君・公(読み)きみ

大辞林 第三版の解説

きみ【君・公】

( 名 )
国を治めている人。天皇。 「万乗の-」
自分の仕えている主人。主君。
「 -に忠義を尽くす」
人に対する敬意を表す。
目上の人や貴人を敬っていう。 「人はしも満ちてあれども-はしも多くいませど/万葉集 3324
女性が親しい男性をいう。 「 -待つと我が恋ひ居れば/万葉集 488
人名・官名などに、多く「の」「が」を介して付き、その人を敬う意を表す。 「師の-」 「源氏の-」
〔中世・近世語〕 遊女。遊君。 「一生連添ふ女房を-傾城の勤めをさするも/浄瑠璃・忠臣蔵」
(「公」とも書く)古代の姓かばねの一。もと、地方豪族の首長の尊称。
( 代 )
二人称。相手を親しんで呼ぶ語。現代語で、男性が同輩およびそれ以下の相手に対して用いる。 「 -僕の間柄」 「 -も一緒に来ないか」 〔
は、上代では女性が親しい男性を尊んで呼ぶことが多く、中古以降は男女ともに用いた〕

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

きみ【君・公】

[1] 〘名〙
[一]
① 一国の主。天皇。天子。
古事記(712)下「汝が命名を顕したまはざらましかば、更に天の下臨らさむ君(きみ)とはならざらましを」
※徒然草(1331頃)一二三「国のため君のために、止(やむ)ことを得ずしてなすべき事多し」
② 自分の仕える人。主人。主君。主。
※万葉(8C後)一・四七「ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し」
※太平記(14C後)二「君の御用にも立、父の素意をも達したらんこそ忠臣孝子の儀にてもあらんずれ」
③ 貴人を敬っていう。
※源氏(1001‐14頃)澪標「かの、高砂謡ひし君も」
④ 目上の人に対し、敬称として添える語。「…の君」「…が君」の形で用いる。男に対しても女に対しても用いた。
※古事記(712)中・歌謡「山城の筒木の宮に物申す吾(あ)が兄(せ)の岐美(キミ)は涙(なみた)ぐましも」
※土左(935頃)承平五年一月八日「これをみて、業平のきみの『山のはにげて入れずもあらなん』といふ歌なんおもほゆる」
⑤ 敬愛する人をさしていう。女から見て男をいうことが普通。
※古今(905‐914)仮名序「きみにけさあしたの霜のおきていなばこひしきごとにきえやわたらん」
⑥ 中世・近世語。遊女。遊君。〔名語記(1275)〕
※浮世草子・好色一代男(1682)五「腰に付たるはした銭を投れば、君達声をあげて〈略〉笑ひぬ」
[二] 上代の(かばね)の名。
※古事記(712)上「故、其の天児屋命は(中臣連等の祖ぞ)。布刀玉命は(忌部首等の祖ぞ)。天宇受売命は(猨女君(きみ)等の祖ぞ)」
[2] 〘代名〙 対称。敬愛の意をもって相手をさす。上代では、女性が男性に対して用いる場合が多い。中古以後は男女とも用いた。現代語では、同等または目下の相手をさす男性語
※古事記(712)上・歌謡「赤玉は緒さへ光れど白玉の岐美(キミ)が装ひし貴くありけり」
※今昔(1120頃か)三「王、后に云く、君が子は此、金剛醜女也」
※浄瑠璃・卯月の紅葉(1706頃)中「きみさへがてんなさるれば、賤が聟になるじゃげな」
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉五「君釣りに行きませんかと赤シャツがおれに聞いた」
[語誌](1)「きみ」は、もともと君主・天皇の意で、そこから敬愛する人をさすさまざまな場合に広がったが、その境界は明確にし難い。
(2)(二)の用法は、上代にはほとんど女性から男性に用いられた。しかし、稀に、男性同士、女性同士(目上へ)、また戯れて男性から女性に用いられた例もある。平安時代以降、男性から女性にも用いられるようになった。短歌・詩などの文語的表現では、現在まで、敬愛する相手に対して用いられている。
(3)江戸時代には(2)の流れとは別に、口語的場面で謙称自称の「ボク」と対になり、武士階級同士で対等の立場で相手を呼ぶ語となった。これが明治時代の書生言葉に受け継がれ、現在まで、主として男性語として対等もしくは目下の相手に対して用いられている。
(4)(一)(一)⑥の意味は漢語「遊君」の訓読によるものといわれる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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