中国,北京市の南西42km,周口店村,石灰岩の鶏骨山に形成された洞窟にある中期・後期更新世人類遺跡。巨大な下洞(猿人洞)から北京原人Sinanthropus pekinensisの化石,小さな山頂洞(上洞)から山頂洞人の化石が出土した。下洞では,1921年にズダンスキーO.Zdanskyによって人類の歯が発見されたことが契機となり,27年からボーリンB.Bohlinによって,29年から裴文中によって本格的な調査が行われ,原人の頭骨と四肢骨が数多く発掘された。33年には山頂洞からも新人の人骨が発見された。これらの化石は41年に北京からアメリカに運送しようとした際に失われている。59年には下顎骨片,66年には脳頭蓋片が発見されている。年代は,以前は50万~23万年前といわれたが,最近,動物骨化石を使った電子スピン共鳴法で55万~30万年前と推定されている。チョッパー・チョッピング・ツールと呼ばれるやや粗雑な石器が数多く発見されている。これらは,アフリカのオルドバイ型に匹敵し,アシュール型のようなハンド・アックスを含まない。
化石人骨は主にドイツ系アメリカ人のワイデンライヒF.Weidenreichによって研究され,1936-43年に膨大な報告書が出版された。下洞の化石はホモ・エレクトスであり,他のホモ・エレクトスと同様に,脳頭蓋は長く広く低く,眼窩上隆起や後頭隆起が発達し,頭蓋腔容積(脳容積より10%ほど大きい)は約900~1200mlである。眼窩上隆起の直後の凹み,前頭骨前部の丸み,前頭骨正中部の隆起が特徴である。ホモ・エレクトスの中では歯が小さめで進化的と見られている。大腿骨から推定された身長は150~160cmほどで,体つきは頑丈だったと考えられる。
→北京原人 →ホモ・エレクトス
執筆者:馬場 悠男
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中国、北京(ペキン)の南西約50キロメートルにある旧石器時代の洞穴遺跡群。化石出土地や文化遺跡は二十数か所に及ぶが、旧石器時代前期の第13地点、第1地点(猿人洞)、第15地点、同後期の山頂洞などが代表的である。1927年にカナダのブラックD. Black(1884―1934)が、それまでに発見された3本の臼歯(きゅうし)に対して北京原人と命名し、学界に発表して一躍有名になった。以来、戦争による中断はあったが、発掘が続けられ、現在も中国科学院古脊椎(せきつい)動物与古人類研究所によって継承されている。出土した人骨や石器など多量の資料は、遺跡に接して建てられた北京猿人展覧館に展示公開されており、また遺跡も周遊できるように整備されている。この遺跡は1987年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[片岡 肇]
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…もちろん肉類のほかにも木の実,草の根,キノコなどが食料に供されたのであろう。
【東アジア】
[前期旧石器時代]
中国ではシナントロプス(北京原人)の遺骸を出土した北京市の周口店遺跡をはじめとして,これまでに23ヵ所の前期旧石器時代遺跡が報告されており,そのうち10ヵ所から原人化石が発見されている。これらの中で最も古いといわれているのは,山西省西侯度の地表下60mの砂礫層から出土した石器であり,古地磁気年代によって約180万年前と推定されている。…
…中国の北京市南西郊にある周口店遺跡の第1地点(中国では猿人洞という)で発見された化石人類。北京原人ともいう。…
※「周口店」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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