)の共同作業として行われており,朝廷・国衙の公的承認のうえに将来の紛争を防止する意味をこめて立てられたことを示している。しかし現実には,立てられた牓示は絶対的効力を持たないことがあり,種々の論理をもって国衙や隣接する他領主の手で引き抜かれることもあった。これは,牓示による領域確定が多分に現実の領有関係を強権的に処理しようとするものだったのに対し,中世の領有関係が必ずしもそれで解決できる性格のものでなかったことを示している。

 なお,牓示の素材には木柱,石柱とともに自然木,岩峰などが利用されることもあり,荘園絵図にはこれらがきわめて具体的に描き込まれている。越後国奥山荘(現新潟県胎内市,旧中条町)はじめいくつかの荘園では,その実物が残されている。
荘園
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