要物契約(読み)ヨウブツケイヤク(英語表記)Realvertrag

デジタル大辞泉 「要物契約」の意味・読み・例文・類語

ようぶつ‐けいやく〔エウブツ‐〕【要物契約】

契約成立に、当事者合意だけでなく目的物の引き渡しなどの給付を必要とする契約。消費貸借使用貸借など。践成契約。→諾成契約

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精選版 日本国語大辞典 「要物契約」の意味・読み・例文・類語

ようぶつ‐けいやくエウブツ‥【要物契約】

  1. 〘 名詞 〙 当事者の意思表示合致だけでなく、物の引渡しなどの完了がなければ効力を生じない契約。消費貸借・使用貸借・寄託など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「要物契約」の意味・わかりやすい解説

要物契約
ようぶつけいやく
Realvertrag

当事者の意思表示の合致に加えて,一方の当事者からの目的物の引渡し,その他の給付があってはじめて成立する契約。意思表示の合致のみで成立する諾成契約に対する。意思表示の方式についてはなんらの制限をも受けないので,要式契約とは異なる。民法では,消費貸借使用貸借および寄託が要物契約とされる。金銭を借りる契約などは,現実貸主から金銭の交付を受けなければ成立しないことになる。今日の通説は上記の契約についても予約を認め,当事者の特約があれば,諾成契約としてこれらの契約を成立させることも許されると解している。ただしこれらが無償契約の場合には,諾成契約としては成立させえないとする見解もある。なお手付契約も要物契約とされている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「要物契約」の意味・わかりやすい解説

要物契約
ようぶつけいやく

契約を結ぼうとする両当事者の意思表示の合致のほかに、一方当事者の目的物の引渡しその他の給付があって初めて成立する契約。諾成契約(意思表示の合致だけで効力を生ずる契約)に対する概念である。近代法は契約方式自由の原則をとり、諾成契約を原則とする。しかし、例外的に要物契約とされるものもある。消費貸借、使用貸借、寄託、質権設定契約などがその例であるが、これらを要物契約とすることの当否については疑問が多いとされ、有償消費貸借や有償寄託については諾成契約と解する説がある。また、消費貸借については要物性を緩和し、金銭の引渡し前に作成された公正証書も有効とするのが判例である。

[淡路剛久]

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世界大百科事典(旧版)内の要物契約の言及

【契約】より

…(4)方式の自由,すなわち契約は原則として合意だけで成立し,一定の方式をふむことを必要としない。上記のように,歴史的には大きな意味をもつが,なお沿革的理由によって,民法はつねに合意だけで成立するわけではない種類の契約(要物契約――後述)を認めている。
[契約の社会的機能]
 このような基本観念に支えられた契約が果たす機能は,結局のところ市場機構の果たす機能,すなわち個人が自己の計算にもとづき私的利益を追求しつつ取引交渉して財やサービスを生産し,交換するという機能に奉仕するところにある。…

※「要物契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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