団結禁止法(読み)だんけつきんしほう(英語表記)Combination Act

改訂新版 世界大百科事典 「団結禁止法」の意味・わかりやすい解説

団結禁止法 (だんけつきんしほう)
Combination Act

労働者の団結やストライキを違法とした1799年のイギリス法律。18世紀末のイギリス社会には,産業革命の展開にともなって労働者階級の本格的な成立がみられたが,フランス革命影響によって急進主義運動に拍車がかけられ,織布工をはじめ各種産業部門に労働争議や騒擾(そうじよう)が頻発した。こうした背景のなかで,政府は同法を制定し,対革命フランス戦争の遂行のためにも断固国内治安を確保しようとした。翌1800年には,これに代わって,労働争議への仲裁の規定を加え,賃下げや労働時間延長のための雇主の団結を禁止するなど,一部手直しした新団結禁止法が制定された。労働者の団結に対するこのようなあからさまな弾圧政策は,フランシスプレースをはじめ多くの人々の議会内外における反対運動をひき起こし,24年に1800年法は廃止された。同年と翌25年の立法により,賃金・労働時間をめぐる平和的団体交渉のための団結は合法化された。
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百科事典マイペディア 「団結禁止法」の意味・わかりやすい解説

団結禁止法【だんけつきんしほう】

資本主義の初期に労働者(もしくは使用者も含む)の団結行動を禁じ,近代市民社会の自由市場イデオロギーの原理を実現するという名目で,実質的には労働運動を抑圧するため各国で制定された法律の一般的呼称。特に1799年英国で制定の団結禁止法や1791年のフランスのル・シャプリ工法が有名。資本主義経済における労働市場の特性の認識が深まるにつれて,19世紀半ばから20世紀初頭にかけて各国とも廃止された。日本では1900年制定の治安警察法第17条が実質的にこれに当たった。
→関連項目ロンドン通信協会

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旺文社世界史事典 三訂版 「団結禁止法」の解説

団結禁止法
だんけつきんしほう
Combination Acts

【フランス】フランス革命中の1791年6月,国民議会が制定した法律
【イギリス】1799年,労働組合結成を禁止したイギリスの法律
ブルジョワジーの利益擁護のために,労働者の団結・誓願・賃金協定を禁じ,1864年まで労働者を束縛した。提案者の名をとって,ル=シャプリエ法と呼ばれる。
イギリスでは産業革命の進展に伴って労使の対立が激化し,労働争議が頻発した。これに対し,政府が労働者の団結と使用者側の団結も禁止した。しかし,労働者が友愛協会などの組織をつくり抵抗し,使用者側も議会急進派と結んで抵抗したため効果があがらず,1824年に廃止された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「団結禁止法」の意味・わかりやすい解説

団結禁止法
だんけつきんしほう
Combination Acts

イギリスで 1799,1800年に制定された労働組合やその他の産業上の団結を禁止する法律。 18世紀中葉から初期労働組合の運動は個別的に否定されてきたが,フランス革命期になって政治改革運動の発展を押えるためにピット (小)内閣によって一般的に団結が禁止された。雇用者の団結に対しては適用されなかった。 24年 F.プレースらの努力で撤廃された。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「団結禁止法」の解説

団結禁止法(だんけつきんしほう)
Combination Act

結社禁止法ともいう。フランス革命の影響を受けて高揚した急進派を牽制するために,1799年と1800年の2度にわたって制定され,労働組合を違法とし,ストライキを禁止した。これによりロンドン通信協会などの急進主義者の団体は壊滅的な打撃を受けた。自由主義の気運の高まりとともに1824年廃止。

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世界大百科事典(旧版)内の団結禁止法の言及

【イギリス】より

…他方,賃労働者の雇用・生活条件改善のための労働組合は,国家やギルドの職人保護規制が後退した18世紀,これに代わるものとして始まった。1824‐25年の団結禁止法撤廃は自由主義経済思想の勝利だったが,27年には〈ソーシャリスト(社会主義者)〉という言葉がオーエン主義の機関紙に登場し,協同とコミュニティと組合が当時の労働運動を特徴づけた。第1次選挙法改正(1832)の階級的性格が露呈され,政治的民主主義の確立をめざすチャーチズム(チャーチスト運動)がこれにつづくが,ビクトリア中期の繁栄のなかで,飢餓と貧困に結びついたこの運動の政治的基盤が消え,自助の時代が到来する。…

【争議権】より

…労働組合の活動は,労働の自由な取引を制限するコンスピラシーconspiracy(共謀)であるとして,違法にされたのである。その後,1824年に個人の自由の原則に従って許されること――自由に集会に参加し,労働の売渡しを差し控えること――は集団的に行っても許されることを認めた(団結禁止法の撤廃)。さらに,1875年には,共謀及び財産保護法を制定して,個人の自由という市民法の原理を超えて,暴力・脅迫などを伴わない争議行為の刑事免責を規定した。…

※「団結禁止法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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