被保険者が,急激かつ偶然な外来の事故により傷害を被り,生活機能もしくは業務能力の滅失または減少をきたし,医師の治療を受けたとき,あるいは,身体の一部を失いもしくはその機能を失って後遺障害(身体の一部を失いまたはその機能に重大な障害を永久に残した状態をいう)が生じたとき,あるいは死亡した場合において,保険給付をすることを目的とする保険。傷害保険は,1849年にイギリスで,鉄道事故の負傷者を救うために始められたのが,その最初といわれているが,日本でも,比較的その歴史は古く1911年に始められた。とくに近年では,自動車,航空機等の交通機関の発達とこれに伴う交通事故傷害の増加,あるいはレジャー,スポーツの普及による外傷危険の増大等の背景もあって,いわゆる新種保険のなかでも中心的な保険となっている。傷害保険により支払われる保険金は,次の4種類に大別される。(1)死亡保険金 傷害によって事故の日から180日以内に死亡した場合に,あらかじめ約定された保険金額の全額が支払われる。(2)後遺障害保険金 傷害によって事故かに日から180日以内に後遺障害が生じたときに,その後遺障害の程度に応じ保険金額の3~100%(たとえば,両眼失明のときは100%,片腕を失ったときは60%)が支払われる。(3)入院保険金 傷害によって生活機能または業務能力の滅失(医師の指示にもとずき病院または診療所に入院し,かつ,平常の業務に従事できない状態およびこれに準じた状態)をきたし,かつ医師の治療を受けた場合は,その状態にある限度として入院保険金が支払われる。(4)通院保険金 傷害によって生活機能または業務能力の減少をきたし,かつ入院によらないで医師の治療を受けた場合は,あらかじめ特約を付帯することにより,その通院日数に対し90日を限度として通院保険金が支払われる。ただし,事故の日から180日を経過した後の通院や,平常の生活または業務に従事することに支障がない程度に治ったとき以降の通院に対しては,支払は行われない。このように,傷害保険は,健康保険,労災保険等の給付,加害者からの賠償金等には関係なく,あらかじめ約定されてあ保険金が支払われるもので,けが等による,日常生活の安定に資するところが大である。
前に述べたとおり,日本では昨今の各種傷害事故原因の増大・錯綜をうけて,これらの特定の傷害事故を担保危険とする多種の傷害保険が発売されている。なかでも代表的なものには,交通事故傷害保険や旅行中の傷害事故に対する海外旅行傷害保険,国内旅行傷害保険等がある。また,損害保険は一般に保険料かけ捨ての方式をとっているが,これに貯蓄性を加味した傷害保険として,満期返戻金つきの長期傷害保険があり,日本人の貯蓄性向に合致した保険として近年急速に普及している。
執筆者:高木 秀卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によって、身体に傷害を被り、その直接の結果として、死亡、後遺障害、または生活機能もしくは業務能力に支障を生じた場合に保険金を支払う保険。保険金の支払いは次のとおりである。
(1)死亡保険金 被保険者が傷害によって事故の日から180日以内に死亡した場合に、保険金の全額を指定保険金受取人または法定相続人に支払う。
(2)後遺障害保険金 傷害によって事故の日から180日以内に身体の一部を失いまたはその機能に重大な障害を生じた場合、その部位、程度に応じて保険金額の定められた割合(3~100%)を被保険者に支払う。
(3)入院保険金 医師の指示に基づき病院などに入院し、平常の業務に従事できない場合、またはこれに準ずる約款に定める状態になった場合に、事故の日から180日を限度として、1日につき保険証券記載の入院保険金日額を被保険者に支払う。
(4)通院保険金 生活機能または業務能力の減少をきたし、かつ入院によらずに医師の治療を受けた場合、通院日数90日、事故の日より180日を限度として、1日につき保険証券記載の通院保険金日額を支払う。傷害保険金は他の給付(健康保険、労災保険、賠償金、生命保険など)と関係なく支払われる。
わが国において傷害保険が開始されたのは1911年(明治44)に設立された傷害保険専門会社である日本傷害保険株式会社によってである。その後大正時代に入り多くの損害保険会社が傷害保険分野に進出したが、この保険の発達は不十分なままに推移し、第二次世界大戦後まで主要な損害保険種目とはなりえなかった。しかし、1960年(昭和35)ごろから始まる経済の高度成長は、交通機関の発達、各種レジャーやスポーツの普及をもたらし、それとともに傷害保険の需要も顕在化した。しかも、その需要は多種多様の傷害危険に適応する保障を求めるものであり、非常に多様化したものであった。この需要に対応するために、傷害保険には、普通傷害保険のほかに交通事故傷害保険、国内旅行傷害保険、海外旅行傷害保険、所得補償保険、つり保険など数多くの契約種類が順次設けられ、新種保険のなかでも中心的な保険種目に成長するに至った。
[金子卓治]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 みんなの生命保険アドバイザー保険基礎用語集について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新