日本大百科全書(ニッポニカ) 「商業立地」の意味・わかりやすい解説
商業立地
しょうぎょうりっち
commercial location
商業活動を担う主体(商業資本)が、販売過程上の優位を確保し利潤を追求する目的で、どこに自らの営業拠点を置くかを決定する行為・プロセス、および決定された場所をいう。その結果である商業活動の立地状況、すなわち商店の集積地としての商業地区・商店街の分布や特徴を総体としてさすこともある。
商業活動は卸売りと小売りとで構成されるが、商業立地の問題として注目されるのは、小売りの営業拠点である店舗(商店)の立地プロセスやその特徴であることが多い。薬局やコンビニエンス・ストアなどの売上げが、同じ駅前に位置し店舗規模も同一であるにもかかわらず大きく異なっている場合があるが、それは商店の売上げが立地の微細な違いによって大きく変わりうるからである。そのため、商店の立地の問題には昔から強い関心が寄せられてきた。
もちろん商店の売上げは、立地した場所の社会的・経済的性格ばかりでなく、それを取り巻く状況によっても変化してくる。後背地の人口規模や所得水準、交通網の中での位置、将来の開発計画などは、とくに重要な意味をもつ。通勤・通学圏や市場(しじょう)の勢力圏の形状や規模が、顧客の所在範囲(商圏)を規定するからである。
商業立地の良否は、利用者・購買者の行動や意向を直接左右するばかりでなく、都市や地域の盛衰に大きく影響するので、適正な配置が求められる。また、時間の推移に伴って立地場所の社会的・経済的性格や後背地の状況も変化するので、立地の決定は、現在の状況だけでなく、将来を見通して行わなくてはならない。
[加藤幸治]