双務契約片務契約(読み)そうむけいやくへんむけいやく

改訂新版 世界大百科事典 「双務契約片務契約」の意味・わかりやすい解説

双務契約・片務契約 (そうむけいやくへんむけいやく)

たとえば,売買契約において売主は物を引き渡す義務を負い,買主はこれに対し代金支払義務を負うというように,契約の各当事者が互いに対価的な意味をもつ債務を負担する契約を双務契約という。対価たる意味を有するかどうかは当事者の主観で決められるから,代金がいくら安くても,当事者が売買のつもりなら,その代金は対価的な意味をもつ。双務契約はすべて有償契約である。民法が定める契約のうち,売買,交換,賃貸借,雇傭,請負,有償委任,有償寄託,組合和解などは双務契約である。

 これに対し,贈与のように当事者の一方のみが債務を負担する契約,あるいは使用貸借(民法593条)のように貸主は使用させる義務を負い借主は返還する義務を負うが双方の負担する債務が対価たる意味をもたない契約を片務契約という。片務契約には,贈与,使用貸借,消費貸借,無償委任,無償寄託がある。片務契約は必ずしも無償契約とはいえず,たとえば,利息付消費貸借のように有償契約のこともある。つまり,この場合,貸主の消費物の給付と借主の利息支払とは対価的な意味をもつが,貸主の給付は契約の成立要件であって契約に基づく債務ではないから(587条。要物契約),有償契約ではあるが双務契約ではない。

 双務契約と片務契約を区別する実益は,片務契約には同時履行の抗弁権(533条),危険負担(534~536条)などの問題が生ずる余地がないことにある。
有償契約・無償契約
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「双務契約片務契約」の意味・わかりやすい解説

双務契約・片務契約
そうむけいやくへんむけいやく

双務契約とは、契約の両当事者が互いに対価的関係を有する債務を負担する契約(売買、交換、賃貸借、雇用、請負、組合、和解など)をいう。これに対して片務契約とは、当事者の一方が対価的債務を負担しない契約をいう(贈与、使用貸借など)。対価的関係を有するかどうかは、債務の目的たる給付が経済的・客観的に等価値であるかどうかによって決められるのではなく、当事者の主観、すなわち、当事者が互いに相手方の債務があることを前提として債務を負うかどうかによって決められる、と解されている。双務契約の効力上の特徴は、それが、成立上、存続上および履行上牽連(けんれん)関係を有している、ということである。すなわち、債務の一方が原始的不能などにより成立しないと他方も成立せず、一方が責に帰しえない事由で消滅すると危険負担の問題となり(民法534条~536条)、さらに、一方が履行しないと、その履行があるまで他方の債務者は債務の履行を拒むことができる(同時履行の抗弁権―民法533条)。

淡路剛久

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の双務契約片務契約の言及

【契約】より

…このほか,両者間には効力に差異があることが多い(たとえば贈与者の担保責任について規定する551条と売主の担保責任について規定する561条以下との対比)。(2)双務契約・片務契約 契約当事者双方が対価的意味をもつと考える債務を負担する契約が双務契約,そうでない契約が片務契約である。民法上双務契約はすべて有償契約である。…

※「双務契約片務契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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