大田洋子(読み)オオタ ヨウコ

20世紀日本人名事典 「大田洋子」の解説

大田 洋子
オオタ ヨウコ

昭和期の小説家



生年
明治36(1903)年11月20日

没年
昭和38(1963)年12月10日

出生地
広島市西地方町

本名
大田 初子

学歴〔年〕
進徳実科高女(広島市)〔大正12年〕卒

主な受賞名〔年〕
女流文学者賞(第4回)〔昭和27年〕「人間襤褸」,平和文化賞(文化人会議)〔昭和29年〕「半人間」

経歴
高女卒業後教員生活をしていたが、結婚に失敗した後、女給などをして文学を志す。昭和4年「聖母のゐる黄昏」を発表。14年「海女」が「中央公論」の知識階級総動員懸賞に、15年「桜の国」が「朝日新聞」創刊50周年記念懸賞小説にそれぞれ1等入選し、広く世に知られた。20年疎開先の広島で被爆、その体験を記録した小説「屍の街」を書くが占領軍の報道管制ですぐには発表出来なかった。以後、代表作「人間襤褸」「半人間」「夕凪の街と人と」などを発表。晩年は私小説風な心理小説「八十歳」などで新境地を開いた。「大田洋子集」(全4巻)がある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「大田洋子」の意味・わかりやすい解説

大田洋子 (おおたようこ)
生没年:1903-63(明治36-昭和38)

小説家。広島市の生れ。本名初子。《女人芸術》を経て,《中央公論》《朝日新聞》の懸賞小説に当選,作家生活に入る。1945年帰郷中の8月6日朝,米軍による初の原爆投下に遭遇,以後原爆主題とする作品を書きつぎ注目された。その初期の《屍(しかばね)の街》(1948),《人間襤褸(らんる)》(1950-51)は当時の惨状と占領下の苦悩を伝え,続く《半人間》(1954),《夕凪(ゆうなぎ)の街と人と》(1954-55)などは,原水爆禁止運動が起こるまでの被爆者の屈折する心理と生活の苦闘とを描いている。晩年は心境小説的な作風傾斜,不遇のうちに心臓麻痺で急逝した。82年ようやく《大田洋子集》全4巻が発刊された。評伝に江刺昭子《草饐(くさずえ)》がある。
原爆文学
執筆者:

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百科事典マイペディア 「大田洋子」の意味・わかりやすい解説

大田洋子【おおたようこ】

小説家。広島市生れ。本名,初子。1929年から雑誌《女人芸術》掲載の《聖母のゐる黄昏》で文壇デビュー,自伝小説《流離の岸》などの私小説風の恋愛小説で人気を博した。1945年,広島で原子爆弾投下にあう。その経験をもとにした長編小説《屍(しかばね)の街》は,占領軍検閲下,1948年,ようやく削除版の発表が可能となった。以後も広島を主題とする作品《人間襤褸》(1951年。女流文学賞),《夕凪の街と人》,《半人間》(1954年。平和文化賞)を書きつづけた。《大田洋子全集》全4巻。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大田洋子」の意味・わかりやすい解説

大田洋子
おおたようこ
(1903―1963)

小説家。広島市生まれ。広島進徳実科高等女学校卒業。『女人芸術』の常連執筆者として出発し、『海女(あま)』(1939)、『流離の岸』(1939)、『桜の国』(1940)など私小説風の恋愛もので知られた。しかし広島で原爆に被爆してのちは作風を一変させ、ひたすら被爆の惨状を描き続けた。『屍(しかばね)の街』(1948)は体験者による克明な原爆告発ルポルタージュ、『半人間』(1954)は被爆者の苦悩する心理を描いた力作。ほかに『人間襤褸(らんる)』(1950~51)もあり、いずれも貴重な文学的証言。

[江刺昭子]

『『大田洋子集』全四巻(1982・三一書房)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大田洋子」の解説

大田洋子 おおた-ようこ

1903-1963 昭和時代の小説家。
明治36年11月20日生まれ。「女人芸術」同人となり,私小説風の恋愛小説をかく。広島で被爆後,作風を一変させ原爆の悲惨さをえがいた「屍の街」,「人間襤褸(らんる)」(女流文学者賞),「半人間」などを発表。昭和38年12月10日死去。60歳。広島県出身。進徳実科高女卒。本名は初子。
【格言など】広島の川は美しい。眠くなるような美しさである(「屍の街」)

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367日誕生日大事典 「大田洋子」の解説

大田 洋子 (おおた ようこ)

生年月日:1903年11月20日
昭和時代の小説家
1963年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大田洋子の言及

【原爆文学】より

…第1は,1945年8月6日広島に,ついで8月9日長崎に原爆が投下されたとき,広島,長崎に居合わせた文学者がつぶさに惨状を目撃したり記録をとったりしたのをもとに証言性の高い作品を書いたことにはじまる。原民喜の《夏の花》《廃墟から》(以上1947),《壊滅の序曲》(1949)の三部作から《鎮魂歌》《心願の国》にいたる作品,大田洋子の《屍(しかばね)の街》(1948),《半人間》(1954)などの作品,峠三吉(1917‐53)の《原爆詩集》(1951),正田篠枝の《さんげ》(1947)などの詩歌集が代表的なものである。第2は,学生時代に被爆し,多くの学友や隣人の死に立ち会った人が長じて作家となり書いた作品。…

※「大田洋子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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