団体委任事務(読み)ダンタイイニンジム

デジタル大辞泉 「団体委任事務」の意味・読み・例文・類語

だんたいいにん‐じむ〔ダンタイヰニン‐〕【団体委任事務】

法律または政令により、国または他の地方公共団体から当該地方公共団体に委任される事務。平成11年(1999)廃止自治事務として再編成された。→機関委任事務自治事務

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「団体委任事務」の意味・わかりやすい解説

団体委任事務
だんたいいにんじむ

2000年(平成12)地方分権改革以前の地方公共団体の事務の分類で、法律または政令により国家から地方公共団体に委任された事務。地方公共団体が本来的に有している固有(公共)事務に対する観念。2000年に改正施行される前の地方自治法の別表第1、第2に列記されているたてまえで、たとえば国民健康保険、小・中学校、保健所、消防など多数あった。もともとドイツの公法学に由来する考え方で、国家から監督も補助も受けない固有事務に対して、本来国家の事務であるから国家の監督も援助も受ける事務であった。第二次世界大戦後もこの区別を引き継いできたが、実は、国家の監督と援助は、固有事務か委任事務かとは無関係に、前者は2000年改正施行前の地方自治法第245条以下で、後者は地方財政法で定められているし、2000年改正施行前の地方自治法の別表第1、第2も、地方公共団体が処理しなければならない必要事務を列記したものと解するのが合理的である。したがって、団体委任事務は、固有事務、行政事務とともに、地方公共団体の自治事務として統一的に把握された。なお、機関委任事務は、国家から地方公共団体の長に委任されるが、あくまで国家の事務で、国の大臣指揮監督権を有している点で、地方公共団体の事務となっている団体委任事務とは性質を異にしていた。これら地方公共団体の処理する事務は2000年の地方分権改革により、自治事務と法定受託事務に分類されることとなった。

[阿部泰隆]

『自治体問題研究所編『地方自治法改正の読みかた』(1999・自治体研究社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「団体委任事務」の意味・わかりやすい解説

団体委任事務
だんたいいにんじむ

2000年の改正前地方自治法における事務区分の一つ。法律またはこれに基づく政令により,国などから普通地方公共団体に委任されていた事務。単に委任事務ともいう。公共事務(→固有事務),行政事務とともに地方公共団体の事務をなしていたが,2000年地方分権推進一括法の施行(地方自治法の改正)により事務区分が再編され,団体委任事務,公共事務,行政事務はすべて自治事務に統一された。都道府県の団体委任事務としては都道府県警察を置くことなどが,市町村の団体委任事務としては小中学校を設置し管理することなどがあった。なお,機関委任事務とは,長または委員会などの特定の機関ではなく地方公共団体そのものに委任されていた点で異なっていた。

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世界大百科事典(旧版)内の団体委任事務の言及

【委任事務】より

…地方公共団体の仕事は多様であるが,その中には国および他の地方公共団体から執行を委任された事務が多数を占めている。これを一般に委任事務というが,講学上それは〈機関委任事務〉と〈団体委任事務〉に分類される。前者は地方公共団体の長その他の機関に執行が委任された事務,後者は団体に執行委任された事務と解釈されている。…

【市町村制】より

…市町村には上記の固有事務に加え,法令によって首長ないし行政委員会および団体それ自体に,多数の国政事務の執行が委任されている。前者は〈機関委任事務〉,講学上後者は〈団体委任事務〉と呼ばれる(委任事務)。市町村間には原則として権能に違いはない。…

※「団体委任事務」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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