反応性高分子(読み)はんのうせいこうぶんし(その他表記)reactive polymer

改訂新版 世界大百科事典 「反応性高分子」の意味・わかりやすい解説

反応性高分子 (はんのうせいこうぶんし)
reactive polymer

高分子はその材料としての利用においては一般に物理的,化学的に安定であることが望まれる。たとえば化学的に反応性の高い高分子を材料として用いると使用時に大気中の水分酸素,また光,熱などの影響を受けて,分解劣化を起こしやすく不都合である。これに対して高分子の反応性を積極的に利用する用途も種々考えられ,この場合には通常の条件で比較的高い反応性をもっていることが望まれる。そのような高分子を反応性高分子という。反応性高分子の利用には,その反応性自体の利用を目的とする場合と,反応性を利用して高分子材料の改良を行ったり別の高分子へ誘導したりする場合とがあり,後者はいわゆる機能性高分子製造過程でしばしば行われる。反応性高分子は,高分子であることの特徴,すなわちその骨格が巨大な鎖状分子であるための物理的,化学的な安定性と,おもにその鎖に結合した反応基の反応性とを組み合わせて利用するものである。そのような反応基を表に示す。

 高分子上の反応基の反応性を利用した代表的な例に,染料顔料医薬の高分子化がある。これらの物質を不溶,ないし溶解性の低い高分子に結合させることによって,その効果をより持続させることができる。反応試剤や触媒を高分子に固定し,そうした試剤や触媒(高分子触媒)を用いて反応を行わせると,生成物を不溶性の高分子試剤あるいは触媒から容易に分けることができるので,生成物の分離にもまた触媒などの回収にも好都合である。酵素を利用する反応においても,通常は水に溶ける酵素を高分子に固定して不溶化しておくと,生成物の分離などの反応操作が容易になる(固定化酵素)。この固定化の方法の一つは反応性高分子と酵素を反応させることである。

 反応性高分子の反応そのものを利用する高分子材料の代表例はイオン交換樹脂である。イオン交換は高分子上のイオン交換基によって行われるが,その基の導入のためには,反応性高分子が用いられている。




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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「反応性高分子」の解説

反応性高分子
ハンノウセイコウブンシ
reactive polymer

化学反応性を有する高分子のこと.高分子に種々の官能基を導入して,積極的に化学反応を行わせる目的でつくられたものである.反応性高分子の合成法は,大別して,
(1)反応性モノマーの重合,
(2)既製高分子に対する官能基の賦与
の二通りが考えられる.次にそれぞれの例を示す.

反応性高分子は,それが行う化学反応の種類や,その化学構造によっていろいろに分類されるが,現在の段階では,むしろ用途によって大別されている.イオン交換樹脂,酸化還元樹脂,反応性繊維,感光性樹脂,光学活性樹脂,高分子半導体,高分子活性剤,高分子凝集剤,高分子触媒などがその例である.一般に,高分子は相当する低分子モデル物質と類似の化学反応を行うが,反応率,反応速度などの点において,低分子にみられないいくつかの特異性を発揮する.その理由として,隣接基効果,立体障害などが考えられる.

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