精選版 日本国語大辞典「澪標」の解説
みお‐つ‐くし みを‥【澪標】
[1] 〘名〙
① (後世は「みおづくし」とも。「澪の串」の意) 通行する船に水脈や水深を知らせるために目印として立てる杭。水深の浅い河口港に設けるもの。古来、難波のみおつくしが有名。また、和歌では「身を尽くし」にかけて用いることが多い。みおぎ。みおぐい。みおぼうぎ。みおじるし。みおのしるし。みおぐし。

※万葉(8C後)一四・三四二九「遠江(とほつあふみ)いなさ細江の水乎都久思(みヲツクシ)あれを頼めてあさましものを」
② 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。香味は苦辛。六十一種名香の一つ。〔建部隆勝香之筆記(香道秘伝所収)(1573)〕
[2] 枕 同音の繰返しで、「尽くし」にかかる。
※万葉(8C後)一二・三一六二「水咫衝石(みをつくし)心尽して思へかもここにももとな夢にし見ゆる」
[3]
[一] 「源氏物語」第一四帖の名。光源氏二八歳の一〇月から二九歳の冬まで。冷泉帝が即位し、明石から帰京した源氏は繁栄する。さらに明石の姫君の出生、住吉詣での折の源氏と明石上のすれちがい、六条御息所の死などを描く。
[二] 大名物、漢作茄子茶入「紹鴎茄子(じょうおうなすび)」の銘。
[語誌](1)(一)①の挙例のように「万葉集」に遠江国の澪標が見えるが、平安和歌では難波の澪標が多く詠まれる。
(2)(三)(一)の「源氏物語」の巻名「澪標」は、元良親王の有名な歌「わびぬれば今はたおなじ難波なる身をつくしても逢はんとぞ思ふ」〔後撰‐恋五〕を読者に予め暗示して、六条御息所や朧月夜内侍や藤壺に対する光源氏の「身を尽くす」恋の展開を期待させつつ読みすすませる効果をもつ。
(2)(三)(一)の「源氏物語」の巻名「澪標」は、元良親王の有名な歌「わびぬれば今はたおなじ難波なる身をつくしても逢はんとぞ思ふ」〔後撰‐恋五〕を読者に予め暗示して、六条御息所や朧月夜内侍や藤壺に対する光源氏の「身を尽くす」恋の展開を期待させつつ読みすすませる効果をもつ。
れい‐ひょう ‥ヘウ【澪標】
〘名〙 ⇒みおつくし(澪標)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報