向性を調べる検査のこと。スイスの精神科医のユングは心的エネルギーであるリビドーlibidoが、客体に向かって作用しているか、主体に向かって作用しているか、ということによって人格を類型化し、前者を外向性extroversion、後者を内向性introversionと分けた。
[木村 裕]
精神分析学の創始者であるフロイトは、リビドーを本質的には「性欲」と考えたが、弟子のアドラーは、「力への意志」をリビドーの本質と考えた。両者の主張は他の点でも相いれない葛藤(かっとう)を生じたが、一時期フロイトと密接な親交をもったユングは、リビドーを広く心的エネルギーとして理解することにより両者の主張は両立すると考えた。すなわち、性欲によって行動する人は、興味や関心や注意が愛の対象に向かって働いており、力への意志によって行動する人は、興味や関心や注意が自分自身に向かって働いていると考えた。前者はリビドーが客体に向かう場合であり、この傾向を外向性とし、後者はリビドーが主体に向かう場合であり、この傾向を内向性としたのである。
ユングは意識の面で外向的な人は無意識の世界では内向的であると考え、互いに補償的な関係にあるとした。したがって、ある人が外向型extrovertの人か内向型introvertの人かを判断するには、その人の意識の層や生活の場面を考慮する必要がある。またユングは、精神の活動形式として、思考、感情、直観、感覚の四つの基本的機能をあげ、これに外向、内向を加えて、思考―感情、直観―感覚、外向―内向、の三つの軸によって、八つの人格類型を考えることができるとした。つまり、(1)内向的思考型、(2)内向的感情型、(3)内向的直観型、(4)内向的感覚型、(5)外向的思考型、(6)外向的感情型、(7)外向的直観型、(8)外向的感覚型である。
[木村 裕]
ユングの考え方を基礎にして、ある人の人格をおもに外向性か内向性かという類型で把握するためにつくられた質問紙法の検査が、向性検査である。外国ではアメリカの心理学者サーストンやレアードDonald Anderson Laird(1897―1969)らによって外向性・内向性検査がつくられたが、日本では代表的なものに、心理学者の淡路(あわじ)円治郎(1895―1979)、教育学者の岡部弥太郎(やたろう)(1894―1967)が向性検査として標準化し、1933年(昭和8)に『心理学研究』に発表したものがあり、一般に淡路向性検査とよばれている。
淡路向性検査は、「ささいなことでも気に病みますか」「話し好きですか」というような質問に対して、「はい」、「いいえ」、無応答、の3種の答え方で答えるようになっていて、50問からなっている。自己診断用の検査であるが、他者の観察にも用いることができるとされている。50問は、25問ずつが、個人的内向性と社会的内向性とを問う項目となっており、外向性の得点を数えることにより採点し、
(1)によって得られる向性指数VQ(version quotient)によって向性を知るようになっている。向性指数は、100より大きければ、それだけ外向性の傾向が強いということを意味しており、100より小さければ、それだけ内向性の傾向が強い、ということを意味している。しかし、向性は発達の程度によって、個人内でも変動するものである。そのため、必要なら所属する年齢層の標準と比較して解釈するための、相対向性指数を求めることができるが、田中寛一による田中向性検査では、この点をさらに改良して、
(2)によって得られる向性偏差値によって、相対的な位置づけを行う。[木村 裕]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新