原子力損害賠償・廃炉等支援機構(読み)げんしりょくそんがいばいしょうはいろとうしえんきこう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

原子力損害賠償・廃炉等支援機構
げんしりょくそんがいばいしょうはいろとうしえんきこう

大規模な原子力損害が発生した際に、原子力事業者が損害賠償をするために必要な資金を交付するとともに、廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を図ることを目的とする機関。2011年(平成23)9月に設立された原子力損害賠償支援機構の根拠法である原子力損害賠償支援機構法の改正法が、2014年8月に施行されたことに伴い、原子力損害賠償支援機構を改組した組織である。英語表記はNuclear Damage Compensation and Decommissioning Facilitation Corporationで、略称NDF。理事長には改組前の理事長であった経済学者の杉山武彦(1944― )が就任した。本部は東京都港区虎ノ門。ほかに福島県郡山(こおりやま)市に事務所をおく。資本金は140億円(政府出資70億円、原子力事業者等12社より70億円)。

 改組前には、政府が発行した交付国債(発行枠5兆円)を償還し、東京電力へ賠償資金として渡した。また、巨額の廃炉費用負担などにより損害賠償や電力供給に支障をきたすおそれがあったため、2012年7月、東京電力に1兆円を出資し、一時的な公的管理(国有化)を行った。

 新組織の業務は、原子力損害賠償の支援と廃炉等に関する業務に大別される。

 賠償支援についての具体的な業務は以下のとおりである。(1)負担金の収納業務 原子力事業者から負担金の収納を行う、(2)資金援助業務 原子力事業者が損害賠償を行ううえで、機構の援助を必要とする場合に資金交付、株式引受け、融資、社債購入等の資金援助を行う、(3)情報提供業務 損害賠償を円滑に実施するための支援として、被害者からの相談に応じ、必要な情報提供と助言を行う、(4)仮払い法の受託業務 国や都道府県知事から委託を受けた場合に、仮払い法(平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律)に基づき仮払い金の支払い業務を行う。

 廃炉等についての具体的な業務は以下のとおりである。(1)廃炉等に関する研究開発の促進、(2)廃炉等に関する専門技術的な助言・指導・勧告、(3)事故炉の廃炉対策を通じて得られた最新技術などの知見や情報を国内外へ提供すること。

[編集部]

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