告知義務(読み)コクチギム

デジタル大辞泉 「告知義務」の意味・読み・例文・類語

こくち‐ぎむ【告知義務】

保険契約者または被保険者保険契約締結の際、保険者に重要な事実を告げなければならない義務。また、不実の事を告げてはいけない義務。

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精選版 日本国語大辞典 「告知義務」の意味・読み・例文・類語

こくち‐ぎむ【告知義務】

  1. 〘 名詞 〙 保険契約者または被保険者が、保険契約を結ぶ際に、保険者に対し重要な事実についてかくすことなく告げなければならない義務。この義務に違反すると、保険者は保険契約を解除することができる。

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改訂新版 世界大百科事典 「告知義務」の意味・わかりやすい解説

告知義務 (こくちぎむ)

保険契約締結の際,保険契約者(生命保険は被保険者も含む。損害保険でも自動車保険傷害保険などは保険約款で被保険者を含めている)が保険会社に対し,契約上の事故発生率の測定に必要な〈重要な事項〉について真実を告げる義務(商法644条1項,678条1項)。保険制度は事故発生の統計的確率に基づいて収入保険料と支払保険金との均衡のうえに運営されるもので,保険会社は個々の申込みの事故発生の蓋然性を測定し通常の条件で引き受けるか,あるいは保険料を高くするなど特別の条件をつけて受諾するか,または拒絶するかを決定するが,その判断に必要な事柄が〈重要な事項〉である。当然保険会社自らも事故発生の危険性について選択を行うが,これだけでは不十分なため,法律はその危険性についての事情をよく知っている保険契約者に告知義務を負わせている。しかし一般の保険契約者に何が重要な事項であるかの判断をさせることは困難なため,実際の取扱いでは保険会社が契約申込書に告知欄(質問表)を設け質問事項を列挙して記入させる方法をとっている。この質問表に記載されている事柄が一応重要な事項であると推定されている。たとえば,生命保険では結核,脳溢血などの既往症や現在の健康状態,火災保険では建物の構造(木造か耐火構造かなど)や用途などである。なお生命保険では,保険会社は,ごく限られた種類の保険を除いては,被保険者に対し身体,健康状態について診査医の診査を受けさせ,その他重要な事項について告知させることを行っている。そこでもし告知義務者が故意に,あるいは重大な過失によって,真実を告げなかったとすれば告知義務違反となり,保険会社は契約の解除ができる。解除は事故発生前でも後でも行え,すでに保険金を支払っているときはその返還請求もできる。しかし事故発生が告知義務違反の事実に基づいていないことを保険契約者が証明すれば保険金請求ができ,また返還の請求があったときでもこれを拒否できる。一方,保険会社が告知義務違反の事実を知っていたり,過失によって知らなかったときは解除できない。また保険会社が解除の原因を知ってから1ヵ月以内に解除しないとき,および契約の時から5年(保険約款では2年に短縮)経過したときには解除権は消滅する(商法644条2項,678条2項)。
保険契約
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「告知義務」の意味・わかりやすい解説

告知義務
こくちぎむ

保険契約の締結にあたって、保険契約者または被保険者が、保険者に対し、重要な事実を、また重要な事項について真実を告げなければならない義務(保険法4条・37条・66条)をいう。保険契約者または被保険者に告知義務が課されている趣旨は、保険の引受けをしようとしている保険者に、事故発生率に影響を及ぼす資料を提供するということにある。告知義務は権利に対立する義務ではなく、単にこの義務に違反した場合には、保険者は一定の要件のもとに保険契約を解除することができ、それによって被保険者は保険給付(保険金)を取得することができないという不利益を被るにすぎない。したがって、それは法律的にみて真正の義務ではなく、いわゆる間接義務ないし自己義務に属するものとされている。なお、告知義務は古くは開陳責任または開陳義務といわれた。保険契約法上広く告知義務という場合には、契約締結後における危険の増加・変更などの通知義務や損害発生の通知義務をも含ませることもあるが、狭義において告知義務というときは、契約締結時におけるそれのみをさすのが通例の用法である。法律が告知義務の制度を設けたのは、保険制度の技術的構造の特殊性に基づいたもので、とくに法が認めた独自の制度であるとされている。もともと、保険契約者または被保険者は告知事項を積極的に告知すべきである。しかし保険契約者または被保険者が一般大衆である場合には、保険についての知識に乏しいため何が告知事項であるかを判断することは困難である。そこで保険法においては、保険契約者または被保険者は保険者からの質問に答えることになっている。

[金子卓治・坂口光男]

『中西正明著『保険契約の告知義務』(2003・有斐閣)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「告知義務」の意味・わかりやすい解説

告知義務
こくちぎむ
obligation to disclosure

保険契約の締結に際し,保険契約者被保険者が保険者に対し,危険測定上重要な事実を告げ,また重要な事実について不実のことを告げない義務 (商法 644,678) 。重要事実とは保険者が保険を引受けるかどうか,引受けるとして保険料をいくらにするかを決定するにあたって影響を及ぼす事実である。しかし何が重要事実であるかについて告知義務者にわからないことが多いので,質問表を使用することが多い。この義務違反があると保険者は将来に向って契約を解除することができる。

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保険基礎用語集 「告知義務」の解説

告知義務

保険契約にあたって、被保険者は保険会社に対して保険会社がこれを引き受けるかどうかや保険料の決定の判断材料となる重要な事実(健康状態、既往症、職業など)を告げる義務を負います。被保険者が故意または重大な過失により事実を告げなかったり、偽りの告知をした場合、責任開始期から2年以内であれば保険会社は契約を解除することができます。

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百科事典マイペディア 「告知義務」の意味・わかりやすい解説

告知義務【こくちぎむ】

保険契約締結の際,保険契約者や被保険者が,保険会社に対し契約上の事故発生率の測定に必要な重要な事項を告知する義務(商法644条ほか)。生命保険では重要な既往症や健康状態,火災保険では建物の構造や用途など。一般に保険契約書に告知欄(質問表)を設けて記入する方法が多い。告知義務違反は契約解除の理由となる。

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損害保険用語集 「告知義務」の解説

告知義務

保険を契約する際に、保険会社に対して重要な事実を申し出る義務、および重要な事項について真実を偽って申し出てはならないという義務をいいます。

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